第33話 新スキル肉と修行用空間
今日も早朝に目を覚ました俺は、魔力を全身に巡らせる
しばらくすると、リオが起きた
「おはよ·····いつも起きるの早いね·····」
眠たそうに目を擦りながら俺に話しかけてきた
髪がボサボサで凄いことになっている
「おはよう、リオも一緒にやるか?」
「ぅん·····」
リオが髪を手ぐして直しながら返事をする
「修行は朝ごはん食べてから?」
俺の隣に座りながら聞いてきた
「そうだな、それぐらいから始めようか
あ、そういえば、今日から『スキル肉』を新しくしたぞ!」
昨日の夜、1人で宿に帰ってきた俺はやることも無かったので、色んな魔物の素材を使った、通称スキル肉を改良して作っていた
キッチンは宿の人に頼んで使わせてもらった
王都に着いた時には、スキル肉で手に入るスキルは2人とも、Lv.Maxになっていたので、もう食べる必要がなくなっていたからだ
ちなみに、護衛依頼の間にも色んな魔物を倒したので、新スキルも見つかっている
オークの肉には未だに手をつけれていない·····さすがにあれを食材として扱う勇気がなかった
今回のスキル肉の材料はこんな感じだ
【パララサスリザード】
【スキル】麻痺耐性:Lv.0.3
麻痺毒を持ったトカゲの魔物
麻痺耐性·····麻痺に対して耐性力が上がる
【コンバットブル】
【スキル】威圧:Lv.0.5
角が大きく発達した雄牛の魔物
威圧·····格下の相手を動けなくする
【ジャイアントバット】
【スキル】感知:Lv.0.7
かなりデカいコウモリの魔物
感知·····微量の魔力や魔素を感じ取ることが出来る
「それって食べれるの?ジンくんの料理だから大丈夫だとは思うけど·····」
材料を説明してスキル肉を見せると、リオがゲテモノ料理を見るような目で見ている
今回は唐揚げのような見た目にしてみた
この世界には揚げ物がないようで、サラダ油の様な食用油は無かったが、アイテムボックスを使えば油の抽出なんて直ぐにできた
穀物を大量に買い込んだので、店の人に変な目で見られたが·····
「前まで食べてたスキル肉にも色々入ってたぞ?」
「え·····何入れてたの?」
リオの表情が固まっている
そういや、全部は説明してなかったもんなー
「コウモリの類は初めてだが、獣臭は町で手に入れたハーブで、ある程度は無くしているから大丈夫だ、意外と美味かったぞ?」
「ジンくんは食べたの!?」
「もちろんだ!王都に来て色んな食材が手に入ったからな!昨晩は試作しまくった!」
久しぶりの料理で色々作りまくったので、キッチンを借りたお礼に、宿の人にもおすそ分けしておいた
もちろん、能力付与はしていないので問題にはならないだろう
「本当に料理が大好きなのね·····私は食べる専門でいいわ·····」
そう言ってスキル肉を手に取って口に運んだ
「·····っ!何これ·····外はカリッとしてるのに、中は柔らかい!」
「3種類の肉をブレンドして作ったんだ、本来は鶏肉を使うんだが、色々試したらこれが一番うまかった、それは『からあげ』と言う料理だ」
「これならいくらでも食べれるよー!おかわり!」
「おかわりはいっぱいあるが、食べすぎると太るぞ?」
「うぐ·····ジンくんの意地悪·····」
リオがフォークを持ったまま、こっちを睨んでいる
「早く朝飯食いに行くぞー」
出していたスキル肉をアイテムボックスに収納して、食堂に向かった
「これは誰が作ったんだ!作り方を聞かなかっただぁ!?食べてる間にいなくなっただとー!?なんで俺に直ぐに報告しなかったんだ!」
食堂に着くと誰かが大声で怒鳴っていた
俺達はとりあえず、空いてる席に着く
俺達に気づいたスタッフがオーダーを取りに来た
「おはようございます!騒がしくて申し訳ございません·····料理はしっかりお出しできますので·····!?お客様は昨晩の!」
スタッフが俺を見て叫んだ
俺も顔を見て思い出したが、キッチンの使用許可を取ってくれたスタッフだ
「あぁ、昨日はキッチンをありがと、器具も使いやすいものばかりだったよ」
そう言うとスタッフがすごい勢いでキッチンに走っていった
