第49話 マップの機能と瘴気
「無いね·····祭壇·····」
「そうだな·····この地下空洞のどこかにあるはずなんだけどな·····」
俺達はかなりの時間、地下空洞を彷徨っていた
マップを見ながら、しらみつぶしに確認してきたが、祭壇は見つけれていない
そんなに広くないとは言え、分岐点がかなりある上に、行き止まりばかりだ
精神的にも疲れてくる
「まだ、見てない場所は·····祭壇はどこにあるんだ·····」
マップを見ながらブツブツ呟いていると、マップにマーカーが表示されていた
「何だこのマーカー、人でも魔物でもないな·····」
「どうしたの?」
俺が独り言を呟いていると、リオが聞いてきた
「マップに、人でも魔物でもないマーカーが表示されたんだが、何かわからないんだ」
「なんだか、気味悪いね·····見に行くの?」
「正体が気になるからな、それにまだ探索してない場所だから、遅いか早いかだ」
俺達は、謎のマーカーを目指して進んだ
「あそこの角を曲がれば、マーカーの正体が見えるはずだ」
「やっと着いたのね·····結構遠かったよ」
地下空洞はかなり入り組んでいるので、なかなか目的の場所まで近づけなかった
俺達は角を曲がって、マーカーの正体を確認する
「扉だ!」
角を曲がった先にはあの大きな扉があった
「マーカーの正体は扉ってこと?」
「いや、マーカーはもう少し先にあるはずなんだが·····とりあえず、扉があるということは、この先でサソリと戦闘になるってことだな」
「あのサソリが大量に出るのね·····」
「そこまで広くない部屋みたいだから、炎流で対処出来できるかもな」
そう言いながら、扉を思いっきり押した
扉の先は直径50m程の円形の部屋だった
俺は辺りを見渡しながら、部屋の真ん中へ向かう
真ん中辺りに来た時『バンッ!』と、音を立てて扉が閉まった
「ジンくんはいつも待ってくれないよね·····」
リオが愚痴をいいながら、俺のそばに寄ってきた
瘴気がどんどん集まってきている
「今回もかなり多そうだな」
「炎流でいくならバリア張っとこうか?」
「いや、待ってくれ·····」
バリアを張ろうとしていたリオに辞めるように指示をだす
瘴気の集まり方が、今までと違うからだ
今までは、瘴気が部屋全体に広がるように動いていたが、今回は1箇所に集まっている
瘴気が形を作っていく·····
そこに現れた魔物は、全長10mはあるであろう巨大なサソリだった
サソリの赤い目がこちらを睨みつけている
「この部屋に対して、デカすぎだろ!」
俺は文句をいいながら、リオを抱えて、後ろに大きく飛んだ
俺たちがいた所に、サソリの尻尾が突き刺さった
「動きも早いな·····まずはあの尻尾をどうにかしないと」
「あんなの無理だよ!デカすぎだよ!」
俺に抱えられながら、リオが文句を言っている
「リオは火球でもぶつけといてくれ、俺は接近して攻撃してみる」
「戦うの!?あんなデカいの今まで見たことないよ·····」
「戦わないと死ぬだけだ、逃げ道なんてないしな
俺が倒してやるから、援護を頼んだぞ!」
リオを地面に下ろして、頭を撫でながら言うと、リオが頬を少し赤くしながら頷いた
俺は血刀を2本作り出し、両手に構えながら走った
光属性と闇属性をそれぞれの血刀に能力付与し、サソリとの距離を詰めようとするが、サソリは両方のハサミで攻撃してくるので回避で精一杯だ
2つのハサミを避けていると、真上の死角から尻尾で突いてきたので、後ろに回避する
「くそっ!中々近づけないな·····」
俺は苛立ちながらもハサミと尻尾の攻撃をかわして隙を伺う
右から来たハサミを血刀で受け止めると、左かもハサミが来たので、もう一本の血刀で受け止める
受け止めるのとほぼ同時に、真上から尻尾が来た
俺は血刀をもう一本作り出して、真上に浮かべて受け止める
サソリが『ギーギー』鳴きながら、俺を押し潰そうとしてくる
