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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
亡き友に盃を
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ニードルビー

端的に述べよう。ハクロ、武器屋または鍛冶屋の場所を知らなかった。いや、まあ蛇だし、武器の必要がないということを頭に入れておくべきだった。


「んで?」

「だから、ヒョウベエなら知ってると思うよ。あの人の交友関係は広いからね。紹介状とかも出してくれるかも!」

「んじゃ、何処にいるか分かる?」

「今の時間だと……休憩室にいると思うよ」


おーし。ヒョウベエもといオッサンの確保に向かうかー。




「よーし、確保ォ!」

「かくほー」

「んぎっ!?何やってんだ!?お前!?って、ハクロ様まで…」


 なんだね?その可哀想な物を見る目は?

 まあ、それはいいや。


「オッサン。武器屋か鍛冶屋に連れて行ってくれ」

「はぁ?」

「武器が壊れたんだ。だから、武器を買いたくてね。武器以外にも、ポーションとかも買いたいから、店を教えてくれるとありがたい」


 武器……というか、ライガとの戦闘で色々なくなっている。

 ポーション類も使いきってしまったが……一番は武器だ。武器がなきゃ戦えないわけだしな。いや、素手でもやれないことはないが。

 それに、ここの武器屋なら刀もあるだろう。短剣も使えないことはないけど、やはり刀の方が手になじむ。


「なんだ。そういうことなら、ちょっと待ってろ。紹介状書いてやる。まあ、息子の所なんだがな。ちょっと伸び悩んでいるらしいから、出来たら力になってくれ」

「ん?おーけー。とりあえず行ってみるわ」


 アッサリ紹介状を書いてくれた。

 というか、息子って。あの人、結婚してたのか。





 蛇帝殿と呼ばれているらしい姐さん(ヤト)の居城を後にして、徒歩二十分ぐらいの所に鍛冶屋はあった。

 暖簾をくぐって、店内に入る。店内には、刀や包丁が並べられていた。だが、そこに店主たる鬼人の姿は見えない。


「すんませーん」

「はーい、少し待ってて下さい!」


 奥から出てきたのは線は細いが鍛えられた筋肉が見られる青年。あれが息子のヒイロだろう。そして、彼の隣には何故かセイカもいる。


「……セイカ?」

「ああ、カガチか。何しに来たんだ?」

「人間?……ああ、ハクロ様と契を交わしたって噂の。ふぅん、セイカの友達だったんだ」

「ち、ちが──」


 腕に絡まっていたハクロにアイコンタクトでヘルプを求める。どういうこと?


「二人は幼馴染らしいよ」


 成程。そういう訳か。

 とりあえず、あたふたしているセイカは放っておこう。


「そろそろいいか?」

「ああ、ごめんね。えっと……」

「カガチだ」

「何しに来たんだい?」


 そりゃあ、武器の依頼だろう──と、言いかけて紹介状を渡してないのに気づく。


「はい」

「えっと……これは父さんからか。武器の種類は……短剣と刀ね。何か要望は?」


 要望、ね。

 とりあえず、使えればいいんだが……出来れば、長く使えれば良し。


「特にないかな」

「うーん、それなら刀は普通のもので良さそうだ。短剣は……ニードルビーのやつかな」

「ビー……蜂か?」

「うん、蜂の一種でね。もし、良かったら取ってきてくれるかい?その分、割引しておくからさ。セイカも一緒に行ってあげて」


 ほうほう……アッチでは聞かないモンスターだ。

 もしかして、コッチ限定のモンスターか?


「えっ?なんで俺まで……」

「はい、つべこべ言わない。君だって、負けてここでクヨクヨしているだけなんだから行ってきて」

「……はい」


 おお。すげぇ、なんて正論。

 セイカめ、ここでくよくよしていたのか。そりゃあ、邪魔になるわ。


「……ああ、カガチ君。君、武器ないでしょ。これ、貸してあげる」

「これは?」

「売り物にならない半端なやつでね。店頭にも並べられない失敗作だよ。本来なら、こんな駄作は人に渡したくないんだけど……君は死なないみたいだからね。特別だ」


 これでダメなのか。ツヴァルブで売ってた直剣や短剣よりも余程、良いと思うが………。

 まあ、獲物が良い分には問題はない。


「うっし。セイカ、行くぞー」

「あ、ああ」





「ニードルビーというのは、簡単に言えばデカい蜂だ。武器になるほどデカい針が特徴でな。それでも、武器になるのは短剣だけだが……」

「ふぅん」


 街から出て、森を歩く。セイカが言うには街の近くにはいないらしい。それもセイカ達、軍が見回りで狩るからという理由で。

 確かに、近くにデカい蜂がいたら怖い。リアルなんて、アシナガバチが飛んでいるだけでも怖いというのに。クマバチは、もっと怖い。いや、アレはスズメバチだったけ?


