第25話 接近戦術と二人の関係
「かなり早いな·····」
俺が呟いていると、草を掻き分けて、女盗賊が現れた
「あたしのアジトでなにやってんのさ!アイツらをどこにやったんだい?」
「何って·····盗賊討伐依頼だけど?ここにいた盗賊達は全員倒したけど、あんたも盗賊だよな?」
とりあえず、質問に答えて質問を返す
ついでにステータスを鑑定しておく
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【名前 / 性別】ステア/女
【年齢 / レベル】21歳 / Lv.32
【スキル】身体強化:Lv.5 / 闘気:Lv.3
見たことがないスキルがある·····
「あたしはここの頭だよ!あんたら2人だけで全員を相手したってのかい?そんな嘘を信じるわけ無いだろ!どこかに仲間が隠れているんだろ?」
「まぁ、別に信じさせる必要も無いしな·····」
「ここは私がやるわ!」
闘気について考えていると、リオが俺の前に出てきた
「あぁ、いいぞ」
やりたいと言うのを止めるつもりもないので、やらせることにした
リオにはいい経験になると思うし、闘気とやらが見れるかもしれない
戦いは防戦一方だった·····
ステアは近接型でダガーを両手に持って、スピード重視の戦いをする
一方、リオは魔法メインで遠距離型だ
距離を取って、魔法を放とうとしても直ぐ近づかれて魔法を無駄打ちさせられる
リオはまだ回復してないようで、かなり疲労が見える
身体強化のおかげで、何とか攻撃を躱せていると言った感じだ
近距離戦は今後の課題だな·····
「そこまでだ!続きは俺が引き受ける」
そう言って、2人の間に割って入った
いきなり目の前に現れた俺にビックリしたステアが一気に距離を取る
「なんだい!手を出すのかい!」
「別に手を出さないなんて言ってないだろ」
そう言って一気に距離を詰めて、武器をたたき落とす
武器が無くなったステアが殴りかかってきたが、余裕を持って攻撃を全て躱してみせた
「あんた·····一体何者だい·····」
ステアも疲労が出てきたのか、肩で息をしている
「ただの冒険者だ、それより手札はもうないのか?」
ステアのステータスを見た感じ、そんなに強いとは思えない
だが、非力なはずのステアが100人超の盗賊達の頭だと言うのだから、『闘気』に秘密があるはずだ
「バレてるみたいだね·····これは疲れるからあんまりしたくないんだけどね·····」
そう言うと、ステアの体から湯気のようなものが出てきた
「!?」
俺が瞬きをした瞬間、目の前までステアが来ていて
そのまま思いっきり蹴り飛ばされた
「いててて·····」
すごい衝撃だったが、ブラッドチェーンを平らに変形させて盾替わりに使ったので、吹き飛ばされただけで特に外傷はない
「今のを耐えるのかい·····これはあまり長くもたないからね、さっさと決着をつけさせてもらうよ!」
そう言うなり一気に距離を詰めてきた
女盗賊のスピードはさっきまでの倍ぐらいには上がっていて、筋力も上がっている様で、一撃がかなり重たい
身体強化と血液制御のおかげでギリギリ対応出来ている
このままタイムリミットまで待てば確実に勝てるが、せっかく手札を切ってくれたからには俺もそれに答えたい
「こんな感じか?」
ステアからの攻撃を防御しながら、呟く
すると、俺の体からも湯気のようなものが出てきた
少し暑く感じるがウォーミングアップをした後の感じに似ている
「!?·····それは私の技じゃないか!あんたもそれを使えたのかい?」
ステアがかなり動揺しているが、俺は『闘気』を鑑定して使い方を理解しただけだ
ちなみに肉体強化の鑑定結果は
<闘気>
体内に魔力を巡らせて、肉体を強化する
常に魔力を消費する
魔力を使える人であれば、やり方さえ分かれば誰にでも出来そうだが、スキルの存在を知らない人達からすれば、やはり難しいのだろう·····
「真似しただけだ、これで手札は全ての様だな」
そう言うと、ステアが闘気を解いて、土下座の勢いで頭を下げてきた
「兄貴って呼ばせてくれ!」
「なんのつもりだ?」
今のステアは隙だらけだ
自分を討伐しに来た相手に見せる姿じゃない
「あたしは、今の技を取得するのに3年かけたんだ·····それを目の前で一瞬で物にされちまった·····そんな相手に適うわけもねぇ·····」
「だから命乞いってことか?」
「いや·····あたしは、兄貴に惚れちまった!兄貴についてかせてくれ!」
盗賊の頭を仲間にする訳にはいかない、俺達がお尋ね者になってしまう可能性がある
だが、敵対する気のない相手を殺す気もない·····
「盗賊を仲間にする気はない、盗賊を信じれるわけもないからな」
「そうだよな·····」
ステアが悔しそうに黙り込む
「·····だが、更生する気があるならギルドに相談してやる、罪を償えたら今の話を考え直してやる」
