錬金
一日後。正確にはリアルで一日後。つまり、ゲーム内時間で二日後。
「うーん、シャバの空気はうめぇなぁ!」
俺の姿は変わらず王都にあった。
まあ、あの後牢屋にぶち込まれたわけなんだが………それは置いておこう。妙な仲間意識が芽生えて、意気投合した話は……ああ、思考が逸れた。
「んで?どうするの?」
何時になく上機嫌なハクロ。
それも当然だ。俺が退屈な囚人ライフを送っていた間、コイツは呪術の研究に取り組んでいたからな。どうも、俺の扱いというのは特殊なものだったようで……確か、姫さんが融通を図ってくれたらしい。とはいえ、精々が呪術に使う触媒の購入を頼んだくらいだったが………まあ、呪術なんて危ないものを扱っていたせいで無駄に監視が居たのは別の話だ。
「そうだなぁ……どうしようか?まあ、一旦、エバーテイルに戻るか」
「そうだね。お金も出来たし、ゆっくりするのもありだねぇー」
「んじゃ、勝手にしていいよ」
エバーテイル、ハクロの私室。
王子のような身分にいるだけあって、その部屋は広いが………怪しさしかない。
部屋に散らばる藁人形。壁に吊られた何かの干物。瓶詰めにされた何か。乱雑に積み上げられた魔導書。地面に書かれた魔法陣。
うーむ、これが仮にも王子の地位にいるやつの私室なのか。
「まあ、いいや」
ハクロが部屋で何かし出したのを見てから、薬草類を取り出していく。
街で買った物から、自力で採取した物。ああ、月光草は使う気は無い。
あれはどうも、俺の『錬金』のスキルレベルでは扱える気がしないからな。
「確かできるのは……」
『錬金』というスキルで行えるのは変形、抽出、あとは合成だ。
『錬金』とはいうものも、物質を別の物質に変換することは出来ない。たとえば、鉄くずを金に変えることはできない、らしい。
出来ることと言えば、物質と物質を掛け合わせること。それが合成である。
変形、抽出、合成のうち、最も『錬金』というスキルを表す事象だろう。
まあ、『錬金』じゃあ出来ないというだけだ。これが上位スキルに進化すれば、石ころを金に変えることも出来るかもしれない。
「んじゃ、まずは抽出から」
乱雑に取り出した薬草の一つ。それに抽出を行っていく。
MPが少しだけ減り、薬草から何か緑色の液体が取り出されていく。それが、事前に用意しておいたガラス瓶の中に入る。
「ふむふむ?」
──抽出液───
ポーションの原材料の一つである、モナギ草の抽出液。不純物が多い。
「あー、やっぱレベルが低いのか」
まあ、これに関しては数をこなすしかないだろう。取り敢えず、何回か抽出液からも抽出して……あと、他の薬草からの抽出液と合成して、と。
「ふう……」
──低級ポーション──
低品質のポーション。不純物が多く、完全には合成されていない。
そのため、大きい回復効果は見込めない。
やかましい。
良いだろ別に、初めて作ったんだから。
この一本を作るために、一時間くらいかかった。そのためか、流石に『錬金』のレベルも幾つか上がったが……それでも尚足りないらしい。もっと、丁寧に一つの工程を行えということか。それとも、もっと工夫しろということなのか。まあ、両方だろう。
「……まあ、もっと丁寧にやってみる」
数時間後。
「だぁー!!なんで出来ないんだよ!?」
進展なし。ただ、スキルレベルがたんたんと上がっていくのだけが救いか。
どうも不純物関連ではないような気がする。一応、かなりの抽出を繰り返したんだが………それでも出来なかったからな。だから、抽出どうこうよりも工程が足りてないか………素材が足りてない可能性がある。
あと考えられるのは、俺自身のステータスの欠如か。
「だがなぁ………合ってるはずなんだよ」
見過ごしてたか?
とは言え、今から確認する気力はない。
「もう投げ出していいのでは?誰かが言っていたしな、嫌な事から逃げてもいいって」
言葉だけなら、最高の逃げ台詞。
しかし、状況とこれまでの積み重ねが合わされば名言となる!まあ、この状況ではただの逃げ台詞にしかならないのだが。
「むぅ……小銭稼ぎのスキルだったんだがなぁ」
まさか、小銭稼ぎすら出来そうにないとは。やはり、何か工程を飛ばしているのか?だが……ネットで調べた限りはこれだったはず。
「何やってるの?」
丁度、作業を終えたのかハクロが、物珍しそうに此方を見ていた。
「あん?ポーション作り」
「うん?それなら、煮沸?しないと……」
「……は?」
「知らないの?最後にしないとポーションにはならないよ。なんでも、余計な水分を飛ばさないといけないだとか、純度を高めないといけないとか……なんなら、知り合いの錬金術師に聞いてこようか?」
「……………ふぅー」
もう寝よ。
というか、それ煮沸じゃなくて蒸留じゃない??




