第15話 次の舞台は
色々詰め込みすぎて、破綻しない様に考えます。
ひとしきり笑いが収まるのを見計らって徳馬が切り出す。
「あの、私達も自己紹介をさせて下さい、私は徳馬といいます」
「俺は彰吾」
「わ、私は桜です」
「そうそう、こいつらはさ、聞いて驚ろけよ!異世界から来たんだよ、俺のじいちゃんと一緒だ」
ハルトがみんなの顔を見渡しながら言うと、シロウを除くみんなが驚き固まってしまう。
アヤやナナにとっては自身の祖父がそうではあるけど、彼らが生し得たことは伝説となっているし、幼い頃に見た祖父や祖母は、彼らにとって子供ながらにも憧れる存在であった。セージやキファにとっては尚更だ。
「いや、私達は少し違うのです。エルフの国エストニアに呼ばれたのですが、アヤさん達のお爺様などは生まれ変わりで呼ばれたのに対して、私達はこの歳のままで呼ばれました、転移とでも言うのでしょうか?だから皆さんが思われている様な力はないと思ってください」
昨日、彰吾はハルトにあっさりと転移者である事を言ってしまっている。本当は隠しておきたいが、この世界の事でわからない事もまだまだあるし、誤魔化すよりも言ってしまった方がいいだろう、だが力は隠すべきだ。
「それで徳馬さん達は、どうしてここにおられるのですか?」
いち早く立ち直ったセージが聞く。
転生者を名乗る詐欺師は多い。懸命に剣や魔術を学ぶセージの為に、幼い頃から数名の家庭教師がいたが、その内の1人は転生者という触れ込みで、セージの家に取り入ってきたのだ。
「転移した時に言われました、この彰吾が勇者だから呼んだのだとね。だから本当にそうなのかを確認しようと思いました。だけど確認しようがない、そこで聖剣を触ればわかるのではと考えました、この学園戦にアヤさんがくると聞き、ここまで来たのです」
「だから、ハルトは聖剣を触らせて欲しいと頼んだ」
「そうなんだよ、アヤ。前はいろんなやつに触らしてたじゃないか、だから良いのかと思ってさ」
どうしても聖剣が反応してくれない時に、勇者は自分ではないと思い、いろんな人に触らせてた時期がある。でも今は誰にも触らせたくない。アヤは聖剣をギュと握る。
ナナはアヤの様子を見ると、徳馬達に向かって言った。
「その様子では、聖剣を触らせるのは無理そうね、まあ元から聖剣は誰から構わず触らせるものでないし、そうね。一緒に勇者の祠に行きましょうか?」
「勇者の祠とは、何でしょうか」
「先代の勇者達は、平和な時代に強力な力は要らないと言い、身に纏った装備を使えない様にしたの。聖剣は王城の台座に刺して誰も抜けない様にしてたし、他の装備も色々細工をした。勇者の祠には、アヤのお爺様の装備があるはずよ。勇者でなければ辿り着けないと言われたと聞いているわ」
「私達も入れるのでしょうか」
「入れますよ。それがある事こそあまり知られて無いですが、シロウ達の国、つまりこの国にある世界最大のダンジョン『ラーファン』がそれですから」
「えっダンジョン、魔物とか沢山いる?」
桜は力こそあるが、出来る限り戦いは避けたいと思っている。
「詳しいことはあまり知りません、私達も行こうとは思っていましたが、アヤが聖剣に認められてからと思ってましたから、しろうたちは何か知りませんか?」
「確か、今は入れないはずだ。ダンジョンを立ち入り禁止にする時期があって、その後の解放とともに、冒険者達のダンジョン探検コンテストがある。それがいつも大陸戦の一ヶ月後だからね」
「セージ詳しいね、僕は何にも知らないや」
「一ヶ月後か、一回国に帰って来るには、ちょうど良いかもな。徳馬達はどうする?」
ハルトは既に参加するつもりだ。
「参加するよ。彰吾が勇者か確認したいからね」
徳馬がそう言うと、ハルトはシロウ達に向かい言った。
「決まったな、じゃあシロウ達も参加だな、勝ち逃げは許さないからな」
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