第6話 初戦②
剣を振っている手を押さえられた瞬間、シロウは切迫した場面には似つかわしくなく懐かしいと思った。ルカにからかい半分でよくこれをやられたのだ。そしてこれをやられた後にはいつもパンチがくる。
ドンッ 今度はシロウがパンチを押さえた。お互いの左手で右手を押さえている。
相手の力がふっと抜け、間合いをとられる。
「防がれるとはね。初見でこれを防ぐやつがいるとは驚きだ。待て待て。魔法はもういい。俺の負けだ」
彼の足元には魔方陣が展開している。タクヤは両手を上げて降参を示す。
「コエーコエー。凄いなあんた達。降参だ。俺はタクヤ、あんた達の名前を教えてくれないか?」
タクヤには余力があるのだろう。先程の戦いが嘘のように涼しい顔をしている。
「キファ」
「セージだ」
シロウの左右に並んだ二人が答えた。
「あんたは?」
「シロウです」
まさか負けるとはね。タクヤは闘技場をおりると、場外で倒れている二人の様子を見て入退場口に向かう。仲間の二人は必要に応じて治療魔法をかけられるだろうから、問題は無いだろう。
問題があるのは、自身の今後のプランが崩れた事だ
初戦で勝ち、決勝であいつらと闘う。
三人組の孫ーズに勝つのは難しいが、その内の一人は倒す。そうすれば、仲間に恵まれなかったが良くやったということになり、校長も授業料免除の副賞をくれるはずだったのだかが。
タクヤが向かう東の入退場口に三人。魔王を倒した6人組のうちの3人の孫達。剣士の孫であるハルト。聖女の孫であるナナ。そして勇者の孫アヤ。
「一応言っとくけど、俺達はお前が急に参加するって聞いたから、無理矢理参加したんだが」
負けたやつにかける言葉としては、優しさに欠け自己中心的な言葉。ハルトはいいやつだが頭が足りない。
確かにまだ余力はある。だけど孫ーズと闘うシロウ達も見てみたいし、何より自分だけ能力を見せるのはごめんである。
「相手の黒髪」
「シロウか?」
「その人と戦ってみたい」
いつも無口なアヤが会話にはいる。
「アヤが何かをしたいって言うの、始めてかも」
「よっしゃーっ、その為にも初戦をあっという間に終わらせてやる」
何やら孫ーズに火がついたようだ。
シロウ達は戦いを終えたときの、爆発するような歓声を誇らしく思い、西の退場口に向かう。
ゲートをくぐると、つぎの戦いに出る3人がいた。暑いのにマントをつけ顔だけしかででいない3人。見るからに怪しい。
「君達凄いね。転生者の孫に勝つなんて。僕達もあやかりたいよ」
「えっ?転生者の孫って強いの?」
怪しい3人から意外にフリンドリーな言葉が出たが、シロウの返答に少し会話が止まる。
「タクヤよ。タ・ク・ヤ。戦う前に盗賊の孫って言ったでしょ」
「君達は僕達より大変だとは思うけど、頑張ってね」
シロウの失言をフォローするように、キファとセージが言う、まぁ、見ててよと手をあげながら怪しい三人組は入場口に向かった。