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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
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女王1


「───おいおいおい」


「────────!!!!」


「お呼びじゃねぇんだよ!」


 倒壊した巣から現れたのは、今までのニードルビーとは比較にならない蜂だった。

 その大きさは無論のこと。加えて、他のニードルビーとは異なる特徴的な腹部を持った蜂。ただ、その羽根は身体に対して小さく、奴を浮かす程の浮力は得られていないらしい。そのため、身体を引き摺って動いていた。


「女王か」


 おいおい、仮にも巣のトップが、部下の働きをパーにするなよ。

 まあ、軽口はそれまでにしておいて。

 あれは間違いなく女王だろう。ニードルビーに詳しいセイカの言葉だけじゃない、その姿──特に肥大化した腹部には毒ではなく、卵が入っているんだろう。

 しかし……


「どうして、今頃になって?」


 その疑問が残る。

 あの女王が、巣を壊してまでも出てくる理由は?それも戦闘の終わった後に?

 部下は倒されたはずだ。そんな状況で巣の王たる女王蜂が今更出てきたのは……なぜ?


「…………あ」


 気づいた。気づいてしまった。

 まだ、呪印を封印してないことに。

 いや、待て。結局、アイツは来たんだ。きっと、多分、メイビー。

 どうせ、ここに来たのは兵隊達がいつまで経っても餌を運んで来ないからだ。

 そう考えれば、全ての原因は封印を解いたセイカにある。きっと、そうだ。きっと……


「……はぁ。で?どうする」

「戦うしかないな。それに……アイツはお前にご執心なようだからな」


 チッ、こいつ気づいてやがる。しかも、何気にこっちに責任を押し付けようとしてやがる。

 まあ、責任の押し付け合いは後からでいい。


「それで?」

「アイツはお前に任せるよ。周りは任せろ」

「周り?」


 見れば、倒壊した巣から出て来たのは女王だけではなかった。白い芋虫。それが数えられないレベルで這いずっていた。

 虫嫌いな人が見れば卒倒してしまいそうおな光景だ。

 ニードルビーがあの大きさなのだ。その子たるハチノコの大きさも推し量るべきである。ハチノコは食べられるんだっけか……コイツらは美味いのかな?戦闘が終わったらセイカに聞いてみるとしよう。


「……任せるわ」


 なんでもかんでもリアルにするべきじゃねぇな。


「ふぅー」


 瞑目。意識を切り替える。

 女王の戦闘力はどうだか知らんが……少なくとも兵隊よりは強いはずだ。強く想定しておいて、困ることはそうそうない。


「よし、始めようか」


 構える。腰を落として、抜刀のし易い形に。

 炎蛇が再びとぐろを巻く。セイカが駆ける。

 女王がその身を引き摺って迫る。


 そして、紫電が走る。

 手加減はなしだ。最初から隠し玉はなしでいく。


「…………!!!」


 瞬間、女王の足が二本、斬り飛んだ。


「───────!!!」


 一拍遅れて、それを認識した女王は咆哮をあげた。

 それは怒り故か、悲鳴なのかは分からないが遅い。それに今、俺を視界から外したな?


「……シッ!」


 再び一本の足が飛んだ。

 やはり、女王は女王でしかないということか。

 前言撤回……あまりにも戦闘に慣れていない。確かに図体はデカく、脅威だが……それだけだ。これなら、一兵卒の方が全然強い。

 攻撃は速くない。それどころか、飛ぶことすら出来ないせいで格好の的だ。


「……やっべ」


 大きく後ろに距離を取って、紫電を消す。

 纏雷の反動が回って来た。紫電を纏う、その代償は当然ある。今回はセイカの時程ではないとはいえ、かなり強くした。当然、かなりのスピードでHPが減っていた。


 アイテムボックスからポーションを取り出して飲む。

 ……味がないってのは奇妙な感覚だが、不味いよりはマシだ。


「……?」


 再び纏雷を起動しようとして止める。

 別に女王が何かしようとしていたわけじゃない。

 ただ……


「甘い、匂い?」





「……ッ!」


 初めにそれに気づいたのは、女王との戦闘経験のあったセイカだった。

 それを忘れていたのは、突如として始まった戦闘への焦り故か。


「不味い……!」


 目の前に居たハチノコを斬り裂いて、状況を把握しようと辺りを見渡す。

 カガチとハクロ、そして女王とハチノコ。セイカはそんなものは見ていない。その先の木々の先。

 何処にも変化があるようには思えない。

 けれど、


「……来た」


 確信と共にセイカは呟いた。

 視界には、変わらず木々しか映っていない。しかし、それは確かに響いていた。

 木々に木霊して響く、空気の震える音。


「……!」


 そして、それらは姿を現した。


「─────────」


 咆哮はない。しかし、その轟音に似た羽音が、辺りに響いた。


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