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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
天を仰げ、地に伏せろ、汝らの屍を超えて我らは行かん
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鯛を釣りあげた日


 蛇帝殿の地下室。

 いつの日か、ハクロの人体実験に付き合わされ散々な目にあった部屋だった。

 碌な記憶も残っちゃいないが、久々に来ると懐かしさを感じる。人間ってのは不思議なものだ。


「姉御。それで今日はどんな用事で?」


 姉御に呼ばれた理由をまだ知らされていなかった。

 どうにも血が滾り出したジンカから解放してもらったのは感謝するが・・・ヤトはそんなことをする人じゃない。むしろ、いつかの化け物ツバメの時のように酒を片手にゲラ笑いする人だ。

 まあ、俺も見たかったなぁ。セイカが身代わりになっているところは。かわいそうに・・・


「ハクから面白い話を聞いたのじゃ。それで久々に汝の成長を目で確かめようと思っての」


 ほほう。俺の成長ぶりを見たいと。

 ヤトが俺の戦闘を見たのは、冤罪のセイカとの決闘以来だ。

 あの時と比べると修羅場はいくつか潜っているわけで・・・ライガも倒したしな。


「それは嬉しい限り。どうやって確かめますか?」


 ここで力を示しておけば、何かしらご褒美をもらえるかもしれない。なにせ七帝の一人だ。何を貰えるか・・・胸が躍るなぁ。


「カカッ、はやるな。まずは汝の呪刀を確かめるのが先じゃ。ハクに聞いた限りじゃと、呪を溜め込むらしいの」


「・・・ええ、自分としては多少不本意な形ですが」


 見せてみい、とヤトは催促するように手を差し出す。

 その手に呪刀を渡すと、ヤトは鞘から刀身を抜き、マジマジと見る。黒い刀身が、ヤトに睨まれて震えた気がした。


「これは・・・」


 刀身を見つめて、怪訝な顔をヤトは見せる。

 やめて欲しい。ヤトにそんな顔をされると、俺が不安になる。

 なんか前に何も考えずに呪詛を流し混んでいたハクロ(馬鹿)がいるもんだから、ついつい『獣』が再誕したんじゃないかと勘繰ってしまう。嫌だぞ、アイツとまた戦うのは。


「カカッ!!カカカカッ!!!そうか!!!そうなったか!!!」


 突然、ヤトは哄笑した。

 あっけにとられる俺とハクロを置いて、ヤトは続ける。


「これは予想できん!!ライガの二の舞になるやもと心配しておったが、まさか妾の予想を超えるとは。これだから世界は面白いのぉ!!!」


 はて?どうにも、ヤトには俺とハクロには分からなかったものが、分かっているらしい。

 俺個人としてはとても気になるので、早く聞かせて欲しいのだが・・・その、聞き出せる雰囲気ではない。なんか、自分だけの世界に入っていらっしゃる。

 あれだな。思いがけずガチャでレアキャラ引いて、どうやって運用しようか?って悩んでいる時と似ているな。あ、最近ガチャ回してねぇや。


「ふむ・・・少し手助けしてるかの」


 ガチャ欲に支配されかけていた思考が引き戻される。

 唐突に、ヤトは呪刀に力を入れる。

 何が行われているか・・・それを理解することはできない。だが、俺の呪印がわずかではあるが蠢いた気がする。恐らく、呪詛を操り何かしている。簡単に言うなればチューニングだろうか?もしかすると改造かもしれない。