 リアルにおける蜂を思い出していると、足元の草むらに目がいく。

 お!薬草あるじゃん。


「……お前、何してるんだ?」

「見てわからんのかよ。採取だよ、採取」

「……お前、草の見分けがつくのか」


 意外そうに言うセイカではあるが、サバイバルの基本だぞ。爺ちゃんに叩き込まれているっての。

 後で『錬金』も試すからな。採取しておかないと……場所が違えば、採取できる物が違うかと思ったんだが……結構、似た感じだ。『レーベ草』というポーションの材料となる薬草に加え、いくつかの毒草という感じで大して変わりは見えない。ただ、質はこちらの方がいいようだ。

 ふぅむ……土壌がいいのか、日当たりがいいのか、それとも別の理由か。


「そう言えば……ヤト様に呼び出されたようだが、何かあったのか?」

「ん?少しな。ハクロと呪印についての説明を受けてた」

「へぇ、ハクロ様と呪印について……は!?呪印って言ったか!?」


 なんだよ?知らなかったのか。

 そもそも、争いの原因はハクロだろ?知らないで戦っていたのかよ……間抜けめ。

 だが、セイカの顔に浮かんでいるのは驚愕じゃない。心配、同情……そんな感情が見て取れる。


「あー、ホクロク殿とか?」

「……そうなんだが、彼自身は問題じゃなくてな。そのご子息が……」


 ああ、うん。問題児なんだな。

 やめて欲しい。問題事は、もう十分だ。


「……まあ、気をつけろ」

「…了解」

「ところで、ハクロ様はどうしたんだ?勝手に呪印を付けるなんて大問題だろ。今頃、折檻でも?」

「……」


 いや、悠々と寝ているぞ?……俺の右腕で。

 右腕を気に入ったのか、そこに引きこもったまま、反応がなかったハクロを軽くタップする。


「……ん?何?気持ちよく寝てたんだけど」

「うわっ!?そこにいらしたのか……」

「てめぇ、寝てたのか…」

「だって、気持ちよくてさぁ。仕方ないんだよ」


 むにゃむにゃと再び、袖の中に引きこもろうとするハクロを無理矢理、引っ張り出す。シャーと威嚇してくるが、気にせず首に巻く。


「………何してるんだ?」

「……一回やってみたかったこと」


 クソォ!その可哀想な奴を見る目は止めろぉ!傷つくんだぞ?。

 気づいたんだけど、もしかしなくても、今、首締められたら死ぬよね?


「へい。そこから、動こうか。ハクロ」

「なんで?カガチがここにしたじゃん」


 ぐうの音も出ない正論。

 いいんだよ。早くどけ、俺の命が握られてんだ。


「ほら、腕に巻きついていいから」

「……なら、それで。そっちの方が暖かいから」


 変温動物なのが助かったか。

 そういや、コイツってどうやって戦うんだ?


「なあ、ハクロ。お前、どうやって戦うんだ?いや、戦えるの?」

「どうって、呪術とか?噛み付いたり?」


 へぇー、呪術なんて使えたのか。

 せいぜい噛み付くか巻き付くしか出来ないと思っていたのに。


「失礼なこと考えていたでしょ?」

「……いんや、そんなことまったく」


 ふっ、貴様ごときにこのポーカーフェイスが見分けられるか。嘘をつく時は堂々と。それが常識だよ。いや、常識なのか?少なくとも、俺の周りの奴らはそうしていた。


「まあ、いいや。主に呪いでの行動制限とかかな。あとは、転移も出来るけど、戦闘じゃ役立たないし」

「呪い?」

「僕は噛み付かないと石化とかは出来ないけど、母さんなら見ただけで石化は出来るよ。あと、僕の毒とかも呪いだからね」


 ふーん。呪術のスペシャリストみたいな感じか?思いっ切り補助だな。いや、即死系の呪いもあるかも知れん。頭ごなしに決めつけるのは辞めておくか。


「……話し中に悪いが見えたぞ」


 何処か奇異なものを見るようにセイカが言葉を紡いだ。

 あー、そうか。セイカにはハクロの言葉が分からないのか。俺自身、普通に会話が成立していたから気付かんかったが、ハクロの言葉が理解出来るのは呪印があるからなんだよなぁ。

