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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
17/104

PK


「うん。昨日はテンションおかしかったな」


 さて、と。やらないと行けないことが多い。ログインして直ぐにヒイロの元に行ったのだが、武器が出来るのは一週間後だと言う。それはいいんだ。刀も貸してくれるって言ってるしな。

 問題は、金がないってことだ。ニードルビーの巣、一つ分の針によって大幅に割引いて貰ったのだが…………それでも、所持金よりも多い。


「ふーむ?」


 どうしようか?金策と言えば色々あるが、単純なのはやはりモンスター討伐による素材集め。他には『錬金』の活用か。後は………こっちで手に入る物を売ってもいい。


「だがなぁ………」


 その方法は、出来ればやりたくない。確かに良い利益を出してくれるんだろうが、それと引き換えに俺の情報を流すことになる。欲深いプレイヤーに狙われることとなれば、平穏なプレイはなくなってしまう。最悪ライガは兎も角、姐さんのことが漏れてしまうことを考えれば、その手はない。


「今のところ、七帝で分かっているのは二体ほどだしな」


 正確には、名前だけが分かっているの三体。分かっている三体は、『剣帝』、『竜帝』、『狼帝』。その内発見されたのは『竜帝』と『狼帝』のみ。しかし、そのどちらもがランダムエンカウント。正確な居場所は分かっていないらしい。


「ふーむ、そう考えると……」


 剣帝ライガの居場所を知り、姐さんという『蛇帝』と友好関係を結ぶ俺の情報はかなり大きいか。


「あ!居るじゃん!」

「ん?……ああ、ハクロか」

「今日は?」

「取り敢えず、モンスターでも狩るかね」


 さて……何を狩ろうか?出来れば実入りが多いのが良いのだが……ん?そう言えば…………


「なぁ、あっちに戻れる?」

「任せて。こことマーキングした場所限定だけど、転移が出来るよ。アッチのマーキングは、ライガの祠のところだね」


 お?そりゃあ、良かった。あっちに帰れないなんてことになったら、兄さんやウォルター達と遊べなくなるしな。


「んじゃ、よろしく」

「おーけー」





「ん?」


 転移した場所は森の中。

 妙に既視感のある場所。


「そういや………最後にいた場所って……」

「うん、そうだね。ライガの封印場所だね」


 正確には、ライガの封印場所から出たところだと思うが………それでも、多分ここだ。ここに、あの穴と石碑のあった小島があった。

 奇妙なことに木々は生えておらず、ここだけ開けている。人工的なものじゃない。自然にそうなっているんだ。


「なるほど、ね。単に開けているだけなら、怪しまれないか」

「?」


 とはいえ、何処にあの穴と小島は消えたのかは気になる。

 だけど、まあ、そんなことを気にしている暇はない。一刻も早く金を集めなければならない。取り敢えず、このことは頭の片隅に閉まっておこう。


「さて、と」

「どうするの?」


 相も変わらず、袖の中から頭だけを出すハクロ。


「まあ、無難にゴブリン狩りかなぁ。いや、この際だ。さっさと王都に進んだ方が良いか?」


 むぅ、確かツヴアルブの次は王都ローレルだったはずだ。……悩む。いっその事、両方行うか?


「そうだな。ゴブリン狩りながら、王都に行くかぁ」

「りょーかい」






「ギッ!?」

「ふぅ……」

 

 刀を鞘に納めて、戦闘が終わる。


「いやー、しくった」


 二十体ほどゴブリンは倒したのだが………実に金目の物が落ちない。フツーに忘れてたな。ゴブリンが落とすものに碌な物がないの。

 加えて、ゴブリン共を倒してもクエストを受けてないのだから、金が入らないときた。


「はぁ、どうするかねぇ」

「やっぱり、王都に直進しようよ」

「そうす────ん?」


 小さいけれど、確かに聞こえた音。それは正に、金属と金属がぶつかり合って響く剣戟の音。

 もしかしたら、誰か人がいるのかもしれない。NPCじゃなければいいが……


「聞こえたか?」

「うん」

「んじゃ、ちょっと行ってみるか」


 木々の間を縫うようにして、音の発生源に近づいていく。

 ……ここまで来る間、何人かプレイヤーは見かけた。いや、NPCだったかもしれん。それは兎も角、この森に人が居ないということはない。少なくとも、ゴブリンと人はいる。ならば、戦闘が起こっても有り得ないことじゃない。というか、俺自身、何回も戦闘は繰り返している。


