第10話 VS孫ーズ②
ハルトがキファに向かっている。
セージはハルトを追うべきか少し迷った、キファと一瞬目が合う。キファの目は輝き、『行け!』と言っているようだ。
下がりかけた足を止め、ナナに向かう。ナナの周りには6本の火矢。聖女と言えば回復魔法ではないのか? 火矢の本数が自分より多い。
しかし先手は俺だ。ハルトに向けるはずだった雷球をナナに放つ。ナナは火矢を雷球に向けた。雷球は2・3本の火矢を相殺するはずだ。前に進みながらかわす事は難しいが多くても4本。かわしてみせる!
雷球が弾ける。ナナの周りには3本の矢。一本目の矢を避ける。イメージは昨日見たタクヤ。大きくはかわさない。大きくかわせばその分前に出るスピードが落ちる。2本同時に来る。前に飛び込むようにして避ける。何とかかわしたが肩口と腰の辺りが熱い。痛がる暇はない。もう少しで剣の間合いに入る。俺の勝ちだ。
セージが腰の剣を探るが感触がない。
先程の火矢が腰に当たったとき、ホルダーごと飛ばされたのだろう。丸腰でナナに向かって跳ぶ。
「惜しかったですね」
そう聞こえた気がした。
ハルトが向かってくる。先程ハルトは魔方陣を斬った。そんなの見たことないが、そうとしか思えない。ならば唱える魔法は決まっている。この魔法を斬らずにかわされたら負ける。
キファは黒球をハルトに放つ。剣の間合いに入るギリギリ。ハルトは抜刀し黒球を斬る。魔方陣や魔法は本来斬れるものではない。剣士の孫が持つ能力なのだろう。しかし斬ってはいけないものもある。
「くそっ、グラビティか」
重力の魔法。剣はとてつもなく重くなっているはずだ。それでも直ぐに剣を放せばキファの負けだろう。体術で勝てるとも思えない。
賭けであったが、どうやら勝ったようだ。
雷矢。最速の矢の魔法。この距離ではかわせない。ハルトに剣があれば矢を斬られる可能性があった、今なら当たる。
気がつけば闘技場の外で横たわっていた。
「魔斬に二刀。アヤやナナ以外に二つ使ったのは初めてだ」
ハルトが闘技場から下りて右手を出してくる。負けた。何があったのかはわからない。自分は場外に出ている。
シロウ、セージごめん。真っ先にそう思った。
ハルトに起こされ闘技場を見る。中央でアヤとシロウは対峙している。右には場外に横たわるセージとその脇に立つナナ。
「後はあいつらだな」
ハルトは勝った上で闘技場から下りた。二人の戦いに手を出すつもりがない。ナナもきっとそうなのだろう。
「どうして下りたの?」
「なんとなく下りたくなった」
「アヤさんの援護はいいの?」
「アヤの顔みろよ。あれを邪魔したらあいつ怒るぜ。絶対」