第16話 キファと黒い剣
早く次の展開に持っていきたいです
大陸戦一週間後。
「キファ、悩み事かい」
前に座るミゲルが問いかけてくる、ミゲルに相談して良いものかと、少しだけ迷う。
「黒い剣か、知らないな。刀身が黒いという事は、黒曜石で出来ているということかな。只、黒曜石は重過ぎるから剣には向かないはずだ」
そう言い少し考える。
「思い当たるものがあったけど、うろ覚えだからさ。確認しておくよ」
◇
「まーた、ため息かシロウ。とても大陸戦の優勝者には見えないな」
シロウやキファ、セージは優勝者として盛大に称賛を受けたが、いまいち気分が晴れない。個人的に負けたと思っているキファやセージ、その中でもシロウはルカの剣を壊してしまった事で、落ち込む事が多くなってさえいる。
「そう言えば、学年主任が呼んでたぜ、3人で来いってさ」
「ダンジョンコンテストの事かな?」
「多分な」
ダンジョンに入っていいのは、学園のルールで二学年からと決まっている、恐る恐る学年主任に相談すると、危険だと散々注意された後に、『シロウ達には借りがあるからな、待っておけ』と言われたのだ。
◇
「ダンジョンに入るのには、二つ条件がある。コンテストのパーティは4人と決められている。これはコンテストと張り切り過ぎて、命を落とす事がない様、少数パーティを禁じているのだ。そこでお前達の4人目をこちらで決めさせてもらう。それでも良いか?」
シロウ達は、学年主任が厳しい事は知っているが、それが自分達の事を考えている故の厳しさだと知っている。だから相談する事もなく、3人ともハイと答えた。
「そうか、もう一つの条件は、ダンジョンに入る時は仮面をつけてもらう。お前達が大陸戦の優勝者だからといって、特例をつくるわけにはいかないからな」
「ありがとうございます、主任」
「会うことがあれば、学園長に礼を言え、ルールは不変と言う他の先生達を抑えたのは学園長だ」
「わかりました。でも主任のおかげです」
「それとな、私を主任と呼ぶのはもう最後だ。私は異動だ」
「えっ、ワッツの親父が何かする事はないと思ったのですが」
「セージ、そうではない。確かにワッツの父親のおかげだが、私は回復学の研究所に行く、ありがとう君たちのおかげだ、本当にありがとう」
そう言いながら、あの気丈な主任が眼に涙を浮かべている。
「主任。泣くのは妹さんを治した時にとっときなよ」
言いながらセージはハンカチを差し出した。
◇
「キファ、見つけたよ。参考になるかはわからないけどね」
そう言うとミゲルは、かなり大きな本をテーブルに広げた。
「これは、前の勇者達の戦いの記録を詳細に書いたものなんだけどね、ここだここを読んでほしい」
『魔王の右腕であるヒルダは、漆黒の剣を持って勇者の前に立ちはだかった』
「まあ、これだけなんだけどね。刀身まで黒いかどうかはわからない。他にはヒルダの剣に関する記述がないんだ」
「ありがとう、ミゲル。私も勇者の戦いに関するものは、ほとんど読んだと思うけど、ヒルダの事は知らなかった。この本も見た事もないわ」
「これは特殊でね。四王国に一冊ずつしかないから、参考になれば嬉しいよ」
「・・・」
「身分を秘密にしているから、この本を出したくはなかったんだけどね、変に隠すのもおかしいし、キファが悩んでいるから、持ってきてしまったよ。私はミゲル=リシャール。この国の第二王子さ」
身分は関係なく、私を好きになってくれると嬉しい。そう言うとミゲルはさっと去っていった。何で身分を隠しているのかは解らないままだけど、自分から聞くのは躊躇われた。
キファは寮の部屋に戻ると、自分の中にある黒い剣とそれを持つ人を思い浮かべる。
自分を魔獣から助けてくれたのだ、魔族ではないと思う。
そしてもう一つ、アヤの魔法を斬ったシロウの剣、ちょうど後ろにいたからキファには見えたのだが、刀身が黒い剣だった。
シロウに直ぐに聞けば良いのだが、剣の話をするとシロウが異様に落ち込むから聞きづらいと、自分に言い訳をして聞いていない。
キファは黒い剣の持ち主が好きなのかもしれない。憧れに近いとは思う。もしそれがシロウならとは考えるが、シロウはアヤとの戦いの後、寝ながらルカと繰り返し言っていた。多分な好きな人なのだろう。
それはそれで良いではないかと言う思いとがあれば、嫌という思いもある。シロウが好きなのかと考えるとよくわからない。
「あれっ、キファ今日は早いのね。この時間はまだ修練場にいることが多いのに」
同室のエールが部屋に入って来た
「エールお帰り。丁度今から行こうと思ってたのよ」
悩んでもしょうがない。取り敢えず魔法をぶっ放そう。そう決め部屋を出た。
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