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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
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王都 1

 王都ローレル。

 この国の首都であることから、今までのどの街よりも大きい。……ん?そういや、街って言ってもツブァルブしか行ってねぇわ。何処ぞのガキに上空からのフリーフォールをやられたせいで。

 いかんいかん、怒りがぶり返してきた。落ち着け落ち着け。


「流石だなぁ」


 落ち着いて周りを見れば、その一言に尽きる。街を取り囲む壮大な壁。遠目からも見える門から続く長蛇の列。


「うーん?もう着いたの?」


 列に並んでから数分後。袖の中で寝ていたハクロが起きた。


「ああ着いたよ。今は並んでいるところ」

「で?僕はどうすればいいの?」

「む」


 言われてみれば確かに。

 こいつの扱いとしてはただのモンスターだ。周囲からすれば、殺すべき敵という訳だが……まあ、大丈夫だろう。


「袖の中に隠れていれば良いだろ。バレたら、バレたでテイムしたって言えばいい」


 周りを見れば何人かはモンスターを連れていた。ある人は鳥を、ある人は四足獣を、またある人はスライムなんてものを。

 できれば教えてもらいたいものだ。俺とて、健全な男だ。狼のようなカッコイイモンスターと野原を駆けたいし、その背中に乗りたい。

 ううむ……あとから調べてみようか。

 

「そうだねー。じゃあ、中に入ったら教えてー」


 そそくさとハクロが再び袖に消えてから暇になった。

 おっと、これハクロのステータス見れるのか。

 前にレンとソウタとパーティーを組んだ時は見れなかったから……NPCだからか?それでも、無条件に見れるとは思えないし、何かしらの条件はあるんだろう。


───────────────

名前:ハクロ

ジョブ:呪術師

所属:エバーテイル

種族:蛇帝の血族

レベル:53

ステータス

HP:6000

MP:10000

STR:30

DEX:58

AGI:15

INT:106

VIT:14


《スキル》

・呪詛支配

・呪術

・蛇帝の息子

・空間魔術



 うーん?レベルアップ毎に2ポイント、任意のステータスポイントが貰えるから………うん、やはり種族によってレベル1のステータスは異なるらしい。潜在的とでも言うのだろうか、まあ、ライオンと猫が同じレベル1だからといってステータスまでも同じという訳じゃない、か。


「それにしても……」


 高すぎではないだろうか。

 VITとAGIが低いことにハクロらしさが分かる。それでも、俺よりはVITがあるんだよなぁ。


 そうやってハクロのステータスを眺めていると、声が掛けられた。


「む?」

「次の者」


 どうやら、俺の番が来たようだ。

 案外早かったなと思いつつ、衛兵に犯罪者、特に賞金首であるかどうかを見られた。顔を見られただけだったが、何かスキルでも使っていたのだろう。

 そして、王都に入ることが出来た。







「ふんふんふーん」


 珍しく外に出てきたハクロを首に、王都のメインストリートを歩いて行く。

 視線を少し上に向ければ見えるのは、荘厳な白磁の如き城。ハクロ曰く、建てられてから千年ほど経つというのに、その美しさは陰りすら見せないという。


「ねぇ!見て見て!なんか演奏してる!」

「うん?」


 見れば、道の片隅に人混みが出来ていた。そこから聞こえるのは、何処かで聞いたような音楽。ゆったりとした曲調が、昼下がりの平和な王都には良くマッチしていた。


「ん?あそこは……」

「武器屋だね」


 そりゃあ、分かってるよ。

 路上ライブが行われていた場所から少しの場所。そこにそれはあった。ショーウィンドウにところ狭しと並べられた武器。華美な剣、宝石のあしらわれたレイピア。実用的ではなく、儀礼剣のような武器。

