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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
3/103

ゴブリン

 二分ほどの自由落下を経て、着いたのは森だった。陰鬱として森ではなく、何処か人の手で管理されたような森。

 余談ではあるが、着地はそのままの速度での激突ではなく、地面近くで一瞬浮いてからの着地であった。


「アイツ、ほんとに許さねぇ」


 今ので、人の心に消えない傷を生んでもおかしくないレベルだったぞ?案外、人の精神は脆い。なんたって、思い込んで人は死ねるのだ。この場合、思い込みの力が強いのか……精神が脆いのか。おそらく前者であろうが。

 まあ、いいや。こんなことは後で考えればいい。

 ぐるりと周りを見渡す。

 やはり人の手が入っているのか程よく光が差し込む森。そのため、大きい木々に囲まれていても視界はそれほど悪くなることはなかった。


「おお……」


 一通り見回して思ったが、グラフィックが綺麗だ。現実にあるのと遜色がない。絵画の中、漫画の中に入ったみたいだ。

空気が美味い。濁り切った心が浄化されていくように感じる……カムバック、マイ良心。


「さて、と。情報によれば……」


 此処に出るのはゴブリンだけだったはずだ。

 そこまで強くはなく、油断しなければ負けることはない。

 だが、数が多いらしい。まあ、はぐれが結構いるらしいから、最初のうちははぐれを狙うことになるだろうな。


 そんなことを考えていると、ガサガサと近くの草が揺れ始めた。


「ギギッ!!」

「早速か」


 思ったよりも早い会遇を果たした俺とゴブリン。緑の肌に醜悪な見た目をした、背の低い生物からは嫌悪感しか感じることはない。

 なまじ人と似ているせいだな。これが現実では妖精の類というのだから驚きだ。


 背が低いのは個人的には厄介だと思う。確かに低いことは戦闘でマイナスになることもあるが、このような森の中だと、ゴブリンの子どものような背丈は奇襲にプラスに働いてしまう。茂みの中に(ひそ)まれると、体色も相まって気づくことは難しいだろう。


「ギッ!!」

「ふっ!」


 突っ込んできたゴブリンを躱して、足を引っ掛けて転ばせる。そして、そのまま……


「はっ!」


 短剣で胸を貫いた。


「グギャギャギャギャ!!!」


 断末魔を声高にあげると、ゴブリンは光となって消えていく。残されたのは、ゴブリンが身に付けていた腰蓑と錆びたナイフだけ。


「ふーん。ゴブリンの腰蓑と錆びたナイフねぇ……」


 ナイフは研げば使えるだろうが……腰蓑はなぁ……使い道が思いつかねぇ。というか、どう使えと?売る以外……いや、こんなものが買って貰えるか……?

 実に粗末な造りの腰蓑。上質な素材で作られているならまだしも……ま、もしかしたら買い取ってもらえる可能性があるから、拾っておくが……。


 その時、再びガサガサと音が聞こえた。

 それはゴブリンか、それともプレイヤーか。


「ギャギャ?」

「ギッ!!」


 ゴブリンだった。しかも、先程と違い四体も。さすがに不利だな。

 というか、先程はぐれを狙う予定を立てていたのだが……それでも、相手から来たんだ。昔、フレンドが言ってた若いうちは無理をしろ、と。堅実になるのは老けてからでいい、と。……宇宙競艇の券を握りしめて。あのゲームはなかなかにクソだった。なんで競争ゲームが、バトルロワイアルになるのか。そういう行為は普通禁止行為のはずなんだが……ちなみに、堅実に一番人気に賭けたフレンドは大負けした。


 その役に立たないフレンドの教訓に従えば、俺は産まれたてのニューピー。どんな無茶も許される!


「ギャ!」

「ギャギャ?」


 だが、不思議なことにゴブリンたちは襲い掛かろうとはしてこない。

 それどころか、俺を見つけてないような……。

 心当たりがないわけじゃない。実験として、先程のアイテム回収の折、【隠密】を発動させておいたのだ。だが、まだレベル1のスキルだ。せいぜいが気配を薄くする程度だと考えていたんだが……どうにもゴブリンどもには有効なようだな。

