思わぬ落とし穴
「うへへ……」
やっべえ、笑いが止まらねえ……!
「カガチ、その笑いを止めろ」
「なんだよ、ウォルター?負け惜しみか?」
「うっせぇ!」
あーあ、そっぽを向いちゃった。
まあ、すぐに機嫌治るだろ。
それよりも、今は金だ。ストレージに入ってる金に、ニヤけずにはいられない。
賭けた金が、大体3倍になって帰って来やがった。どうにも、オッズ的にはかなりの不利だったらしい。
笑わずにはいられねぇよ……!
確か、賭けた金は大体所持金の半分ほど……それが3倍になって帰ってきた。
何を買おうか!この際、気になっていたアイテム類に注ぎ込んでもいいか!
「まったく、なんでお前が勝ったんだ……」
「知らん知らん……傷が浅かったとかじゃね?」
先程のPVP、勝ったのは俺だった。
俺としてもどうして勝てたのかは分からない。俺の中では、完全に引き分けだった。
だが、システムが俺の勝利と言う判決を下したのだ。
恐らく、原因は一撃の重さ。双剣は片手で振るうため、どうしても一撃の重さに欠ける。対して、刀の一撃は重い。その差だろう。
それに、左腕も斬り落としていた。その出血ダメージも相まった結果じゃなかろうか。
まあ、もう少し浅かったら負けていたのは俺だろうが。なんたってあの時、俺は炎に侵されていた。あの炎が何かは知らないが、相当まずいものだろう。炎というのもあったのだろう。俺の装備は炎には耐性がある。
「というかお前、なんだよアレ」
「ああ、秘密」
「なんだとぉ!」
「うるせぇ!だったら、お前も色々と明かせよ!」
「ぬぅ……」
それを言われるとなぁ……。
それに、ウォルターよりもヤバいのがアイテムボックスに眠ってるし。全体に言わねぇ。
「カガチって、ウォルターさんと知り合いだったんだな」
「ん、まあな。腐れ縁みたいなもんだけど」
「出会いは『壬生狼』?」
「そうそう、なんかヤケに気が合ってな。それから、たまにゲームを教えて貰ってたんだ」
レンとソウタも一緒だ。
彼らはウォルターとは喋っていない。まあ、レンとソウタの心境を考えれば分からなくはないのだが。
それはそうと……
「お前らもダンジョン狙いか?」
「“も“ってことは、カガチもそうか」
「そうそう、俺たちもダンジョンに潜りに来たんだ。ちょっと嗜好を変えてみたくてな。それに、ダンジョンなら良い感じの素材もあるかもしれないからさ」
「素材?」
これは言ってもいいかな?
左腕を数回タップして、ハクロを見せる。
「おおっ……テイムか!」
「まあ、そんなところ。コイツが呪術関連を使うもんでな。新しい呪術のために素材が必要なんだ」
「呪術は知らないからなぁ……」
「俺も知らない。魔法はともかく、呪術なんてあったのか」
呪術って、マイナーなのかね?
「結構、強いぞ?デバフ系ならなんでもござれって感じで」
「あー、そういう系かぁ。レンなら合うんじゃないか?」
「難しいぞ。俺のステータス的に、ほとんどMPには振ってないからな」
そこにウォルターが混ざってきた。
「なに、カガチお前ダンジョンに潜るの?」
「ウォルター、お前は?」
「俺は……」
チラリとソウタとレンを一瞥して、ウォルターは続ける。
「グラーフの依頼だよ。詳細は言えないけどなぁ」
ああ、そういうこと。
恐らく依頼主はグラーフではないのだろう。多分、依頼主は王子様。それをレンとソウタの前では言うわけにはいかなかった……そう言うところか。
「お前が音信不通だからよー、俺に厄介ごとが回って来てんの」
「あー、うん、ファイト」
「てめぇ……」
そういえば、なんか来てた気がする。色々と忙しかったから、ついつい忘れてしまっていたが……ウォルターを見るに厄介ごとだろう。
「ああ、そういや……ダンジョンに潜るってことは、お前、アインセンに行ったんだな」
「へ?」
何ともないようにウォルターは言った。
俺の反応に、呆れたようなウォルターの視線。
「カガチ……お前さ、知らんの?ダンジョンに入るのには、冒険者ギルドへの加入が必要なんだぞ?」
ギギッと、錆びついたブリキのオモチャような動きで、レンとソウタを見た。
彼らも呆れた視線と共に言う。
「え?いや、まだ行ってなかったのか?」
「カガチ……」
加えて、左腕に巻き付いていたハクロが締め付けを強くしている。
どうにも、何やってんだよと講義しているようであった。
「はぁ………」
マジで?




