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4 みしぇるおうじはしつれい

デイヴの腕に控えめにくっついて恐る恐る応接室の前へ。普段そこまで誰かに会う用事もなかったため自宅ながらあまり入ったことがない。…緊張する。このドアの先に破滅フラグであり愛しのアリスちゃんの将来の旦那(予定)がいるのね…。


「お嬢様。」

「…なんでしょう?」

「緊張している所申し訳ないですが、ここからはお嬢様1人でと旦那様から仰せつかっておりますので…」


デイヴは若干申し訳なさそうに眉尻を下げている。ああ、そうだ、そうだよね。一使用人が王子と謁見出来るわけがないか。…うぅ、仕方ない。


「だいじょうぶです。ありがとうございました、でいぶ。」


ぱっと手を離し微笑むと、安心したようにデイヴも笑い返してくれた。うーん、デイヴってば落ち着いているように見えて笑うと可愛いわ。去っていくデイヴを見送ったあと、私は小さく深呼吸。よし。


「しつれいいたします」


ドアを開けると、小肥りのお父様と、向かい側には……絹のような銀髪と水色の透き通った瞳を持つ美少年が座っていた。…出たな、ミシェル王子。くっ、幼少時代からやっぱり可愛い。でも目つき悪いぞ。機嫌悪そう。笑えばもっと可愛いんだろ、勿体無い。


「…おはつにおめにかかります。えみりあ=しるうぇすたーともうしますわ。」


とりあえず挨拶か。義務感からドレスの裾をつかみ優雅に挨拶をしてみせる。真面目に今まで練習してこなかった私だが、前世を思い出してから紳士な淑女を目指すため密かに練習してきたのだ。ふふん、みたか。美しい礼を。


「……ミシェル=セレドニア。」


ふてぶてしくそういうと不躾にもじっと私を見るミシェル王子。本当に王子か?失礼というか礼儀作法大丈夫?そんなことを思いながらもにこりと愛想笑いを浮かべながらお父様に勧められるままお父様の隣に座る。

しばらくお父様とミシェル王子を連れてきたのであろう大臣(?)っぽい人との会話が続く。ミシェル王子はその間も私を観察するかのようにじっと見ていた。だから、レディーに向かって不躾ですわ、そんなのでアリスちゃんの旦那務まるのかしら?いや、まだ5歳なんだけどさ。

やっと話が済んだのか、お父様にミシェル王子と庭園でも散歩するよう促された。ちっ、余計な提案を…。そんな言葉を飲み込んで王子を連れて二人で庭園へ移動した。二人とも箱入りなのでしっかりと頭を保護する帽子も被せられて。…いらなくない?たかだか庭なのに。…はぁ、気が重い。二人でしばらく無言で歩いていると、王子が声を上げた。


「エミリア、だっけ?」

「…ええ。」

「お前、本当に同い年?」


ああ、なんということ。精神年齢はたしかにとっくに成人済みだ。やっぱり隠しきれない大人オーラが出てしまっているのね。少し反省しながら「そうですよ」と答えると、王子はまた無遠慮に私を覗き込んでくる。ちょっ、なに。


「もっと子供にしか見えないんだが」

「はぁ!?」


子供だと!見た目は5歳、精神は大人な私になんたることを!だいたい子供なのは王子の方だろ!子供っていう方が子供なんだわ!ばーかばーか!

…というのはあまりに大人げないので、怒らないように冷静に、冷静に。


「ふふっ、そうでs」

「なんだろう…例えるなら、3歳児?くらいk」

「わたしはおとなです!!!」


耐えきれなかった。なんだ3歳って。たしかに私の声は少しだけ、ほんの少しだけ舌足らずで幼いことは認めるけども!!立ち居振る舞いなら王子なんかよりもよっぽど大人だ!

くってかかるような私の声に王子はなんか変な顔をして固まっていた。まあ変な顔って言っても元が綺麗だから綺麗なんだけど。美形って得ですこと!


「…お前、変なやつだな」

「みしぇるおうじにはとてもとてもおよびませんわ」


うふふふと笑いながら嫌味たっぷりに答えると、王子はさらに目をまん丸にしていた。さっきからなんだなんだ。異生物を見ているような目ですね。


「…そういえば、俺、」


そこで急にぶわっと風が吹いた。む。強い。その風に吹かれてあれよあれよと帽子が飛んだ。2つの帽子はふわりと連れられていく。そのまま行き場のないように揺れたあと、一本の木の上に落ちてしまった。


「あ…俺がとr」

「ちょっとまってくださいね。…よっと。」


木によじ登る。ドレスだと登りにくいなあ。前世の私は思わず人助けをしないといけない気がしてくるタチだったため風船などが引っかかるたびによじ登って取りに行ってたのだ。懐かしい。流石にドレスを着て登った経験はないけれど、なんとか登れた。ふぅ。帽子を2つとると、飛び降りる。


「な、おま___」


何故か慌ててミシェル王子が私の方に駆け寄ってきた。うん?どうしたんだ?まさか俺様の帽子に触るなということか?しゃーないでしょ、そのくらい許してよ。王子って気が狭いわね。そう思いながら下にすちゃっと着地すると、近くに来たミシェル王子はまた目を丸くしていた。色々気に食わないことはあるけれど、まあ目を丸くした姿も可愛いので許してあげよう。私はお姉さんだしね。


「はい、これ。とってもおにあいですね」


触ってごめんよとお詫びを込めて帽子を頭に被せて返してあげたあと、にっこりと微笑んだ。王子はまた驚いたように私を見たあと少し頬を赤らめて「ありがとう」。…可愛いところもあるじゃないの。


「…変なやつ。」


なんか失礼なことを言われた気がするが、そういって屈託なく笑ったミシェル王子はそれはそれは凶悪に可愛かったのでよしとした。…私は可愛いものに弱いんだ。

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