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44 仲間を発見しました

「…前世の記憶…持ってるの…?」

「うん。あはっ、警戒しちゃった?だいじょぶだよ〜面白いことが好きなだけだし面白ければエミリアちゃんの邪魔する気は」

「わーい!!仲間に会えるなんて嬉しいっ!同じ日本人がいるなんて落ちつくぅ〜」


嬉しさ余ってメレディスの手を握りぶんぶんと振るとさっきまで余裕そうに口を歪めていたメレディスが困惑したような表情を浮かべた。

前世持ち仲間がいるなんて心強いにも程がある。それに漫画の世界だなんて他の人に言えるわけもないからね、色々相談ができそうな人がいたらそれだけでも嬉しい。


「キミさあ…秘密探られたりして警戒しないの?」

「警戒って?」

「いや、敵かもしれないじゃん」

「んー。だってカバン私がいない間に荒らしてもいないし、わざわざ自分の秘密も打ち明けてくれるんだよ?だから敵じゃないかなーって」


私が普通に思ったことを伝えると、さらに驚いたように何度か瞬いている。そんなおかしいかしら?でもまず雰囲気から悪そうなオーラがしないのよねえ。だから、


「ねえ、是非友達になってくれない?」

「本当に令嬢としては危なっかしいなあ。セシルに聞いた通りだ」


あわよくば相談相手に!ときらきらした瞳で見つめると、目を細めて柔らかく笑った。さっきまでに作ったような笑顔よりも自然で可愛い。そういえばお兄様と関わりがあるんだよなあ。生徒会役員だし。ますます頼りになりそうだなあ。うふふ。

そんなことをかんがえていると、手を差し伸べられた。


「いいよ。ついでにサポートもしてあげる。よろしくね?エミリアちゃん」

「うんっ、よろしく!メルくん!」


笑顔で握手を返す。サポートもしてくれるなんてメルくんは優しいなあ。既に好感度はうなぎのぼりだよ。うふふ。


「メルって呼んでくれるんだ。本当に可愛いね、エミリアちゃん。セシルやロゼの溺愛もこれなら納得だ」

「?メルくんが言ったんでしょ?」

「いやまあ、そうなんだけどねぇ。あはは〜。」


とりあえず着替えようかとカバンを漁り、スカートをズボンの上から履き、履き替える。あとはネクタイとリボンを付け替えて…とやっていたところ、何故か驚いたようにメルくんが凝視していた。なにかしたかなと首をかしげる。


「メルくんどうしたの?」

「なんで男の目の前で普通に着替えてんの?」

「え?だって別に完全に脱ぐわけじゃないし…?」


言っている意味がわからない。え、別に下着が見える訳でもないしこのくらい許容範囲だよね?そう思ったけどメルくんは苦笑を漏らしていた。あ、なんかどうしようもないやつだなあ的視線を感じる…。


「うん、わかった。本当に野放しにしておくと危ないね、キミ。簡単に奪えてしまいそうだ」

「?なんのこと?メルくん」


首をかしげて聞き返すも曖昧な笑顔で誤魔化されてしまった。メルくんが何を考えたのかは知らないけど、会った時よりも空気が柔らかくなった気がする。

そこで、ぶるぶる…とケーターフォンが鳴った。開くとお兄様から「今何処にいるの!?」と妙に危機迫ったメール。疑問に思ったけどかなり前から何度もメールを受信していたことに気づいた。恐らく返事がなくて心配させてしまったのだろう。

「空き教室で少しお昼寝してた、大丈夫だよ、メルくんもいるし」と返事を返しておく。

それを覗き込んでいたメルくんが何故か困ったように笑い始めた。


「あはっ、ボクのこともいっちゃったかぁ〜。こりゃーセシルの心配も尽きないねぇ」

「どういうこと?」

「ん〜?ボクね、セシルに毛嫌いされてるんだよ」

「そうなの?こんなに優しい人なのにねー。今度誤解解いてあげるから安心して!」


そういって拳を握ってみせると耐えきれないとばかりに爆笑されてしまった。解せない。

程なくして「エミリアッ!!」ともはや絶叫レベルの呼び声と共にお兄様が空き教室にやってきた。何故かロゼも息を切らせている。


「あ、お兄様、ロゼ。」

「やほー、セシルっち、ロゼくん♪」


ひらひらと手を振るメルくんにつかつかと歩み寄るお兄様。なんか怖いので距離を置いた。ひょいっ。


「メレディス=スタンスフィールド!貴様、義妹に近づくなと言っただろう…!二度とエミリアの視界に入るな!」

「あはは〜。ごめんて。でもお兄様と違ってエミリアちゃんはいい子だね?お友達になってくれたんだよ〜」

「友達!?」


近づいてきたロゼが「無事で、よかった…」と安堵の息を吐いているのを撫でていると、何故かメルくんに詰め寄っていたお兄様がぐるりと振り向いて私を見ている。マイナス150℃くらいの声色で「メレディスと友人になったって言うのは本当か?」と聞かれたので肯定した。


