第9話 VS 孫ーズ
シロウとセージが前。真ん中のキファが後ろ。初戦と違い逆三角形の立ち位置。それを見てアヤ達は陣形を変えた。シロウの前にアヤ。セージの前にハルト。ナナは真ん中でキファと同じように2人から下がった位置。
前にいるシロウは構えた剣とは別に背中に剣を背負っている。三人ともいい目をしている。勝つという意思を感じる目。
「ナナ、カラトボルグ」
アヤからの声に、思わず驚いたが、何も言わずに収納魔法を使い聖剣を渡した。聖剣は持ち主を選ぶ。アヤにとっては名前ばかりの聖剣、聖剣を使う必要はないはずだ。
カラトボルグをナナから受け取る。この聖剣を触る度に祖父との思い出が脳裏にうがぶ。
「アヤ、勇者とは何だと思う」
幼い頃から祖父によく質問された。何を答えても、祖父は優しく頭を撫でてくれる。合っているとも間違いとも言わない。祖父が亡くなった今、答えをくれる人も頭を撫でてくれる人もいない。
聖剣だけが問う『お前は勇者なのか?』と。
強大な敵に臆することのない、強い心の持ち主を勇者とするならば、今のシロウ達がそうであろう。ふとそう思った。彼らとの戦いはきっと何かを自分に教えてくれるかもしれない。
「開始」その声とともにアヤに向かう。魔法が使えないシロウに様子見という選択肢はない。
距離をとったまま魔法の打ち合いになれば不利にしかならないからだ。相手は勇者の孫。初手から全力を出す。
得意の上段から剣を振り下ろす。受け止められるが、そのまま相手の刃先に向かって剣を流し横に剣を振る。アヤは横に飛びその剣をかわす。距離はとられたくない。すぐアヤを追う。
セージは開始とともに2人から離れる方向で斜め後ろに下がる。ハルト相手に剣では勝負にならないだろう。前に出てきたハルトに向かい火矢を放つ。ハルトは軽くかわすだろうが狙いはその先だ。
ハルトは前に出ながら火矢をかわす。いきなり下がられたのは意外であったが、追いつけばいいだけだ。追いつくためには横や上にはかわしたくない。かわしきったと思った瞬間に足元に魔方陣。やばい止まれない。
ナナに火矢が向かってくる。ハルトとナナが直線上になる時を狙ったのであろう。ハルトがかわした火矢がそのまま、ナナへの攻撃になっている。ナナは氷矢を出し火矢にぶつけた。やっぱり初戦を見ていて良かった。油断のならない相手。ナナは次の魔法を唱える。
キファがハルトの足元に出したのは氷結陣。やった!これ以上はないというタイミングで出せた。
しかしハルトは止まらない。抜刀し地面を斬ったように見えた次の瞬間には、進む角度を変えキファに向かってくる。
個の力ではハルト達が負けることはないだろう。アヤはもとよりナナもかなり強い。こわいのは三人の連携。タクヤとの戦いでも素早い連携で先手をとり続けて勝っている。魔方陣を斬った。決まるはずのものが決まらない、予想を越えれば流れは変わる。進む角度を変えキファを狙う。連携の要はあいつだ。