第32話 王都観光と転移者
次の日の朝、いつも通りに早朝に目を覚ました
隣には、まだ寝息を立てているリオがいる
俺は布団の上に座って、日課となってしまった魔力コントロールの修行をする
護衛中は朝一番にするようにしていたので、朝にする習慣がついてしまった
魔力を身体中に巡らせると何だか気持ちいい
全身をマッサージされている気分になる
俺は目を閉じ、一定の速度でゆっくりと身体中に魔力を巡らせていく
「今日もやってるのね·····私もやろっかな!」
一通り終わった頃に、リオが起きてきた
隣に座って魔力を身体中に巡らせ始めた
「俺は今終わったところだ」
「え·····」
俺はベットから降りて、出かける準備を始める
リオはポカンとしている
魔力は無意識に身体中に巡らせているようだ
「武術大会まで特にやることは無いが、折角の王都だから少し観光しようと思が、リオも来るか?」
「行くー!」
王都観光に誘うと、花が咲いたように笑顔になって返事をしてきた
リオは、魔力コントロールの修行もそこそこに、出かける準備を始めた
リオが準備できるのを待って、王都の城下町に向かった
城下町には色んな店が立ち並び、早朝でも開いてる店がちらほらある
「腹が減ってるし、まずは朝飯だな」
俺達は適当な店に入り、朝食を食べることにした
俺達が入った店は、夜は焼肉屋の様な店をしていて、朝はスープとパンのセットを出している店だった
メニューは1種類しかなく、席に着くなり勝手に料理が運ばれてきた
スープには、野菜や肉が細かく刻まれて入っていた
じっくり丁寧に煮込まれているのか、スープに濁りはなく透き通っている
俺は1口、スープを啜る
「うまっ!何だこのスープ!」
「うまっ!こんなスープ飲んだことねぇよ!」
俺はつい、声を出してしまった
俺の席の後ろの人も、声が出てしまったようで、俺とタイミングが同じだった
周りの客達もその光景を見て、クスクス笑っている
俺達はお互いに気まずそうに顔を合わせて苦笑いする
「「ん?」」
俺とその男は同時に頭に『?』が浮かんだ
その男の風貌からは何だか懐かしさを感じる
目と髪は黒色で、顔立ち平たく、凹凸が少ない·····
「「日本人か?」」
俺達はまたハモった
「「プッ!ハハハハ」」
俺達は吹き出して笑った
周りのみんなも笑っているが、俺達の笑いはそういうことじゃない
「なぁ!あんたはどこから来たんだ?」
その男が質問してきた
答える前に、ステータスを鑑定する
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【名前 / 性別】イチノセ レン/男
【年齢 / レベル】17歳 / Lv.54
【スキル】剣術:Lv.Max / 槍術:Lv.Max / 斧術:Lv.Max / 棒術:Lv.Max / 拳術:Lv.Max / 火魔法:Lv.3 / 水魔法:Lv.3 / 風魔法:Lv.3 / 土魔法:Lv.3 / 闇魔法:Lv.3 / 光魔法:Lv.3 / 身体強化:Lv.Max
【ユニーク】転移者 / 鑑定 / 成長促進
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かなりのチート状態だ·····人のことを言えないが·····
多分、ユニークの成長促進がこのステータスの原因なのだろう
【成長促進】
経験値ブースト
スキル成長ブースト
スキル理解度向上
経験値ブーストとスキル成長ブーストはそのままの意味で、自分のレベルとスキルのレベルが上がりやすくなるようだ
スキル理解度向上·····これはかなりチートだと思った
【スキル理解度向上】
1度見たスキルを取得することが出来る
取得したスキルは相手のレベルに関係なくLv.1となる
つまり、俺が縮地や闘気をみせれば直ぐにLv.1の状態ではあるが取得することができるという事だ
しかも、すぐに成長してどんどんレベルが上がるのだから余計に厄介だ
「日本からだ、俺と同じ転移者だよな?」
「あぁ、俺も転移者だ·····ジンか!よろしくな!」
「俺のステータスを見たのか、こちらこそよろしくな!レン!」
「鑑定が使えるのか?ジンのステータスにユニークは無かったはずだが·····」
「レンはステータスの隠蔽を知らないのか?」
隠蔽について教えてやると、レンはかなりビックリしていた
「ステータスを隠蔽したところで、見れる奴は転移者ぐらいだから、あまり意味が無いがな」
名字を無くせたのは使えたが、スキルが知られていない世界では、他に意味が無い能力だった
「いや·····城にいるんだよ·····鑑定のユニークスキルを持ってる奴が·····修行する度に成長具合を見てくるんだ·····」
レンがウンザリしながら答えた
