表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
Born out of blood
67/104

血より産まれしモノ


「よっ、と」


 刀が何の抵抗もなくゴブリンを斬り裂いた。いつもの如く、ゴブリンは光となって消えていった。

 はてさて、これで一体何体目か。十を超えた辺りから数えるのは諦めたから、そろそろ二十あたりかね?

 まあ、クエスト自体はとうの昔にクリアしている。だから、後は報告だけなのだが……どうにもゴブリンが多すぎる。

 幸いにして、アイツらは弱い。だから、多少疲れるくらいで済んでいるが、これは単に俺のレベルが高いだけだろう。つまるところ、単純なフィジカルの強さである。

 だがレベルの低い初心者たちがどうなっているか……なんて想像に難くない。誰とも会っていないところで、お察しという訳だ。

 まあ、そんな何処の誰とも知らぬ初心者を思うのは止めておこう。時間の無駄だ。


「それはそうとして……だな」


 考えるべきは、この異常発生しているゴブリンのことだ。

 二十体ほど倒しているが……どうなっているんだ。

 ありそうなのは、上位種が生まれたことか。

 このゲームでも、上位種とかそういうものはいる。区別的に、そいつらもユニークモンスターでは?と思うのだが、違うらしい。まあ、そこら辺の区別分けは、考察クラン辺りに聞くか、掲示板でも覗けば分かるだろう。


「問題はエンカ率だよなぁ」


 まだ、呪印の封印を外してないんだよ。

 封印を外した場合どうなるか……というのは気になるが、それは黒蟻たちで身に染みている。

 てか、アイツらは、通常五体くらいが固まっているらしい。それが呪印を外した場合どうなったか……それだけで、呪印がどれほど危険なものか分かるということだ。


 それは兎も角として、意識を切り替える。

 なんてことはない。不自然な葉擦れの音がしたのだ。風ではない。明らかに何か別のものが原因で、だ。


「ギッ!」

「……またか」


 のそりと、警戒する俺の前にゴブリンが現れた。

 全く気が滅入る。

 おかわりに次ぐおかわり。

 そろそろ疲れて来た。連戦というのは、思っているよりも疲れるものだ。散々『壬生狼』やらで理解している。

 何処かで休憩を取りたいものだ。


「五体、ね」


 少し多いか。

 俺を逃したくないのか、それとも偶然か。

 まあ、気になるが、今は目の前の敵を倒すことに専念しよう。


「ギィィ!!」

「シッ……!」


 動き始めたのは同時。

 ゴブリン程度であれば、わざわざハクロの力を借りるほどじゃない。というか、アイツはまだ不貞腐れてるよ。


 縮地で距離を詰めて、そのまま刀を振るう。驚くほどアッサリと刀はゴブリンの胴体を分かれさせた。

 何が起こったか理解していないゴブリンの顔。それを認識して、左のゴブリンへニードルビーの短剣を投げつける。


「ヒット」


 ニードルビーの短剣の中に詰め込まれたのは、ハクロ特性の石化薬。それをゴブリンがレジスト出来るわけなく、そのゴブリンが一歩踏み出そうとした時には石となっていた。


「残り三匹」


 特別なことはしない。

 ただ、明確な殺意を持って刀を振るう。シンプルであるが、それ故に強い。

 棍棒を振り上げた腕を斬り飛ばし、返す刀で首を落とす。そのまま止まることなく、一歩踏み出して駆けてきたゴブリンの心臓を貫いた。


「残り一匹」


 逃げる気配はない。それどころか向かってくる。

 錆びついたナイフを握りしめた突進。策などない、自暴自棄のような攻撃。

 そのまま俺にぶつかってくるつもりだろう。だが、その攻撃を受けてやる必要はない。

 ナイフを握る両腕を切断する。


「ハッ!」


 そして踏み込んで、刀を上段から振るった。

 硬い感触が刀を通して伝わる。だが、それは一瞬。

 思いの外簡単に振り切ることが出来た。


「ガ、ァ……」


 唐竹割。

 脳天から股関まで線が走り──二つになって、地面に落ちる前に光となって消えた。


「これで終了っと」


 刀を確認して、鞘に戻す。

 刃こぼれはしてなかった。そもそも刃こぼれとかするのか?なんて疑問が湧くが、この作り込みだ。刃こぼれしていてもおかしくないだろう。


「そろそろ疲れて来たな……」


 取り敢えず【隠密】を発動しておく。レベルが低いからなんとも言えんが、ゴブリン程度には通用するはずだ……通用すると思いたい。

 適当な木に背中を預けて、アイテムボックスから買っておいた林檎を取り出す。


「あー、染み渡るぅ」


 酸っぱいが、それはそれで美味い。

 シャクシャクと心地良い食感。瑞々しい果汁が、口内ではじける。

 袖の中で何かが動く感触がした。ハクロが頭を出して、口を開く。

 林檎をくれということらしい。


「おまえね……」


 はあ、と溜息を溢しながらアイテムボックスから取り出した林檎を食べさせてやる。

 それを器用に丸呑みしたハクロ。そのせいで、腕に当たる感触が気持ち悪い。

 その姿を見ると、初めて会ったときのことを思い出した。


「変わった……いや、こっちが本来か」

「?」


 思えばあの頃は随分と警戒されていたものだ。そのあとライガと戦闘し(会っ)て、ライガを倒すことを目標にした。けれどつい最近、その目標も達成してしまった。

 それで得たものは、達成感と満足感、それと少しの寂しさと刀。

 そんなことを考えて、刀をアイテムボックスから取り出した。

 呪刀『無銘』。

 あのライガが振るっていた刀だ。

 鞘はなく、抜き身のまま顕現した刀。ハクロ曰く、『獣』の残滓が残っているらしい。

 そのためある程度呪いに抵抗のある奴ならまだしも、一般人には危険なものだという。


「相変わらず……禍々しい」


 刀身は黒一色。夜闇のような優しいものではない、無明の闇を閉じ込めたような黒。

 吸い込まれてしまいそうな刀身は、滲み出ている禍々しさが故か。


「………」


 一通り眺めて、アイテムボックスに仕舞い込んだ。

 これを使う気はない。下手なことして、刺激したくはないからな。

 とりあえず、今のところは浄化安定の予定だ。『獣』の再誕なんてさせてたまるかっての。


「さて、と」


 なんだかんだ結構休めたことだし……


「帰るかね」


 やけにゴブリンが多いことは気になるが、別に事態究明は俺の役目じゃない。まあ、暇な時に気が向いたらやればいいだろう。

 その前にさっさとクエストの報告をしておかなければ。早めにやっておかないと、ふつーに忘れてしまいそうだからな。


──その時だった。


「キャー!!!!」


──甲高い叫び声が響いたのは。


「あー」

「……カガチ」

「分かってるよ」


 その声の聞こえた方向に走り始める。

 あの声の持ち主がプレイヤーだったらいい。もしくは俺の聞き間違い出会ってくれ。

 だが、最悪は──


「なんで、こんなところにいるのかねぇ!?お姫様は!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