「だけど………」


 『隠密』を発動しておく。

 あれは金属と金属が撃ち合うことでなる音だ。つまり、石器を武器として使うゴブリン達と戦っても出ない音。いや、金属製の武器を拾って使っている。若しくは、上位種という可能性もあるが………まあ、見てみるまでは分からない。


「…………」


 かなり近い所まで来た。

 息を潜めて、様子を伺う。

 ……プレイヤーか?

 見えたのは二人。一人は、良く見知った装備を着ている奴。というか、俺も着ている初心者装備。そして、もう一人は何らかのモンスターの毛皮を使った防具、鉄よりも上質な鉱石を使ったであろう剣を装備している男。


「クソっ…………」

「いいねぇ、いい表情だ。オラぁ、その表情が大好きなんだよぉ」


 ……巻き込まれたくねぇな。なんだ、アイツ。

 さて、と。


「逃げるの?」

「たりめえだろ。なんだ、あの危なそうな奴。なんだよ?お前は戦いたいのか?」

「嫌に決まってるじゃん」


 だよなぁ……ハハハっと笑いあう一人と一匹。


「んじゃ、さっさと逃げるか」


 うんしょ、と腰を上げて、出来るだけ音を立てずに足を進めようとする。

 しかし、


「おい、そこに隠れている奴。出てきなぁ!」

「おっふ」

「うっぐ」


 見つかってた。まあ、予想はしてたけどね?というか、アイツが俺の隠密スキルを上回る索敵スキルを持っていても不思議じゃないし。


「どうする?」

「このまま逃げる?」

「逃げれるかぁ?」

「無理でしょ」

「やっぱ?」


 あれ?詰んでない?

 いや、こういう時こそ冷静に行こう。

 隠れていた木から姿を現すと、ちょうど男が剣を振り下ろす所だった。


「おっ、観念して出てきたかぁ」

「あっ…………」


 ああ、初心者装備君が光となって消えていく。

 あわよくば共闘でも、と考えていたのに。


「それで?」

「決まってんだろ。お前をキルするんだよ。ちぃっと嬲るだけだぜぇ」


 そう言って、そいつは何処からともなく出したナイフを舐めた。


「一応聞いておくが、なんのためにPKをする?」

「聞いてたんだろ。まあ、あれはロールプレイが入っているが…………」

「…………」


 男の口調が変わった。


「結局のところ、楽しいからだよ」


そう言って、男は笑った。


「そりゃあ、そうだな」


 別にこの男が気に食わないということはない。俺だって、『壬生狼』でバカみたいにキルを繰り返してきたんだ。今更、その事についてはどうこう言うつもりは無い。


「だが、そろそろ飽きて来てな。ワンサイドゲームってのは、気持ちいいが飽きるのも早いからな。分かるだろ、この気持ち」

「まあな。それでも、初心者狩りは趣味が悪いと思うが……」

「……うるせぇよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ストレンジアルカディアにおいて、PKというのは容認されている。PKを縛るルールもなければ、PKをしたからと言って犯罪者になることは無い。

 法律を作る国家の側からすれば、不死身の異邦人のいざこざなど、自国民(NPC)に被害が及ばなければ好きにやってくれということなのだろう。まあ、牢に入れたとして、自害すれば出れてしまうなど頭の痛い話だからな。

 ましてや、NPCに危害を加えたプレイヤーは専用の監獄にリスポーンされる話だ。プレイヤー同士の諍いなど、勝手にしてくれというところか。

まあ、それは兎も角……


「んじゃ、殺ろうか」

「そうだなぁ!」


 緩んでいた空気が引き締まる。

 刀を鞘から抜いて、構える。

 そして、疾走。こいつに攻撃させてはならない。シンプルであり、絶対的な条件。

 そんな俺に対して、男は剣を上段に構えて───


「一刀破岩」


 その剣が赤い光を帯びる。

 防御?いや、不味い気がする……!!