 まあ、このチャンスを見逃す手はない。

 先ずは先手をとって、確実に数を減らす。

 やり方は色々あるが、今回は暗殺の真似事で十分だろう。


「!?ギッ────!!!」


 【隠密】のまま、他の三体とは少し離れた場所にいた一匹に後ろから近づく。そして、口に手を当て、同時に首に短剣を突き刺す。

 そのゴブリンはそのまま消滅し、ドロップアイテムを錆びたナイフの代わりに石斧を落とした。

 ポスッ、という音が静かに響いた。

 その音に、他のゴブリンたちが一気にこちらを見た。畜生、悲鳴を上げられないように口を塞いだ意味がなくなっただろうが。


「ギャギャ!!」

「ギャ!!!!」


 殺せ、とでも言っているのだろうか。ま、どうでもいい。

 武器は……ナイフ、石斧、弓。

 しくったな。弓持ちからやれば良かった。


「シッ」

「ギッ!?」


 だから、素早く弓持ちに近づく。

 幸いにも弓持ちはそれほど離れていなかった。一息で距離を詰めて、その喉元に短剣を差し込む。

耳元から漏れたか細い声を無視して他の二体を見る。

 弓持ちゴブリンに比べると多少は離れた場所に居た二体は既に臨戦態勢だった。だが、今すぐに襲い掛かってくる様子はない。


「俺の出方を窺っているのか」


 なら、まずは連携を崩そう。知能も低いという話だ。ちょっとしたことで崩れるだろう。

 アイテムボックスから、先のゴブリンが持っていた錆びたナイフを取り出す。それを投擲すると同時、駆けだす。


「ギャ!?ギャギャ!!」

「ギャギャ!!」


 錆びているから命を奪うとはいかないだろうが、牽制としては役に立つ。

 怯んでいる内に、近くから片付けよう。


 馬鹿正直に喉を狙て、短剣を突く。


「ギャ!!」


 流石にそれは防がれる。

 なので、踏み込んだ右脚を軸として回し蹴り。


「ギャッ!?!」


 そのまま倒れ込んだゴブリンを見逃したくはないが……チラリと、もう一体のゴブリンを見るとかなり近くにまで迫ってきていた。


「チッ、仕留められないか」


 なら、先にお前から……

 すでにかなり迫ってきたゴブリン。その手に持つのは石斧。それを、子どもが棒を振り回すみたいに無茶苦茶に振り回している。だが、子どものような体格のゴブリンには少々重いらしい。

 石斧に振り回されていて……実に軌道が分かりやすい。


「ふッ」


 別に変なことをする必要はない。躱してから短剣を刺しこめばいい。


「ギィ!」


 俺の真似なのか、ゴブリンは石斧を投げる。弧を描いて石斧は俺に迫り……後ろに通り過ぎっていった。

 ……うーん。大暴投。野球ならランナーが進んでいたな。

 まあ、無防備になったことだし……


「ギャャァアァ!?!?」

「あれ?」


 だが、短剣を刺そうとした手前、絶叫が響き渡った。その出どころは石斧を持っていたゴブリンではない。今まさに、倒れたところから起き上がろうとしていたゴブリン。


「あー」


 憐れ、まさか同族にやられるとは。

 見事に石斧が側頭部に直撃したゴブリンは、淡く光となって消えた。

 残されたのは、俺と素手のゴブリン。


「ギャギャギャ!!!!!」

「いや、やったのはお前だからな?そんなに俺を目の敵の――あぶねッ」


 ギリギリとは言わないが、結構危ないタイミングで避ける。

 ゴブリンは切り返して、拳を振りかざして突進してくる。だが、その速度は速くない。


「よっと」

「ギ……ィ」


 今度は余裕を持って振られた拳を避けながら短剣を振るった。避けられたゴブリンは次の攻撃を放とうとするが、次はない。当然だ、手を切り落されているのだから。

 案外、切れ味いいな。チュートリアルで渡されたものだから、骨を断てるとは思ってなかったんだが……


「ギイ!!」


 手を切り落とされても戦意は衰えてないらしいゴブリンは、飛び掛かってくる。


「……」

「………………ギ」


 飛び込んできたゴブリンの脳天に短剣を振り下ろした。短剣は少しの抵抗と共に、刺さっていく。

 ゴブリンの身体から力が抜けて、身体が光となって消えていく。

 後に残ったのは、やはり粗末な腰蓑。


「ふう……」


 そこでやっと一息ついた俺は、辺りを見回した。

 周りにはドロップアイテムが落ちていた。

 ナイフに、石斧、弓に、腰蓑。どうも、武器と腰蓑は固定っぽいな。


「さて、ステータスは」


 休憩も兼ねてステータスを見る。もちろん、【隠密】は発動してある。休憩中に襲われるのは勘弁してもらいたいからな。


「おっ、レベルが上がってる」


 最初の内は簡単にレベルが上がるから楽しいんだよなあ。

 ステータスは……どうしよ。後からにしようかな?この感じだと太刀打ちできないってことはなさそうだし。

 休憩はこれくらいでいいか。


「さあ、次に行こうかね」


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