第97話 第3層と小麦料理
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俺とレンがゲートを抜けると、リオとユダが上を見上げていた。
「2人して何してんだ?」
俺とレンも釣られて、上を見上げるーー。
「凄い階段だな……どこまで続いてるんだ?」
「ジン、マップを見てみろ。この階層は、この空間だけみてぇだ」
レンに言われて、マップを見ると、円形の部屋が表示されていた。部屋の周りには螺旋階段があり、ずっと上まで続いているようだ。
◆東のダンジョン……第3層『塔』
「この階段を上って行くみたいだな」
「この銅像はなんだろ……ちょっと不気味だね」
リオが見つけたのは、部屋の壁に等間隔に置かれている銅像だ。銅像は目や耳が尖っていて、羽や長い尻尾まである。
「まるで悪魔みてぇだな。ここの守護者の趣味なんじゃねぇか?」
「そんなことより、態々この階段を上っていくのか?」
「上に登るだけみてぇだしな、一気に行くか!」
俺達は、魔力強化を使って塔を登り始めた。
※ ※ ※ ※
「ジンくん……ちょっと休憩しない?」
しばらく登ったところで、リオが聞いてきた。魔力切れ寸前なのか、目が虚ろだ。
レンとユダの方を見ると、弱音は吐かないが、ユダの汗が凄かった。レンは、まだ余裕がありそうだ。
「仕方ないな、捕まれ」
俺はリオをおぶって引き続き飛んだ。
ユダの方を見ると、汗を拭いながら、必死に食らいついていた。
「僕は、まだまだ大丈夫ですから!」
「そうか? 辛くなったらレンに言えよ。レンは余裕がありそうだからな」
「1番涼しい顔をしてるのは、ジンだけどな!」
※ ※ ※ ※
「頂上が近いみたいだ。マップに祭壇が表示されたぞ」
「や、やっとですか……」
リオをおぶって、1時間ほど登ったところで、マップに変化があった。
ちなみに、ユダは飛ぶ前より老けているように見える。
「っと、ここが頂上か」
階段が天井の穴に続いていたので、そこから入ると、部屋になっていた。
部屋を見渡すと、壁一面にビッシリと、悪魔の銅像があった。
「ここの守護者とは趣味が合いそうにねぇな……」
後ろから、レンとユダも続いて入ってきた。
ユダはゼェーゼェー息を切らしているが、大丈夫だろうか。
「ジンくん……そろそろ、下ろしてもらってもいい?」
「あぁ、悪い。忘れてた」
俺はリオをおぶっているのを完全に忘れていた。
「部屋の真ん中に祭壇があるけど、ここが試練の部屋なのかな?」
「ここよりも先に道は無さそうだ。ここが試練の部屋で会ってるんじゃないか?
このまま、試練に挑みたいところだが……」
「悪いが、少し待ってやってくれ」
ユダを休ませた方がいいだろう。体力も魔力も限界らしく、足をプルプル震わせている。
「あぁ、分かってる。とりあえず、晩飯にしようか。
ユダはそこら辺に座ってろ」
「申し訳ございません……すぐに回復させますので……」
※ ※ ※ ※
「出来たぞ! 今日の晩飯は『ラーメン』だ!」
「おぉ! ラーメンか!」
「らあめん? スープみたいだけど……」
リオは初めて見る料理なので、戸惑っている様だ。
この世界にも、小麦を使った料理はあるが、ラーメンの様に麺にしている料理は無かった。近い物で、すいとんの様に、スープに小麦粉を練った物を入れた料理はあったが、具材も無く、味も薄かった。
「これが、レン様がずっと食べたいと言われていた料理ですか!」
「ジンが作れるなら、もっと早く頼めば良かったぜ!」
どうやら、レンはラーメンが好きらしい。
ちなみに、麺は昨晩のうちに仕込んだ物だ。材料はイーストでいくらでも手に入った。
「伸びる前に食べてくれ!」
「おう! それじゃ、食うか!」
「「「「いただきますっ!」」」」
全員、あっと言う間にラーメンを平らげた。
「今日はここで寝て、明日の朝から試練にするか」
「ふぁ〜あ、そうだな。ここなら、魔導船を出せるな」
3層の試練は明日の朝にして、俺達は魔導船の中で寝ることにした。銅像に見つめられながら、寝なくて済むのは助かった。
※ ※ ※ ※
朝目覚めた俺達は、試練に挑む準備をしていた。
ユダも魔力が全快したらしく、レンと喋りながら、体を動かしている。
「そろそろ、始めるか?」
「そうだな! こっちはいつでもいいぜ!」
レンに確認を取って、瘴気の吸収を止める。
部屋中の瘴気が濃くなっていき、銅像に瘴気が集まり始めた。
「え? 動いた!?」
「そういう事だったのか……」
壁一面に配置された銅像が、壁から剥がれるようにして、動き始めたーー。
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