 判断が遅れたが、ギリギリで男の剣を回避することが出来た。


「チッ……」


 スキルか。

 俺は好まないが、システムアシストによって強力な攻撃を可能とするものだ。硬直等、デメリットもあるが総じて強力なものが多い。


 どうしても、勝手に動かされる感覚が嫌いなんだよな。


「おうおう、いい判断だ。刀なんて珍しい武器を使ってるが、そいつァ、良く斬れる代わりに耐久がねえ。受けていたら、お前諸共真っ二つだったぞ?」

「……忠告どうも」


 距離は先程よりも近い。

 一撃で決めたい。なら、狙うとしたら首か心臓。


「シッ……!」


 一歩、二歩、三歩。

 ここだ。

 縮地を使って距離を詰める。放つは突き。狙うは心臓。

 速度はそのまま貫通力に。


「…………!!」

「お前さんはいい線行ってるぜ」


 しかし、肉を断つ感覚はない。

 手に残るのはジンッという痺れ。

 剣を振り上げて止まる男。俺の刀は、宙を舞っていた。


「なあ、お前………うちのクランに入らねぇか?」

「あん?」

「お前さんなら、いいPKになると思うんだよな。狙いの付け所が良く、勘もいい。加えて、PKに忌避感を持ってない」


 そこで、男は一度言葉を切った。

 そして、再び台詞を紡ぐ。


「なぁ、お前さん。うちのクランに入れよ」

「は……」

「?」

「あっはははは!!嫌だね」

「そうか、なら理由を教えてくれるか?」

「はん、単純だよ。俺に負ける奴に付いてやるものか。何よりも、楽しそうじゃない」

「確かにそうだなぁ!楽しくねぇって俺が言ったんだからな!だが、お前に何が出来る!」


 貫手。狙いは首。

 しかし、それは当然のように片手で止められる。何も出来ないだろうという視線。

 ああ、そうだとも。俺に切れる手札はない。俺には何も出来ない。だがな、俺は一人じゃない。


「なっ!?」


 貫手が止められる?そんなことは承知済みだ。あの貫手は攻撃じゃない。ただ、首の近くまで腕を近づければ良かった。

 俺の腕。正しくは袖の中から、一匹の白蛇、ハクロが飛び出した。

 飛び出したハクロは男の首に噛み付く。


「ぐっ!」


 当然、それを取ろうと男は行動し始めるが遅い。


「なぁ!?」


 男は確かにハクロを掴み取ろうとしたのだろうが、その腕は動かない。

 そして、瞠目して驚く男なんぞ知らないとばかりに、ハクロが噛み付いた首から石化が始まっていく。


「馬鹿な!?石化だと!?なぜ───」


 ハクロの毒はかなり特殊だ。毒としての役割はほとんどない。だが、ハクロの毒というのは呪いの受け皿としては最高級であるらしい。

 つまるところ、あの石化は毒と言うよりも呪いだ。ハクロが毒を媒介として呪いを流し込んだのだ。ハクロ曰く、これも一種の呪術であるらしい。


 完全に男が石になった。

 それを砕いて、光となっていく様を見ながら座る。


「ふぅ…………」


 あー、疲れた。ハクロをあの場所に運ぶのに、労力を使いすぎた。

 このままダラっとしていたいけど、ダメだよなぁ。とりあえず、刀を回収してくるか。


「よっと………うん?」

「疲れたー」


 戻って来たハクロに、お前は最後に働いただけだろと言いたくなるが我慢。今、それは重要じゃない。

 男が死んだ場所。そこに落ちているものが二つ。一つは中に何かが詰まった袋。もう一つはポーション。

 ポーションは、俺が使っているものよりも高価なやつだったが、それはどうでもいい。袋だ。


「何それ?」

「わからん?」


 PKは何もロールプレイだけじゃない。旨味も当然ある。それが、所持アイテムからランダムで落ちるアイテム。そして、所持金の一割のルード。

 そう一割のルードだ。


「お金だよ、お金。それも大量の、な」


 袋に入っていた総額、約百万ルード。ということは、アイツ。一千万ほど持っていたのか……。

 ついつい手が震えそうになる。取り敢えず、武器に必要な分を除外しても残るは八十万ルード。


「さて、ハクロ」

「?」

「行くか、王都!」


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