第7話 孫、孫、孫、、、孫
オオーッと大きな歓声があがる。
マント三人組とは明らかに違う歓声で入場した3人は、真ん中の男が前にでて、左右の二人は後ろにならび先程のシロウ達と同じ形になる。
対するマント三人組は真ん中が後ろ、左右が前と対象的な形。
「前のが剣士ハルト、後ろの茶髪が聖女ナナ、黒髪が勇者アヤ」
横でセージが教えてくれる。もしかしたらルカが勇者達の孫かもと思っていたのだけど、残念ながら違った。
「特別扱いだな」
セージの言葉にシロウが周囲を見ると、闘技場の周りにいた人達が増え主任の姿も見える。
闘技場には結界が張られている。先程よりも人数を増やし、その結界を強化している。彼らの力を警戒しての事なのだろう。
始めの合図とともに左右のマントがハルトに向かって火球を放つが、ハルトは左右から向かってくる火球を前に出てとわすと、剣を抜きそのままゆっくりと前に出る。
「全力をだせよ。つまらない相手なら直ぐに終わらせるぞ」
ゆっくりと動いたのは、師匠にもう少し考えて戦えと言われているからだが、ゆっくり動いてるだけで何か考えている訳ではない。要は相手の出方を見てから手を出せばいいんだろと大雑把な理解をしているだけだ。
左のマントマンが近づいてきたが、ハルトの剣の間合いの前で止まる。あと一歩で剣の間合いに入る微妙な距離。ハルトは止まらない。何もないなら、次の一歩が地に着いた瞬間に剣を振り、終わらせるだけだ。
足が着いた瞬間。マントが翻る。視界にはマントの黒のみ。縦に一閃。切り裂かれたマントの向こうには誰もいない。
パン。乾いた破裂音。
姿勢を低くしかわす。
更に破裂音。
「ここで上に跳ぶと説教うけるっと」
低い姿勢から前に跳びかわす。狙いは少し遠いが真ん中にいるマント。ハルトはそのまま真ん中にいた相手に突っ込んだ。
来る。低い姿勢のハルトと目があったような気がすると、ハルトが飛び出すようにこちらに向かってくる。
「シンいったよ」
カイの声。カイはわかっている。シンが待ち望んだ瞬間だということを。歴史に忘れ去られた転生者である祖父。
力がないからと、いないように扱われた祖父が必死の思いでつくったのが銃だ。
まだ未完成ではあるが短期戦ならば問題はない。この銃で祖父の強さを証明したい。
慌てるなと自分に言い聞かせる。カイはかなり近い距離で撃った。しかしハルトは見たこともない銃をかわしたのだ。
正面の敵。その場で迎え撃つつもりか動かない。マントが邪魔で武器は不明だが、おおかた先程の破裂音の飛道具であろう。関係ない、進むだけだ。自分は剣士だ。考えて動けとは言われるが、結局は剣の間合いに敵を入れなければなにもできやしない。
あと一歩。しかし敵は素早い動きで筒状のものを構えた。音はしない。まだ放たないのであろうか、足が地に着くとともに剣を鞘走らせる。
◇
シンが目を開けると白い天井。
「目が覚めましたか。傷は治しました」
覗き込むように見ているのは茶色の瞳に茶色の髪。
「聖女ナナ」
思わず口に出してしまうと、彼女の笑顔が少し曇る。
「その呼び名は嫌いです。・・まあいいです。みんなを呼びますね」
彼女に呼ばれ、カイが走り寄る。
「シン大丈夫?」
「多分大丈夫。カイ、僕は負けたのかな」
「いやお前の勝ちだ」
カイの横でハルトが答えた。