どうやら、王宮魔導師にユニークスキルの鑑定を持っている奴がいるらしい
レンが城に出入りしているということは·····
「レンはもしかして、王家専属冒険者をやっているのか?」
「あぁ、そうだ·····俺がBランクになった時に城から使者が来てな、トントン拍子に話が進んで気がついたら専属冒険者だ」
「ダンジョン攻略のためか?」
「そうだ、本当かは知らないが、なんでも願いが叶うらしいからな!俺は絶対に元の世界に戻る!そのためには強くならねぇといけねぇ!」
理由はわからないが、どうしても元の世界に戻りたいらしい
「ってことは、今度の武術大会に出るのか?」
「もちろんだ!魔導船は俺がいただくぜ」
「じゃあ俺達はライバルだな!俺も武術大会に出るからな!」
「そうか·····強敵だな·····まぁ今考えても仕方ねぇや!それより、いつこっちに来たんだ?」
レンはどうやら、行き当たりばったりの楽天的な性格のようだ
この後、レンと転移後の話で、かなり盛り上がった
レンは俺と同じ日にこっちに来たらしく、来て直ぐに、王都の騎士団に発見されたらしい
その後は王都で冒険者登録をしてランクを上げていたらしいが、盗賊を討伐する決心が付かずに少し時間がかかったらしい
Bランクになった後は、使者に連れられてこの国の王、シングルトン・シグニンズと謁見したらしい
初めて知ったが、この国はシグニンズ国と言うらしい·····俺はもう少しこの世界に興味を持った方がいいかもしれない
シングルトン王にダンジョンのことを聞き、元の世界に戻れる可能性を知ったレンは王家専属冒険者となったそうだ
それからはずっと王都で修行の日々だそうだ
鑑定スキルを持っている王宮魔導師によって、転移者であることはバレているらしいが、生活に不自由もないらしい
王家専属冒険者である以上、Aランクになれと、王より言われたので武術大会へ参加することにしたらしい
「王は魔導船をくれないのか?さっき魔導船はいただくって言っていたが」
AランクになるだけならTOP3に入ればいいだけだ
態々優勝する必要がないなら、魔導船を俺達には譲って欲しいところだが·····
「それがな·····魔導船はかなり高価らしくてな、王家専属冒険者といってもなんでもくれるわけじゃないから、自分で手に入れるしかないんだ、まぁ王も俺なら優勝できるから問題無いとか言ってたが、ジンが参加するなら話が変わってくるな·····」
王は意外とケチだった·····
「まぁこればっかりは仕方ねぇな、考えても埒が明かない、どっちが優勝しても文句なしだ!」
レンが手を前に出してきた
「あぁ!戦うからには本気で行くからな!」
俺も手を前に出して、しっかりと握手をした
「そんなことより、昨日王都に着いたとこなんだろ?俺が王都を案内してやるよ!ずっと王都にいたからかなり詳しいぞ!」
レンが提案してくれた
俺はリオと顔を合わせて、いいか確認する
リオが頷いたので、レンに案内を頼むことにした
「あぁ!よろしく頼む!色々教えてくれ!」
「っと!その前にその子を紹介してくれよ!ジンの転移してからの話にちょっと出てきたリオちゃんってのが君だろ?」
「そうだ、それ以上に紹介することがあるか?」
「え?ジンとの関係とか馴れ初めとかあるだろ?」
「えっと·····私は·····その·····」
リオがちょっとモジモジしてる
「いや!俺達はそういう関係じゃないんだ·····」
「なんだよ·····そんなんじゃねぇのかよーつまんねーな」
レンが笑いながら話を終わらせてくれた
その後は王都観光を楽しんだ
レンは本当に王都に詳しく、裏路地などを通って行きつけの店等に連れていってくれた
楽しんでいると、城下町に大きな鐘の音が響いた
「もうこんな時間か!そろそろ城に戻るわー!」
「レンに会えてよかったよ!明日からは修行か?」
「俺もだ!明日も修行だが、本当は今日も修行なんだ、めんどくさくてバックれてきたんだけどな·····」
「おいおい、そんなことして大丈夫なのか?仮にも王家専属なんだろ?」
「まぁ·····そのおかげで2人に会えたんだ!たまには休息も必要だからな!また武術大会で会おうぜ!絶対勝ち上がってこいよ!」
そう言ってレンは城に向かって走っていった
「強敵が武術大会に出てくるなら、しっかりと修行しとかないといけないな·····」
「明日から修行?」
俺の独り言に、リオが反応した
「そうだな、リオも修行するか?」
「んー·····私はジンくんの修行を手伝うわ!準備するから先に宿に帰ってて!」
何の準備なのかわからないが、リオが異空間に入っていった
1人になった俺は、王都の街並みを見ながら宿に帰った
リオは寝る頃には帰ってきたが、準備については、何も教えてくれなかった
明日まで秘密なんだそうだ·····