「ほんとうか!?」
「ギルドの判断次第だがな、話はギルドに着いてからだ!リオ、魔力が戻ったらゲートを開けてくれ」
「5分ぐらい休ませてくれたらまた開けれると思うわ·····」
「無茶しすぎだな、ちょっと休んでろ」
「ステア、お前達の溜め込んだ宝物庫に案内しろ、俺が全部もらってやる」
どっちが盗賊かわからないことになってきたが
貰えるものは貰う主義だ
「こっちだよ、着いてきな」
俺を兄貴と呼ぶくせに、口調は偉そうだ
ステアについてくと屋敷の裏に小屋があった
中に入るが·····
「中は空っぽか·····地下に部屋があるな」
「え!なんでわかったんだ?せっかく兄貴を驚かせようと思ったのに·····」
『マップがあるからな、態々、説明する気もないが』
そのまま、地下に案内させて、財宝を全てアイテムボックスに収納した
言うまでもないが、ステアは大きな口を空けたまま固まっていた
内容はまた時間がある時にでもゆっくり見ることにして手当り次第に収納していった
「おい、ステア!先に戻るぞ」
ステアが固まって動かないので、そのまま地下に置いてリオの元に戻ることにした
「兄貴ー!待ってくれよー」
途中で、後ろの方からステアが走りながら叫んでいたがスルーだ
リオの元に戻ると、リオがゲートを開いて待っていた
ある程度、魔力も回復してきたらしい
「おかえりなさい、異空間で寝かせてたあの子もついさっき起きたみたい」
「あ、わすれてた·····」
「兄貴!いくうかんってなんだい?あの子って?」
後ろでステアがうるさいので、とりあえず掴んでゲートに投げ入れて、俺達も異空間に移動する
「いてっ!兄貴ー!投げなくたっていいじゃないか!·····なんだい!?ここは!」
まぁビックリするのは当たり前だ
ステアが叫んでいると、女の子が近づいてきた
「っ!お前!逃げたってゆーから探しに出てやったのにこんな所にいたのかよ!」
「ステア様!申し訳ございません·····」
ステアが女の子に気づき、すごい剣幕で言い寄った
女の子はすごい勢いで土下座をして謝っている
服はリオが着替えさせた様で、防具屋で買ったインナーを着ている
「お前達はどういう関係だ?」
女の子が森の中から出てきた時に、盗賊と関係がある可能性があったので、とりあえず異空間に連れてきていたが、関係まではさすがに分からない
「この子は、あたしが助けたんだよ·····魔物に襲われているところをたまたま見つけてね、屋敷の使用人として働かせていたんだけどね·····」
「助けて頂いたことは感謝しています·····ただ、盗賊だったとは思いもしていなかったもので·····」
「だからって逃げるこたぁねぇだろ!せっかく助けてやったのにまた死にに行くようなもんだ!」
「なるほどな、盗賊だらけのアジトに連れてこられて怖くて逃げたってことか、それを知ってステアが探しに出たが、その間に俺達がこの子を助けてステアの盗賊団を殲滅して今に至るってことだな·····で、君はどうしたいんだ?ステアは今からギルドに連れて行って適当な罰を受けることになるが」
話の経緯はわかったが、この子がどうしたいのかは分からないので、選ばせることにした
「ステア様がギルドに連れていかれるってことは·····死刑·····ということでしょうか?」
盗賊は基本死刑だ
だが、有効活用できる人材であれば犯罪奴隷とされることもあり、奴隷期間を全うすれば解放されることもある
罪の重さで期間が長くなるので、ステアの場合、頭ということもありかなり長い期間、犯罪奴隷となるだろう
「俺からギルドに頼むつもりだが、その後はステア次第になってくるな」
「それなら!私もステア様について行きます!盗賊だと知って怖くて逃げましたが·····ステア様には助けて頂いたあとも、屋敷で良くしていただきましたので!」
「それなら、君のことはギルドに預けることにするよ、自己紹介が遅れたが、俺はジン、こっちはリオだ、君の名前を聞いてもいいかい?」
中々自己紹介をしてくれないので、聞くことにした
鑑定でステータスを見て知っているんだが·····
「私はリリィと言います。ここより南東にあるイスタと言う町の長の娘です。訳あって家出している身です·····」
「リリィか、よろしくな!町長の娘なのに、家出か·····話したくなさそうだから、理由は聞かないでおくよ」
「そう言って頂けると助かります·····」
「それじゃ、日も暮れてきた頃合いだから早めにギルドに戻るぞ」
そう言って、リオにゲートを開けさせる
4人でゲートに入り、出た先はカタクの南門から200m程離れた場所だ
ステアとリリィが固まっているが、無理矢理動かして、町に入る
ステアは盗賊なので身分証なんてないということで、金を支払って中に入った
リリィは身分証を持っているが、出すとイスタの町長の娘だとバレるので出したくないと言い、金を支払うことになった
町に入った俺達はギルドに直行した




