第5話 初戦①
いきなり開戦からスタートしました。
間を書く技術がないです。
シロウに火球が迫る。始めの合図とともに横一列に並んだ真ん中の相手目掛けて突っ込んだ。
突っ込まれた相手が戸惑いながらも放った火球は、普通のファイアとは思えない大きさ。流石は代表者ということなのだろう。かわさないと決めている。キファが何とかするはずた。
火はシロウの前でキファの風魔法に押し出され軌道を変える。目前の男は目を見開いたまま杖を構える事さえ出来ない。一人倒せる。しかし剣を左に振るしかない。
「やるね。開始早々から飛ばすじゃないか。ヤムは今のうちに間をとりな」
凄まじいスピードで左から打ち込まれた。シロウがそのまま剣を振っていたら、目前の男とシロウどちらが先に倒れていたかわからない。
「バカ、そっちじゃねー」
前にいた男が横に逃げるがもう遅い。ちょうどセージが突っ込み、体当たりで場外に飛ばす。
「くそ。やられたリクは間をとれ」
「一人じゃない」
見れば、もう一人も場外に出ている。先程、火を押し出したキファの風魔法が火烈風となりもう1人を襲ったのだ。
「瞬殺かよ・・だから嫌だったんだよ」
残った1人は何やら言いながら、シロウ達3人と距離をとる。
「セージ、キファ。この人は強い」
先程シロウを止めた動きは普通ではない。
「「ファイアアロー」」
後ろでキファとセージの声が重なる。ファイアアローは術者の力量が本数になって現れる。二人とも唱えたなら、合計の本数は10本を越えるはずだ。
◇
電光石火の攻撃で3対1になった。自国代表の奮闘によって観客席は大いに盛り上がっているが、一角には落ち着いて戦況を見ている者達がいる。
ナナはキファ達の動きに感心していた。
相手の素早さを見て、一撃の重さよりも手数の多いファイアアローで攻撃を当てることを優先する。賢い選択。同じ年でありながらもその判断が出来るのは、普段から素早い相手と戦っているのであろうか、私がアヤと戦うときもそうする。そして出した火矢の数も多い。
「アヤにハルト、やっぱり見に来て良かったですね」
「確かに。タクヤの力を見るのには理想的な展開になったな」
隣に座るハルトが答えた。
そうだけど、それだけではない。確かにハルトの言葉通りで、一番にみるべきはタクヤだ。タクヤは転生者の孫だ。自分達が生まれ持った力があるように、彼にも何らかの力があるはずである。
しかし、相手側の3人もしっかり見ておかなきゃいけない。アヤがどう思ってるかが気になるが、アヤはじっと見ているだけで何も言わない。
◇
タクヤは次々に迫る火矢を寸前でかわす。これくらいなら何本来ても当たりはしない。大事なのはかわしながら次の一手に繋げることだ。
まとめて6本くる。横に拡がり左右に三本ずつ。横にかわすことを妨げたいのであろう。と言うことは・・
黒髪が二列になった火矢の真ん中を走り迫ってくる。
先手を取れずに、思い通りに動かされている。黒髪の剣を受ければ更に何かを仕掛けてくるに違いない。ここは相手の予想を越える動きが必要な所だ。
「盗賊時間」
6本の火矢を盗む。黒髪に向けるのではなく、三本ずつ後ろの二人に火矢を飛ばす。二人は対処の時間が必要なはずだ。その間に黒髪を倒す。
走るシロウの両側にあったはずの火矢が消えたと思ったら、逆方向に飛んで行く。
しかし考えている間はない、相手が凄まじい速さでシロウに向かって来ている。得意の上段に構えていたのでは間に合わない。そのまま剣を横に振る。
ここだ。更に加速する。このスピードはあまり見せたくないが、黒髪に時間をかけることは出来ない。
後ろの二人は直ぐに何かをしてくるはずだ。剣を一合打ち合う時間が惜しい。
更に加速して一瞬で剣の間合いの内側まで入り、剣を振りだしている手を押さえた。後は黒髪の意識を拳で断つだけだ。