白は黒に染まる
『黒雷』・・・それには覚えがある。
『兜王蟲』と戦った時に出した覚えがある。ただ、頭を悩ましているのはどうやって出したか・・・検討もつかないところなんだよなぁ。全くもって覚えがない。
あの時は無我夢中だったから、気がついたら出ていたみたいな感じなんだよな。
まあ、姉御はそこらへん検討が付いているようだしな。姉御の話を聞いてみるか。
「で、姉御。俺にはその黒雷を出した感覚がなくてですね・・・気がついたら、出ていたみたいな感じなんですが」
「よいよい。ライガとて、その黒い『纏雷』は顕現させておらん。故に妾も推測しかできておらん」
煙管の灰を落として、姉御は続ける。
「まず、『迅雷流』における『纏雷』は紫電に始まり、赤雷を経て、白雷に至る。ライガとて、そうじゃった。つまり、汝の発現した黒雷は『迅雷流』の異例とも言える。じゃが、検討はついておるよ」
異例ねぇ。
はてさて、まったく俺には検討がつかんぞ。
「え!?ついてるの!」
「むしろ、ハクは気づいておらんのか」
はぁ、と姉御はため息をこぼす。
隣からうっ、という声が漏れているが無視だ、無視。
「とりあえず、汝よ。『纏雷』をやってみせよ」
「はい」
言われるがまま、『纏雷』を起動させる。
起動させた『纏雷』は変わらず紫電のままだ。これを黒くしないといけないのだが・・・墨でも、混ぜるか?
「そのままじゃ。大人しくせい」
俺の周りを黒い霧が取り囲む。
この感じは覚えがある・・・呪詛だ。そうか、呪詛が関係しているのか・・・!
呪詛は、俺の紫電に同調し、混ざっていく。
紫から黒へ。その全てを染めあげるように。
そして───
「完成じゃ」
紫電が黒雷へと変わった。
なるほど。呪詛がピースだったのか。そりゃあ、いくら『纏雷』だけで頑張っても無理だったわけだ。
詳しい違いは後ほど調べるとして、だ。
「ありがとうございました、姉御」
礼は言っておかないとな。
「よい、よい。褒美じゃと言ったろう。それにこれは、汝の力じゃ。ハクも関与しておらんようだしの」
え、そうなのか?
てっきり、呪詛と言ったらハクロが関わっているかと思ったんだが。
「カカ、妾もそう思ってたんじゃが・・・ハクの反応を見る限り、違いそうじゃ。それに、汝の刀・・・アレがあれば黒雷は生み出せるようだしの」
そうか。
呪刀には、呪詛操作のスキルがある。つまり、あれで黒雷にしていたのか。
なるほどな。
無我夢中の割に器用なことしていたんだな、俺。
「まあ、その黒い『纏雷』の詳細は汝自信で調べることじゃな。妾もそこまでは知らんからのぉ」
「勿論です。それに新たに賜りました呪印のこともあります。一度、ハクロと共に調べてみることにします」
「そうか、そうか。なら、妾はハクから経過は聞こうかの。面白そうじゃしの」
愉快、愉快と姉御は笑う。
それはさておき、少し忙しくなりそうだ。黒い『纏雷』に関しては突き止めないといけないと考えていたところだったし、新たに呪印の問題も出てきた。元々持っていた『再生』スキルとの兼ね合いも調べないといけないしな。それに、『不滅』だ。テキストには不穏なことが書かれているが、残機が増えると思えばいいスキルかもしれない。
「まあ、励め」
「分かりました。姉御からの助言をいただきましたので、一層ー──」
「と、言いたいところじゃが・・・」
「へ?」
姉御がカンッと煙管に溜まった灰を落とす。
そして、続ける。
「一つ、頼まれてくれんか」
そう言い終わるやいなや、姉御は誰かの名前を呼ぶ。
「シュオウ」
「お呼びですか、母上」
青年が姉御の部屋に入ってくる。
細身、長身に、深紅の髪の青年だ。特筆するところがあるとするなら、その眼だろう。俺は見慣れてしまったが、蛇を思わせる縦長の瞳孔している。
「母上」という言葉といい、間違いないコイツがヤトの子供の一人なのだろう。
「まあ、頼みごとがあるのは妾じゃないんじゃ。此奴はシュオウ、妾の息子じゃ」
「初めまして。僕がシュオウ。一応この国の宰相をやらせてもらっているよ」
宰相っていうと・・・この国のナンバー2ってことか。おいおい、いきなり大物だな。姉御の様子を見る限り、姉御がいちいちエバーテイルの政治を仕切っているとは思えないし、このシュオウが実質政治をしているんだろいう。
あん?そうか。コイツがハクロの兄貴ってことになるのか。全然、似てねぇな。少しは見習った方がいいんじゃないか。
「君がカガチか。ハクがお世話になっているようだからね。挨拶したかったんだけど、中々時間が取れなくてね。僕以外の兄弟も同じ気持ちだと思うよ」
「いや、こちらこそ。エバーテイルにはお世話になってるんで」
「そうか。そう言ってくれるというかありがたいよ。また、機会があれば他の兄弟との場を設けよう」
さて、挨拶はこのくらいでいいか。
本題に入ろう。コイツが俺にお願いしたいことってのはなんだ?
ある程度、強くなったが・・・だが、それでも足りない。正直、俺を戦闘で使うよりも、ジンカを使った方が役に立つ。それに、あの爺さんは隠居したと言っているが、誘えばのるタイプだろう。なら、戦闘力目当てじゃないかもしれない。
他には・・・なんだ?
「さて、それで頼みたいことなんだが・・・ハクロにも関係することだ」
「へ?僕にも?」
「そうだ。ホクロクは覚えているか?」
ホクロクっていうと、アレか。やたらと、敵対視してくる奴らか。
一回、その息子だかとランの店で会ったな。
「一応、覚えているぞ」
「なら、話が早い。そのホクロクのバカ息子のことなんだが、君と決闘がしたいと五月蠅くてね。ちょっとボコしてくれないかい?」
おいおい、笑顔でえげつないこと言うな。この人。
人の皮被った悪魔じゃないのか・・・
「まあ、いいけど。姉御には色々世話になりましたから、その御恩に報いると思えば」
「そっか。ありがとう。一週間後くらいでいいかい?」
あー、多分何もなかったはず。
「いいぞ」
「助かるよ。それじゃ、当日はお願いね」