 微かに呪刀が震える。痛みに耐えるような悲痛な震えだ。無論、無機物である刀のに意思などあるわけないのだが。

 それがどれほど続いたのか・・・呪刀の震えが収まった後、ヤトは俺に呪刀を返してきた。

 それを恐る恐る受け取って・・・


「何をしたので?」


「いや、何。汝が心配するようなことではない。いずれは分かることじゃ。その時を楽しみにしとれ。ただまぁ、『獣』の心配はない。それだけが断言しておこう」


 そっか。それはよかった。とりあえず、乗っ取られる危険性は無くなったということか。

 ただ、心配なのはヤトですら想像外のルートに入っているってことだな。ヤトの口ぶりからして、悪そうなものではなさそうなんだけど。


「さて、次は汝じゃな」


「へ?」


「その拘束具を外して、呪印を見せてみよ」


 そっか。呪印もあったか。少し忘れ気味だったが、俺も最近確認してしてないな。

 装備している赤衣の拘束具を外して、その下の呪印を見る。前に確認した時と対して変わっていない気がする。あ、でも左胸くらいまでに成長してる。なんか趣味の悪いタトゥー見たいだな。


「やはり成長しておるの。ハク、そろそろ呪印の第二段階じゃ。素体の強度も十分じゃ。やれ」


「うん!!」


「え?」


 ちょ、ちょっと待ってくれ。呪印の第二段階ってなんだ?何をするんだ?

 というか、こういうのは俺の同意が──


 こういう時のハクロの動きは速い。普段は怠けて動こうとしないのに、こういう時だけは速い。

 スルスルと俺の身体を這い上がり、首元にその牙を突き刺す。


「ぐッ」


 首元から何かを打ち込まれる感覚。そして、左腕の痣が胸に向かって這っていく感覚。

 それが収まると、腕にあった呪印は無くなっていた。

 これはまさか・・・呪印から解放されたのか?


「成功じゃ。まずまずじゃな」


 胸を見てみい、とヤトは指をさす。

 胸には尾を喰む蛇の痣があった。

 やっぱり、解放なんてされてなかったか。


 ええっと、どう変わったんだ?


────呪印 第二段階────

 蛇帝の血族による祝福。

 しかしながら、呪いには変わりなくその身を蝕む。

 祝福はあらゆる呪いから身を守り、その身体を強化する。その反面、身体は脆くなる。


 たび重なる戦闘を経て、祝福は加護へと転ずる。

 再生の象徴たる白蛇の血族の加護は再生。どのような傷を負おうとも、たちまちに再生を果たすだろう。しかして、再生以外の回復は受け付けなくなる。それが死に瀕しようとも回生する不滅なのだ。


 ただ、その力は極めて不安定であり、未知の可能性を持つ。そのため、力を求めるモンスターたちには格好の餌だろう。


──スキル

『再生』 『不滅』



 なるほどなぁ・・・強いな。ぶっちゃけかなり強い。

 前半部は呪印(第一形態)の時と同じだが、後半部だ。再生能力と残機があるのは、シンプルに言って強い。特に『不滅』だ。読んだところによると、まだ一回きりだが、成長させれば話が違ってくる。これなら、いくらVITを削られようがおつりが出るくらいだ。

 ただ、デメリットとして一切の回復が封じられたのはマズイ。


 俺のプレイスタイル上、『纏雷』で馬鹿みたいにHPを削る。その回復にポーション等を使えないのは正直辛い。


 どうっすっかなぁ・・・やっぱり、素直に『再生』を鍛えるしかないのか。


「う〜ん・・・」


 こりゃあ、しっかり考えないといけんな。

 どうにも、今までのプレイスタイルではいけない。だが、メリットが大きいのは事実。

 ココにきて、基礎能力の底上げを図れたのはもの凄く大きいだけに、こいつらを上手く活用する手を考えないとな。


「さて・・・カガチや」


「ん?はい」


 これで終わりかね。呪印の成長で考えることが多すぎる。

 さっさと検証とかしないといけないし・・・などと考える俺は甘かった。


「汝。黒い雷を出したようじゃの」


「へ?」


 思いもかけない言葉に、俺は生返事を返してしまった。その後、肯定にええ、まぁとなんとか言葉を捻り出す。


「その雷、おおよそ検討はついておる。褒美じゃ、その手解きもしてやろう」


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