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3 メイドってどうしてこんなにかわいいのかしら

あれから数日、様子を見に来たお父様やお母様に挨拶をしたり、ちょくちょく様子を見に来てくれるお兄様と世間話をしたりデイヴに世話を焼いて貰ったりしているうちに飛ぶようにすぎた。

屋敷中の使用人がすっかり変わり果てた私を見て驚いて目を丸くする恒例イベントを全てこなし、具合も完全に良くなった頃、その話を思い出す機会は訪れた。


「みしぇるさまがいらっしゃるのですか!?」

「ええ、婚約者になったとはいえまだ顔も合わせてないでしょう?だからお見えになるらしいわ。くれぐれも粗相のないよう、落ち着いて着飾って_____エミリア?」


朝、もぐもぐと朝食を頬張っている私の正面からのお母様の言葉に思わず吹き出しそうになる。危ない。お母様のお説教コースだった。破滅フラグでありアリスちゃんの恋敵(?)である王子とこんなに早くに顔を合わせるなんて最悪すぎる。というか5歳で婚約って早すぎない?貴族ってそんなものなの?


「お、おかあさま。わたし、まだぐあいがよろしくないのです…おろおろ」

「あら…」

「エミリア、ご飯4杯目いる?」

「いるぅ!!」


いやー、ご飯美味しい。結構この家の料理味付けが濃いからご飯が何杯まであっても足りないわ。もぐもぐ。


「…食欲旺盛なようだけど、具合、本当に悪いのかしら?」

「……げんきいっぱいです」


お母様の笑顔の圧力に耐えきれず答える。隣を見るとお兄様がご飯を差し出したまま下を向いている。プルプル震えているから多分笑っている。おのれお兄様、このタイミングでおかわりを持ちかけるとは、確信犯だな。じっと恨みを込めてお兄様を睨みつけるとその視線に気づいたのかお兄様はさらに強く震えた。いや逆に大丈夫?過呼吸になってない?


「じゃあ大丈夫ね。ミシェル王子は今日の正午あたりにいらっしゃるはずだから___」


満足そうに話すお母様の話を聞き流しながら、密かにため息をついた。…ああ、憂鬱だ。やっとお母様に開放された私は私付きメイドのコゼットに全力で髪をとかされるところから始まった。既にサラッサラの髪をこれ以上どうするつもりですか、コゼット。まあ手付きが優しいので悪い気分ではないし、コゼットは可愛いので(大事)世話を焼いてもらえるのは嬉しい。


「ふふっ」

「どうしましたか?お嬢様。」

「いえ、このじかんがつづけばいいのになあ、とおもったのです」


あー、こんな天使のようなコゼットに姿を整えてもらったあと、破滅の象徴であるミシェル王子とお会いするなんて信じたくはないわ。時よ止まれ。


「そんなにミシェル王子にお会いしたくないのですか?」


鏡越しに首をかしげているコゼット。16歳の可愛いメイドさんと話している時間の方が楽しいに決まってる。


「ええ、だってこんなにかわいらしいこぜっととはなしているほうがよっぽどたのしいですもの。こぜっとといっしょにいたいわ。」


コゼットがまあ、と微笑んだ。赤毛で少しそばかすのついた彼女はお兄様やアリスちゃんのような超絶美形というわけではないが笑った時にできるえくぼはとっても可愛らしい。


「私もお嬢様のお世話をする時間がとても楽しいですわ」


最近はとても、という言葉を無意識に漏らしていたようで慌てたように失礼しました!と頭を下げるコゼット。気にしない気にしない。元のエミリアは我ながら酷かったのだから。使用人を見下して好きなように使い、気に食わなければクビだと脅す、好き放題の生活だった。


「ふふ、きにしないでください。こぜっとさまはえがおがにあうのです。こんなことでえがおをくもらせちゃもったいないですわ。」

「お嬢様…」


振り返って髪を整えていたコゼットを撫でるとコゼットははにかんだように微笑んでくれた。可愛いなあ。髪のセットを終え、綺麗なドレスを着せられると本当に愛らしい令嬢の完成だ。やっぱり悪役令嬢とはいえ素材がいいから似合うわね…。何よりコゼットが整えてくれた編み込みを交えたハーフアップは本当に可愛くて終わったあと崩すのが少しもったいない。


「ありがとう、こぜっと。」

「とてもおにあいですよ、お嬢様。」


えくぼを浮かべた彼女に嬉しさ余ってギューッと抱き着くと少し驚いたあと髪が崩れないよう控えめに撫でてくれた。えへへ。

こうなったら仕方ない。ミシェル王子と関わるのは死ぬほど嫌だけど、コゼットがミシェル王子と会うためにこんなに綺麗にしてくれたんだ。…頑張ろう。

そう決心するとまるでタイミングを見計らったようにデイヴが迎えに来た。ミシェル王子がいらっしゃったらしい。…私はただの悪役令嬢じゃない、紳士な悪役令嬢…!そう心に言い聞かせ、私はコゼットに控えめに手を振ったあとデイヴについていった。

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