 それを一瞥して通り過ぎる。


「え?見ないの?」

「趣味じゃない」


 どうも華美な武器は好きじゃない。嫌いという訳でもないが、見た目だけを重視した感じが合わないのだ。

 見たところ、客層は俺たちプレイヤーよりも貴族や騎士らしい。

 キレイだけどなぁ、と呟くハクロを無視して先に進む。


「それでさ、何処に行きたいんだ?」


 さっきから忙しなく首を動かしていたハクロに問う。

 どうも王都という街に気になっていたと言うよりも、何かを探しているふうな感じで、首でそれをやられると気になってしょうがない。


「なにを探してるんだ?」

「なんて言えばいいんだろ。素材屋?触媒屋?兎も角、呪術の習得に必要な素材屋だよ」

「……そんな怪しい店は、大通りにはないと思うぞ」


 へ?と抜けた声を上げるハクロ。

 そんな店が大通りにふつーにあるエバーテイルの方がおかしいと言いたい。あー、あそこはアレか。コイツらが呪術を使うせいで神聖視でもされてんのかね。

 まあ、呪術の習得は大切だ。特にコイツにとってそれは普通の呪術師よりも大きな武器となる。


 前に聞いた、いや聞かされたのだが、ハクロ達、蛇帝の一族は呪詛を思うがままに操ることができ、一度覚えた呪術はノーリスクかつ威力をそのままに発動出来るらしい。本来、呪術師というのは覚えた呪術は威力を減らすことで触媒を無しに発動を可能であり、一定の呪術の発動によって何らかのリスクをおうことがあるのだという。

 まあ、かなり化け物なのだ。呪術に関してはスペシャリスト。とはいえ、ハクロはその才能を活かせてないらしい。どうにも、覚えている呪術が少ないのだと。


 なんてことを考えていると、何やら通りが騒がしい。 


「退けッ!」

「きゃあああっ!?」

「ん?」


 視線を前に向けると同時、ドンッと何かがぶつかって来た。


「……はぁはぁ、随分と手こずらせてくれたな。だが、運の尽きだ」

「いや!い……ッ!」


 ぶつかって来たのはまだ幼い少女。それを追うようにして三人の男たちが現る。男達の姿はお世辞にも綺麗とは呼べないような格好。少なくとも騎士のようには見えず、むしろ山賊を想起させるような男たちだ。

 息を荒上げて近づく男たちに、少女はすぐさま立ち上がろうとするが、顔を歪めるに終わった。

 どうやら、少女は転んだ拍子に足を痛めたようで立ち上がれないようだった。


「……おい、どういうつもりだ?」


 庇うように立ち上がれない少女の前に出る。

 少女共々驚いている男たちとハクロ。

 いや、お前は驚くなと言いたい。それと少し首絞めるのやめて?


「どうもこうもない」

「あ?」

「ちぃっと気になってね」


 今も聞こえてくる外野の声。

 聞こえたぞ、王女様ってな。権力者には媚びておけ、と知り合いの狂人が言っていたからな。俺もそれには賛成である。


「だから、まあ……邪魔されてくれ」


 言いながら首を二回ほどこする。

 首元で這うような感覚と共に小さく了解という言葉が返ってきた。


「チッ、痛い目を見ずに済んだものを……やるぞ」


 抜刀はしない。

 半身になって何時でも行動出来るようにしておく。

 男達の武器はナイフと片手剣。どれも上等なモノではない。何処にも売っているような、安物の武器だ。

 俺と男たちの間に緊張が走っていく。身じろぎ一つで、すぐに殺し合いが始まるだろう。


 そして────


「『金縛り』」

「なァ!?」

「はっ?」

「え?」

「何が……!?」


 駆けようとした瞬間、彼らは動かなくなり、バランスを崩し倒れるものが一人。


「三十六計逃げるに如かずってなァ!!」


 それを見ないで、呆然としている少女を抱きかかえて逃げた。

 何が起こっているのか分からないのか、はぇ?なんてこぼす少女が可愛らしい。

 いかんいかん。これでは、ただの誘拐犯と大して変わらないわ。


……………


…………


……



「あれ?ここは何処だ?」

「いや、分からないの!?あまりにも迷いなく動いてたから、てっきり知っているのかと思ってたのに……」


 むむむ、ホントにわからん。

 男達から逃げ回ること十分。路地裏から表に出入りすること数回。何処かも分からない路地裏に俺たちは居た。


「……ところで、その子大丈夫なの?」

「うん?」


 そう言えば、途中から声が聞こえなかったような……。


「きゅー…………」


 おーう…………完全に目を回してるわ。


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