まだオーダーしてないんだけど·····
しばらくすると奥から厳しそうな男と一緒にさっきのスタッフが出てきた
「おい!てめぇか!昨日ウチの仕事場使ったってぇ客は!」
「そうだが?一応許可を取ったつもりだったが、まだ何か必要だったか?」
男が喧嘩腰で言いよってきたが、俺は引かずに答える
男と睨み合う·····
「レシピを教えてくれ!いや、教えてください!」
少しの沈黙の後、男がすごい勢いで土下座してきた
朝から騒がしい食堂だ·····
「教えるのはいいが、作れないと思うぞ?」
「この王都一の宿の料理長をしている俺が作れない料理だぁ!?」
男がまた喧嘩腰に俺を睨みつける
血の気の多い男だ·····
「わかった·····教えるから先に飯を食わせてくれ·····」
俺達は朝食を食べたあと、キッチンに来ていた
「作り方は見て盗め!レシピが知りたきゃ、俺を納得させる料理を作ってみろ!」
俺は料理人に一言だけ言って、料理を始める
この言葉は親父にガキの頃から言われ続けた言葉だ
料理人たちは俺の手元や食材を見てメモに書いていく
「なんだあの粉は!」
「全部の粉が味が違うぞ!」
「パンをあんなに粉々にして何してんだ?」
料理人たちが口々してくる質問にある程度答えながら、料理を作り終えた俺は、大皿に盛り付けて料理人たちの前に出す
作った料理は、からあげ、てんぷら、コロッケの3種だ
「旦那!このサラッとした様なヌルッとした様な水はなんだ?こんなの見たことねぇ·····」
料理長が聞いてきた
「それは油と言うものだ、動物や植物から取ることができるが、それは植物から作ったものだ」
「手に入れる方法は·····」
「ないだろうな、俺が作った物だからな、欲しけりゃ少し分けてやるから、自分たちで油も作ってみろ」
そう言って、1L程の油を分け与えた
俺達は油と料理に群がる料理人達を他所に部屋に戻ることにした
「さて·····時間のかかる朝食だったが、修行を始めようか!」
「そうね·····朝からちょっとつかれたわ·····とりあえず着いてきて」
リオが呟きながら、ゲートを開く
ゲートに入った先は·····異空間だった
「いつもの異空間·····じゃないな、新しく作ったのか?」
「そ!修行用に作ったの!」
「前までの異空間と何が違うんだ?」
異空間は地平線の先まで白一色が続いている、何も変わらない様に見えるが·····
「何も変わらないよ?」
「は?空間制御で何か作ったんじゃなかったのか?」
俺は期待しすぎていたのかもしれない·····
「んとね·····異空間に違いはないんだけど·····まずはこのドアね」
リオの後ろにドアがあった、と言うより、ドアしかない
「ドア?」
「このドアは、私がいなくても異空間に来れるように作ったの!このドアは初めの異空間にも繋がってるから修行する時は壊さないようにアイテムボックスの中に入れといてね」
このドアでゲートを固定しているらしい
ドアノブの所にダイヤルがあり、初めの異空間と修行用異空間とを選べるようになっていて、魔力を込めるとゲートが繋がるらしい
『どこ〇もドアじゃねぇか!』
心の中で叫びながらアイテムボックスに収納した
「あとは修行相手ね!」
そう言うと、空間が揺れて暫くして動きが止まった
透明の空間でハッキリとしないが人型に見える
「なんだ·····これ」
「驚いた?これは空間制御で作った人形·····かな?今は私のスキルを半分ぐらい受け継いでる状態なんだけど、これから修行していけば、学習して強くなるの!」
学習する·····人工知能ってことか?
俺が黙っていると、リオが説明を続ける
「昨晩は全種の魔法スキルを教えるところで終わってたんだけど、覚えがすごい早いからすぐにジンくんの相手も出来るようになるはずよ!」
「すごいな·····こいつがいればすごい戦力じゃないか?」
「それが·····この空間でしか維持出来ないの·····」
どうやら、空間人形は、この異空間だからこそ制御できる能力らしい
つまりこの空間は、誰かと戦わすことは出来ないが、戦えば成長する相手と修行できる空間ということだ




