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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
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彼岸にいるあなたへ 8


 最近、何かと習慣となってしまった気がする赤蟻討伐。それを終えて、『壬生浪』に顔を出していた。


 ガヤガヤと、相変わらずの賑わいを見せる屯所。

 ざわめくプレイヤー達の隙間を縫って、備え付けられた剣道場へと向かう。


「やっぱり、ここは静かだねぇ……」


 表とは打って変わり、シンッとした静寂が満ちる剣道場。


「まあ、仕方ないか」


 ここでお世話になる人は少ないのだから。

 確かに、オフラインではチュートリアルとして役に立つ。だが、オンラインでは全くと言って良いほど役に立たないのが、この剣道場だ。

 オフラインとオンラインで、剣道場の仕組みが変わっているところはない。

 チュートリアルの相手として立ち塞がるのは、各隊長。

 オフラインならば選択式なのだが、オンラインでは日替わりだ。だが、プレイヤーオフラインでは一騎当千の隊長達でも、オンラインではただの弱兵。

 つまるところ、この剣道場とは、各隊長に挑戦出来る施設と化していた。


「賑わったのは、最初だけなんだよな」


 自らの属する陣営の隊長達、つまりはレイドボス達には挑戦は出来ない。だから、そのレイドボス達に挑めると言うこの剣道場は当初こそ人気はあった。まあ、たった一週間ほどで離れていったが。

 それも、二つの制約が理由だ。

 先ず、挑戦者は一人で挑む必要がある。この時点で、ほぼ無理ゲー。レイドボスである隊長に、ソロで挑むと言うのだから。

 そして、二つ目。武器は木刀に限定される。そりゃあ、剣道場だから。そこで、爆弾だの火縄銃だのというのは可笑しいと言えば可笑しいのだが………万全ですら勝てないのに、人数と武器を制限されては勝ちなど見えないのも当然だ。


「それでも、流石に厳し過ぎるから……何かしらの特殊勝利があるんじゃないかと言われてたんだが……」


 確か……そもそもじっくりと観察出来るほどプレイヤーが耐えられなかったんだっけか。


「まあ、それは兎も角だ」


 今日の担当は、正しければ1番隊隊長、沖田総司だ。

 新撰組でも最強と数えられるこの男は、このゲームであってもその名に恥じない働きをする。

 神速で動き、刹那に三段の突きを放つ三段突きを使用する。だが、史実に忠実なようで病弱設定を受け継ぐ分、技のキレは凄まじいが攻撃の間隙が他と比べて大きいと言う風になっているのだ。

 ただ、他と(、、)と比べてだ。鈍い我らプレイヤー(雑兵)が、その隙を突けるかと言うのはかなり難しい。

 まあ、大抵は一刀両断、三段突きで蜂の巣に、首が飛ぶ。


「さて、と」


 道場破りの如く、頼もー!!なんて言う風に入るつもりはなく、ただ静かに剣道場に足を踏み入れる。

 中は、特徴的なものなどない。ただ、ごく普通の剣道場。強いて言うなら、『誠』という掛け軸が掛けられていることくらいか。

 その中央に、『それ』は座していた。

 全く着用されていなかったとされるだんだら羽織を羽織った、若い男。

 その視線が、ゆっくりと俺に向けられる。


「ちょっと悪いな………()()に使わせて貰うぜ?」






「あっ……」


 気がついたら、後ろに回られていた。

 そのまま、脳天に木刀が振り下ろされた。


「ぐひゅっ」


――5回目。


「ちょっ!?」


 パキンッ、と到底木刀が出して良い音ではない甲高い音が響いた。

 それと同時、光となって木刀が散った。

 当然、突きを防げるはずがなく、心臓を貫かれた。


「ぐべっ!?」


――n回目。


「だあーッ!?おかしいだろ!?」


 なんだかんだで、三時間。

 大体、十分に一回と言うペースで挑んでいる。まあ、その内の大部分は休憩だったり萎えていたりする。

 今のところ、最長時間でさえも五分も耐えられていない。


「やっぱりなぁ……」


 特筆すべきは、やはりその速度。

 辛うじて捉えられるようにはなってきたが………身体がついていかないのが現状だ。


「正攻法は肉壁で押し留めてからの、遠距離攻撃か?」


 あの速度さえなければ、とは思うが現実は簡単にはいかないだろう。

 少なくとも攘夷側が、それを実行していないとは考えられない。だが、未だに討伐されていないことを考えると失敗したのだろう。


「まあ、俺としては関係ないんだが」


 そもそも、剣道場以外では隊長格とは戦えないし。

 そう考えると、俺って攘夷側のレイドボスと戦ってねぇんだよなぁ。ちょっと、興味が出てきた。時間が出来たら────


「ほー、珍しい。君がここに居るなんて。てっきり、君は興味無いと思っていた」

「ん?」


──やろうかな。

 何て言う思考が、かけられた声によって遮られる。

 その声のした方向を見た。

 そこに居たのは、一人の少年。


「チッ、何かようか?『蒐集家』」

「いや、なに。ただの偶然だよ、少なくとも君に会ったのはね」


 あーやだやだ。見た目は純粋そうな少年の癖に、何処からその胡散臭さは出てるんだよ。


「で?ストアカのことか?」

「うん?……ああ、ウォルター君が伝言を渡してくれたのか」

「お前が伝えさせたんだろ。何がよろしく、だ」

「挨拶程度に過ぎないよ。私もやってるからね。いずれ会うこともあるだろうから」


 ………控え目に言って会いたくねぇ。

 そんな俺の気など知らず、蒐集家は言葉を紡ぐ。


「それに、何やらグラーフ君が面白い事をしようとしているみたいだからね」

「………知っていたのか」

「これでも情報通でね。色々と面白い事を知ってるんだよ」


 そう、コイツはグラーフのことを知っている。とも言うのも、何を隠そう、コイツもあの革命事件に関わっているのだ。グラーフに情報をリークし、革命を裏から手伝い、そして、ギロチンでグラーフの首を断った本人。


「はぁ、面倒だ」

「君もよく私を知っているじゃないか」


 コイツは、人呼んで蒐集家。

 図鑑を埋めることを楽しみとするような人間である。

 で、あるならば、なんやかんやでイベント武器を持っている俺を逃すことはない。


「それじゃあ、表でやろう」

「そうだね。今夜は騒がしくなりそうだ」


 ……あのさぁ、もうちょっと加減してくれない?

 結局、三時間くらいぶっ続けで戦闘し続けたわ。

 と言うか、途中から蒐集家と協力プレイみたいな感じで戦ったんだけど?


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