 つまるところ、傍から見れば俺は蛇相手に、しゃべり続けるヤバいヤツ……ということだ、気を付けないとな。


 まあ、それは兎も角。ホントにアレを蜂と言っていいのか。


「…………なあ、ほんとにあれ?」

「マジ。最初は驚くさ、俺もそうだったからな」


 デカい。かなりデカい。人間サイズの蜂だ。コイツらに比べれば、アシナガバチなんて目じゃない。クマバチも比べ物にならない。

 それが、五匹くらいか?十メートルくらい離れているのに、羽音が聞こえてくる。


「どうする?」

「はぐれを狙った方がいいかもしれん」

「はぐれ?」

「そのまんまだ。集団から離れているニードルビーのことで、基本的に一匹、二匹で行動しているんだ。だから、アイツらを狩るよりは楽にすむと思う。

 まあ、アイツらだって倒せるとは思うぞ。特に今日はハクロ様もいるし、かなり簡単に倒せるだろう。けど……」

「けど?」

「ここでは分からんが……長引けば援軍が来る可能性がある」


 成程。安全を取るか、多少の危険を取って実入りを取るか、か。

 本来なら安全を取りたいんだが……生憎、金欠でなぁ。なけなしの金でポーションとかを買ったせいでマジで何もないんだな、これが。


「ここにある巣を潰せば、住民の不安が安らぐかもしれん」

「……お前」


 まあ、それは四分の一くらいの理由だ。金欠なんて素直に言えねぇからな。さっきから、ずっと見てくるハクロは騙せんかもしれんが……というか、呪印には心を読む機能でも付いているのかもしれん。


「ハクロ、移動阻害は出来るか?」

「うん」

「じゃあ、それを合図に突っ込め」

「……それだけ?」

「逆に他に打つ手が?」

「……すまん」


 シンプル・イズ・ベスト。

 約五メートルまで距離を縮める。

 俺とセイカが木に隠れ、指でカウントダウンを始める。


 三、二、一……


「零!」

「呪術『金縛り』」


 ハクロ曰く、『金縛り』という呪術は敏捷低下のデバフとまれに麻痺を付与するものらしい。相手によって確率は変わるらしいが、コイツら程度なら確実に敏捷低下は掛けられると豪語していただけある。

 目に見えてニードルビーたちの動きが鈍った。

 しかも今回は五匹の内、三匹が麻痺になっている。普段の行いの良さが出たのだろう。違いない。


「一匹目」


 蜂というのは小さく、素早いから捉えられないのであって、遅くなり、ましてや止まっている奴など屠るのは容易い。

 麻痺は約三十秒程度は確実らしいので、先に動ける奴から潰す。

それはセイカも同じ考えらしく、既にもう一匹の麻痺してない奴を倒した後、二匹目を倒している所だった。


「二匹目、そしてコイツで……オラッ!」

「!?」


 二匹目を倒し、三匹目の麻痺が解けそうだったのでプランBを実行。プランBとは実に簡単でハクロを投げるだけという簡単なものだ。

 投げられたハクロは実に綺麗な弧を描いて……着弾。そのまま、蜂に噛み付いた。そして、噛み付かれた蜂は、みるみる灰色になっていく。

 おおぅ、あれが石化かぁ。えげつないが……完全に石化するまでが長いな。


 完全に石になったニードルビーが砕けて、光に変わる。

 それを見届けて、ハクロは不満そうに這って戻ってくる。


「……なんで投げたの?」

「そりゃあ、それが手っ取り早かったから?」

「非常識でしょ。僕、本当にビックリしたんだから……」

「悪かった、今度はしっかり言ってからやるよ」

「……二度とやらないで欲しい」


 それは無理な話だ。コイツはなんやかんや言ってるが、しっかり石化させてんだよなぁ。

 かなり強力な武器にありそうだ。

 おかげで順調に倒せた。そのため、援軍は来ていない。


 そんなこと話していると、セイカが袋を持って寄ってきた。


「なぁ、剥ぎ取り終わったぞ」

「おお、悪いな」

「いいさ、役割分担だろ」


 そう言って、渡された袋には羽やら針、毒袋があった。

 これ売ったら、どのくらいになるんだろうな?


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