「エミリア、あとでお説教だからね」


と絶望の表情で宣言するお兄様の言葉に私も絶望した。うぇぇ、なんで昨日もデイヴにお説教されて今日もお兄様にお説教なの…。お説教フルコース!?怖い、鬼の所業…。大体なんだかんだで優しいデイヴと違ってお兄様が怒ると本当怖いんだよ〜。長いし。開放される頃には足の感覚消えるもん。


「…貴様、どうやって義妹を誑かした?」

「誑かしたって失礼だなあ。普通に妹ちゃんが懐いてくれただけだよ?それにしてもほんと可愛いねぇ。」

「義妹が可愛いのは当然だろう。貴様は二度と近づくな!」

「本気で、奪っちゃおうかな?」

「っ…メレディス…お前」


私がこれから来るであろうお兄さまのお説教への絶望から我に返ったところで、何故かお兄様とメルくんが余計に険悪ムードになっていることに気づく。といっても私を守るようにロゼが立っているので殆ど何も見えないが。

ひょいっとロゼを避けて2人に声をかける。


「あの〜お兄様、メルくん?そろそろ帰らない…?」

「ああ、そうだね!帰ろうか、2人の愛の巣へ!」

「貴様が帰るのは地獄の底だメレディス=スタンスフィールド…!!」

「……セシル、先に連れ出しておくぞ。エミリア、行こう」


何故かどこか険しい顔をしたロゼに連れられて私は寮へいく送迎車に乗った。ロゼは隣に乗ったあともいつも以上に静かだ。心做しか雰囲気もこわばっている。


「…エミリアは」

「ほへ?」

「エミリアは、実力があっても警戒心がなさすぎる」

「ロゼ?」

「もっと警戒するべきだ。男は、奪いたくなる生き物だから」


額に皺を寄せ苦しげに目を細めたロゼをじっと見つめていると、頬に手を触れられた。優しい触り方だったけど他の男子とは違う鍛え上げられた硬い手にどぎまぎする。


「え、ぇと…どうした」


そこで着信音が鳴ったと思ったら、ロゼのケーターフォンのようだった。「タイミングよく…どこかで見ているのか?セシルは…」と確認したあと苦笑を漏らすロゼになんとなく安堵する。

車が到着して女子寮に入ろうとしたところで、「女子寮のエントランスで待機しているように」とのお兄様のお言葉。明らかなお説教フラグに思わず肩を落とした。



「それで、エミリア」

「はい、お兄様」

「どうしてエミリアは、メレディスと仲良くなったの?普通寝てる時に現れる不審者なんて撃退して当然だと思うんだけど」

「ええっとそれは」


実際にはお昼寝なんてしてないからです、とは言えないからなあ。私がどういえばいいか考えていると、呆れたようにお兄様が溜息をつく。…すみません。

それから「警戒しろ」だの「あまり男と2人になるな」だのお説教を聞いているものの、なかなか終わりそうにない。しまった足が感覚消えてきたぞ?って頃になってようやくデイヴが仲裁に入ってくれた。


「あの、セシル様」

「なに?デイヴ」

「その時エミリア様は寝ていなかったんだと思います」

「!?」


それからあっさり私が「シオン」として男装していたことをばらされた。余計にお兄様の表情が厳しくなった。どうしてくれるの、というかなんで知ってるの。私が今日何していたかなんてわかるはずないのに…と言おうと思ったが機嫌の悪いお兄様にこれ以上余計なことを言うと火に油になりそうだったので大人しく継続されるお説教を聞き続けた。

うう、足が痛い。女子寮に学生の男が滞在できる時間ぎりぎりとなり開放されたあとベッドに倒れ込むと、デイヴが美味しい紅茶とお菓子を用意してくれた。心遣いが嬉しかったので裏切ったことは許すことにする。結果的にはお兄様も協力してくれることになったし。

1日目の学園生活、とんでもなく濃かったなあ。

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