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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
Born out of blood
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祭囃子に導かれて


「さてさて、と」


 正直なところ、やることがない。【錬金】でやること──各ポーション類の調合は終わったし、その他の雑事は終わった。

 そうなると、次は何するか……ということなのだが、目標(ライガ)達成()してしまった。

 せっかく身体が自由に動かせるようになったというのに……レベリングをしたい気分じゃない。

 燃え尽き症候群とでも言うのだろうか、真っ白になってしまった訳じゃないがやる気が湧かない。

 うーん、どうするか……


「観光でもするかぁ?」


 諸国漫遊とはいかなくとも、王都を散策するだけでも楽しそうだ。それに今は城の中に入れるんだ。以前は用なんてなくね?なんて思っていたが、観光目的なら十分に行く価値はあるだろう。まあ、厄介ごとを押し付けられそうだから行かないが……


「ムムムッ………」


 どうしようかなぁ……などと悩む俺にハクロが言う。

 最近はちょくちょく姿を消していたが、今はこうして隣でダラっとしているハクロ。どうせ、何かしら実験でもしていたのだろう。


「暇ならさ、ダンジョン行こうよ!」

「ダンジョン……」


 単語だけなら知ってる。なんでも、各国に大体一つあると言う迷宮なんだと。

 小さなものは発生と消滅を繰り返しているらしいが、国が管理しているダンジョンは違う。その大きさと規模……そして危険度。その全てが野良ダンジョンを上回る。

 確か王国は…………


「フンブスだっかな?」

「そうそう!この国にはダンジョンはないし、一回行って見たかったんだ!」


 ダンジョン……ゲームとしては定番だが、定番であるが故に心躍るものがある。


「よし、行こうか」

「うん」






 フンブス──王国の東に位置する街であり、王国で第二位の大きさを誇る街である。王都に匹敵する街の大きさが示すのは単純な財力であり、いかに迷宮というものが人を呼び寄せるかを示している。

 迷宮から出るモンスター素材、それを目当てに集まる冒険者……金のなる木だよなぁ。


「おおおっ……」


 外から見る外壁、中から眺める外壁……その大きさは今までで断トツに大きい。アレは外からの侵略を防ぐのが目的か、それとも檻としての役割か……どちらも含まれているのだろう。


 道行く人々は様々だ。

 明らかに戦士と分かる者、ローブを纏う魔法使い、贅を凝らした服を纏う商人……今まではあまり見かけなかった鎧姿の人も多く見られる。

 残念ながら、俺にはプレイヤーかどうかを調べる術はないが……明らかに王都とは活気の種類が違った。

 ハクロも珍しいのか、仕切りに首を動かして忙しない。


「まあ、それは兎も角……早速、ダンジョンに向かおうぜ」

「うん!」


 ダンジョンの場所は散々そこらに書かれていたから、場所は分かる。というか、この人の流れに任せていけば自然と着きそうだ。


 歩くこと十五分ほど……それ以上に経っているかもしれない。なにせ、完全におのぼりさんだったからなぁ。

 露天に売られている物を眺めるだけで面白いのだ。何に使うか分からないものに、実用性のなさそうな特撮武器。果てには魔法少女系のステッキ……カテゴリは杖ではなく鈍器。撲殺系魔法少女でも流行らせるつもりか?


「あ?」


 そんなこんなで歩いていた俺たちなのだが、ダンジョンに着く前に何やら面白い催しを見つけた。

 人だかりが出来ている広場。見れば噴水とかがある訳ではなく、単純に道と道の交差する地点が開けているだけらしい。

 その中心……人に囲まれている場所からは、何やら聞き慣れた音が聞こえていた。

 鉄と鉄の打ち合う金属音。それが何度も鳴り響く。


「ほぉ……」


 もそもそっと人混みをすり抜けて、やっとの思いで『戦闘』を眺める。

 戦っているのは、軽装の男と重装備の男。手数と堅牢な守りの戦い。

 普通に見れば圧倒的に重装備の男が有利だが……その男が押されている。


「うん……?」

「ねぇ……あれって」


 ハクロと俺が、同時に男の姿に既視感を覚える。軽装の男の姿……装備こそ初めて見るものの、あの顔、それに戦闘スタイルは間違いない。


「ウォルター?何やってんだアイツ」


「うん?知り合いか?」


 隣にいた男が、親切そうに言う。何処か聞いたことのある声。

 その男がくるりと振り返る。


「「あ」」


 男と目が合う。久しいが見たことのある顔。


「ソウタじゃん」

「カガチ!?」


 ソウタが騒ぎ出したと同時、その後ろからもう一人顔を覗かせる。

 ソウタとくれば一人しかいないだろう。


「レンも居るのか」

「ん?カガチじゃん、久しぶりー!」


 レンも装備が変わっていた。

 武器は分からないが、防具は黒を基調とした服。その下には、楔帷子が覗き見える。

 どのレベル帯かは分からないが、頑張っていそうだ。


「で、アレは?」


 戦っているのウォルターを指差して言う。


「あー、アレはこの街の名物……かな?」

「俺たちもこの街に来たばかりなんだが、そこら中で戦ってるよ。闘技場があるのはドライドだからな。ダンジョンに潜っている奴らからすれば、少し遠いんだよ」

「へぇ……ま、プレイヤーを縛る法もないしな。好き勝手やっているのか……」


 ダンジョンに遊びに来たつもりだったが、好奇心が疼き始めてきた。


「俺も参加できるか?」

「出来るぜ。だけど、オススメはしない。今戦ってる軽装の方……あの人が五連勝くらいしてて、かなり強いんだ」


 なるほど、なるほど……


「そう言われると、連勝記録止めたくなるなぁ」

「へ?」

「ククッ……いいじゃん、行って来なよ」


 お、ちょうど終わった。


「すんませーん!次いいですかー!」


 多少声を張り上げると数多の視線が一気に俺を貫く。

 値踏みをするものが多数、憐みの視線が少数……かなり不利か。

 だが、反対する者はいない。となれば、了承されたと言うことで良いのだろう。


「ソウタ、コイツ頼むよ」

「へ?お、おい」


 ハクロをソウタに預けて、スタスタと前に出る。

 その途中、ウォルターがやっとコチラを向いた。勝利の余韻に染まっていた顔が、獰猛な笑みに変わる。


「アンちゃん」

「ん?」

「賭けはどうする」

「決まってんじゃん、俺に、そうだなぁ……ま、このくらい」


 所持金の半分ほどを話し掛けて来た男に渡した。その瞬間、周りから少し響めきが起こったあたりかなりの金額だったか……それとも、単に阿呆と思われただけか。

 ウォルターとの距離が充分に近づいたところで、PVPの申請が来た。

 勝利条件は体力全損、禁止事項はアイテムの使用。それ以外は何でもアリのルール。

 それに了承して、ニヤリと笑う。


「さて、今回も勝たせてもらうぞ」

「前は負けたからな……今回はお前が這いつくばる番だよ」



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