第4話 学校イベントがあると恋とか進展したりするよね
「俺と付き合おう」
「ごめんなさい」
「付き合ってから決めるのはどうかな」
「ごめんなさい」
「では先ずは、仲間にいれてもらおう」
粘るタイプか。
「好きな人がいます」
「良かった。じゃあ俺の事も好きになることが出来るよ」
・・・新しいタイプ。
颯爽と去りゆくミゲル?だったかなの背中を見送る。
キファは告白された事が初めてだったので、緊張していたのだが、何ていうのだろうか?決して軽いという事ではないが、ミゲルの雰囲気はとても話しやすいものであった。
告白されたのがミゲルで良かった。
それがキファの率直な感想。
◇
「キファ、僕をみんなに紹介してくれないか?」
3人で昼食を食べていると、シロウの背後から声がかかる。
「・・・ミゲル、さんよ」
「やれやれ。ミゲルでいいよ、今日から仲間になるミゲルだ。宜しく」
それからミゲルさんはよくシロウ達と一緒にいるようになった。ミゲルさんは上級生なのに偉ぶらず、話はいつも面白い。
実技がからっきしらしいが、歴史や戦略戦術などの学科は二学年で一番。
知識は師範達にも負けないのではないかと言われ、学園内ではかなりの有名人。ただ背が少し低かったり、だいぶ太りすぎかも知れない。
◇
「ねえキファはミゲルさんと付き合っているの?」
ベットに入ると同室のエールが聞いてきた。
「付き合ってないよ」
「だよね。ごめん。クラスの男子に確認してってお願いされちゃって、ごめん。もう寝るね、明日からは頑張ってね。応援してる」
エールは良い子だから男子の頼みを断り切れなかったのだろう。
ミゲルが良い人なのは良く解った。自分は弱い癖に剣術や魔法にも詳しく、悩んでいると助言をくれたりもする。
見た目と剣術と魔法以外は完璧。セージはよくわからない言葉でつきあってみればと言うし、意外なのはワッツがとにかく付き合ってから決めれば良いとうるさいこと。優しい性格はどうしたと言いたくなる。
「黒い剣」
キファはそう呟くと、明日の大陸戦で、もしかしたら会うかも知れないと考え目を閉じた。
◇
学園の中に設置された四角の闘技場。周囲には観覧の客席が設けられている。
3対3で戦い、相手を闘技場外に落とすか、気絶させるか、降参させるかで勝敗が決まる。
シロウは日課である朝の鍛練が終わると闘技場を歩きながら考えていた。
もしかしたらルカに今日会えるかもしれない。自分だって代表になったのだ、ルカなら間違いなく代表になるだろう。
「おはよう」
挨拶に目を向けると、陽に映える金髪。
「おはようキファ」
ルカに会えなくても精一杯やらなきゃいけない。
キファやセージは、大陸戦に出ることをとても喜んでいたにも関わらず、シロウの為に辞退しようとしたのだ。
「今日は一生懸命頑張るよ」
シロウがそう言うと、キファは微笑んだ。
◇
緊張している。セージは幼い頃から憧れた舞台に立てることに高揚していたが、いざ立ってみると身体中が変に固い。
自国開催の一学年代表は開会式直後の試合だ。
開会式も出てみたかったが、準備のために控え室で待機して3人で最後の打ち合わせを入念にした。
やる事はやったという思いはあるが、いざ闘技場に出ると、大きな歓声に緊張が一気に噴き出してきた。
右を見ると、キファも同じようにぎこちなさが見える。
前を見ると、シロウが不自然なほどに周囲を見ていた。
「シロウどうしたの?」
「いや、何でもないよ」
シロウを先頭に右後ろにキファ、左後ろにセージの配置。相手に向かって三角形の陣形。先端にいるシロウはキファや自分よりも相手に近く、緊張しそうなものだがキョロキョロと落ち着きがない。
あれがシロウの緊張の仕方なのか?と思うと少し気が紛れた。
同じ気持ちなのかキファの口角も上がっている。
なんにせよやることは決まっているはずだ。そう改めて思い直せた。