「ううぉおりゃぁああ!」
俺は闘気を発動させて、ハサミと尻尾を弾き飛ばした
弾かれて隙だらけになった、サソリの体の上に乗り、一気に走り抜ける
サソリの尻尾を根元から切断した
切り落とされた尻尾は、霧になって消えていった
『ギーギャーギギー』
サソリが痛みを感じているのか、怒っているのかよく分からない叫びを上げている
俺は、体の上に乗ったまま、両方のハサミも同じように切断した
「終わりだな·····」
血刀をサソリの頭に突き刺す
『ギギーー!』
今までより、大きく鳴いたサソリが霧になったかと思うと、俺の体にまとわりついてきた
「っ!なんだ、これ!」
瘴気が体に纏わりついてくる
手で取ろうとするが、全く取れない
「ジンくん!大丈夫!?」
リオが心配して近づいてくる
「ダメだ!来るな!瘴気が·····ゴホッ·····ゲホッ」
叫んだ時に瘴気を吸い込んでむせた
瘴気が、体内に入り込んでくる
身体中が痛い·····息が出来ない·····何も考えられなくなり、俺はその場に倒れ込んだ
「ジンくん!じ·····くん!····んく·····」
リオが叫んでいる声を聞きながら、意識を手放した
俺は、夢を見ていた
暗くて、音もなにもない世界
俺はただその世界で落ち続けていた
「俺は何してたんだっけ·····」
手足の感覚が無く、動かすことが出来ない
「何か大切なことなんだけど·····思い出せない」
考えることが辛くなってきた
「なんだか、どうでもよくなってきたな·····」
眠気に襲われ、目を閉じる
「·····ぇ!じ··く··、·····ぶ!?」
誰かがなんか叫んでる、誰だ·····?
寝かせてくれ·····うるさい·····誰なんだ·····
少しずつ意識がはっきりしてくる
「ねぇ!ジンくん、大丈夫!?」
「起きて!ねぇってば!」
「ぅるさぃ·····起きたから·····」
目を覚ますと、涙を流しているリオがいた
「俺は·····どうしたんだ?サソリは?」
「ジンくん!よかった·····サソリはジンくんが倒したよ、ジンくんがサソリを倒した時に、瘴気がジンくんに纏わりついて·····ジンくんが倒れちゃって·····それで·····私·····」
「そうか·····もう、大丈夫だ」
そう言って、体を起こす
「ほんとに大丈夫?なんともない?」
「あぁ、大丈夫だ、逆に少し寝て調子がいいぐらいだ」
なんとなく、体が動かしにくいが、気にならない程度だし、頭はスッキリしていて、調子がいい気もする
1つ気になるのは、魔力のコントロールがいつもより重たいような、シコリがあるような、変な感覚があるぐらいだが、今は気にしても始まらない
「とりあえず、先に進もう」
「大丈夫ならいいけど·····あまり無理しないでね?」
リオが心配しながら俺についてくる
俺は祭壇に近づくと、マップに表示されているマーカーも近くなる
「マップのマーカーの正体は祭壇だったのか·····マップにこんな機能があったなんて、知らなかった·····」
「今まで知らなかったの?」
「知らなかった·····と言うか、マップで探す事なんて、無かったからな
前いた世界じゃ、当たり前のことだったのにな·····」
日本じゃ、スマホのマップ検索には何度も助けられた
この世界に来てから、マップで町や飲食店、道具屋を探す事なんてする必要がなかった
町は方向さえ分かれば、マップで確認して向かっていたし、飲食店や道具屋に行くのに、態々、マップなんて使わなかった
「何にしても、この機能があれば、マップで確認出来る範囲でだが、祭壇を見つけることもできるってことだ」
「また、ジンくんのチート能力が増えたね·····」
リオが呆れているが、俺は祭壇の本を手に取り、魔力を流した
壁が白くひかり、通路が現れた
「次は4層だな!攻略記録更新だ」
俺達は次の階層に向かった




