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37 ミシェルが挙動不審な誕生日です

 セシデイの絆を強化させると決めて1日。私の誕生日が訪れて。


「エミリア様っ、がんばって力を入れてくださいねーっ」

「〜〜〜〜っ!!」

「いきますよーっ」

「え、ちょ、まってまっ、ぎぶ!ぎぶ!!」


 コゼットの手でこれ以上にないほどコルセットを締めあげられています。理由はもちろんドレス。お父様の策略により(餌付けともいう)着ることになってしまったのだ。…心底嫌だ。逃げたい。本気で。

やっとコルセットを巻き付けられ苦しくなった私は恨みがましくコゼットを睨むと、何を思ったかコゼットは頬を染めた。


「ああ、苦手なドレスに身を包むことでわたくしにいつもなら絶対しない表情をみせてくださるエミリア様も素敵ですわ…」


 溜息混じりの声。こちらが溜息をつきたい気分だよ…。ピンク色の多量にフリルをあしらったドレスは確かにかわいいけど、最高に動きづらい。それにしても、綺麗な金髪碧眼も相まって西洋人形みたいね。着たくはないけど着せたい気持ちはわかる気がした。

 そんなこんなでドレスを着終えると、執事の一人が来客を告げた。たぶん王子たちかキングスレイ兄妹だ。


「…御邪魔します」

「わ…とっても似合ってる。エミリ。」


 歩きづらいドレスを引きずりながら迎えにいくと美しい美形兄妹ことキングスレイ兄妹だった。クレアちゃんはふんわりと優しい笑顔で私にお世辞をおくり、何故かロゼは無表情のまま固まっている。


「あの、ロゼ…?」

「エミリが可愛すぎてとまってる。ね、お兄様」

「……ああ。…似合っている、エミリア」


 クレアちゃんがぱしぱし軽くたたくとしばしフリーズしていたロゼが最高に麗しい笑顔をみせた。心なしかきらきらと回りに光が飛んでいる。うっ。お世辞とはいえつい真っ赤になってしまう。…うーん、美しさって罪ね。


「…僕の義妹になんて笑顔を見せているんだ、ロゼ?」

「…お兄様」


 真っ赤になってどぎまぎしていた私の視界が急に真っ暗になったと思ったら、後ろからお兄様の声が聞こえた。氷点下50度くらいに感じる。


「いや、笑顔は操作して出るものでもないのだが…」

「…だから義妹の話をしたくなかったんだ、あわよくば会わせたくもない…」


 お兄様は私の目をふさいだままなにやらぶつぶついっているのでとりあえずもぞもぞと抜け出した。そして邪悪なオーラを放つお兄様から離れるためすすっとクレアちゃんの手をとりお部屋へエスコート。頬を赤らめたクレアちゃんはもっとかわいくて癒される…。


「クレアかわいい…」


 思わずぎゅーっと抱きしめるとクレアちゃんはエミリのが可愛いとうれしそうに微笑んでいる。天使だなあと思っていると、いきなり引き剥がされた。む、誰だ。そうおもって引き剥がされたほうをみるとこれまた天使のような微笑を浮かべたアレンだった。


「あ、あれん…?」

「エミリア、そのドレス、とても似合ってますよ。薔薇の妖精かと思ってしまいました」


 きらきらきら~。成長しても愛らしさを残しそれでいて輝きの増す微笑みはだんだんと漫画に近くなっているんだろうなあ、と思えるような可愛らしさ。流石読者人気NO.1。私が内心でそう思っていると何を思ったのかそのきらきらな笑顔を耳元に近づけてくる。ふっ、と息が触れる距離。


「…そんなに見つめられますと、連れ去りたくなってしまいますよ?」


 ささやく声に思わず顔に血が上る。てんぱって力づくで引き離したのも意に介さずにこにこ微笑むアレンから顔をそむけた。…漫画でこんなに女の子たらしキャラだったかなあ…。元からあざと可愛いアレンだったけどここまでだった気はしない。微妙な顔をしているといつのまにか隣にいたミシェルが凄く不機嫌そうに


「……馬子にも衣装だな」


 失礼だなっ!?喧嘩を売っているようにしか思えない。私が苛立ちを込めてにらみつけてやるとふんっ、とでもいうように肩をすくめるミシェル。…むかつく…。

 そうはおもっても一応は20数歳+13歳の大人な私なのでさらりと流して部屋に案内した。ミシェルと言い合いをするよりも大事な使命があるのだ。…そう、セシデイの応援だ。


「エミリア、どうしましたか?」

「実は…お兄様が」


 大勢に話すのは気が引けるものの、頭のいいアレン王子を味方につけるため、声をかけてきたアレン王子に私の考えを披露する。と、アレン王子は不思議そうに目を丸くして、そのあと何故かうつむいて肩を震わせた。…あれ、やっぱ男の子にBLの話題を振るのはよくなかったかしら。同性愛に理解があると思っちゃいけなかったか。そうおもってアレン王子をみていたけど、王子はにこりと麗しい微笑をみせた。


「協力しましょう。まさかセシルがそのような特殊な趣味をもっているとは思っていませんでしたが。

…いえ、そのような勘違いをされるとは思っていませんでしたが、いい気味です…」

「本当!?ありがとう!!」


 興奮気味な私は後半何をいっていたのかも特に意に介さずにアレンの手を両手で握った。

 その手をぎゅっとにぎり返しながら意味深に微笑むアレンの微笑みに何故か寒気がした。…お兄様、大丈夫かしら…。アレンに協力を求めたのは間違いだったのかしら…。

 まあそんなことをいっていても仕方ないかと思い返し、どうすればセシデイが発展するか意見を仰いだ。


「二人きりになるべくさせるのがよいでしょう。そして邪魔にならないようなるべくセシルとは関わらないようにすべきです」


 でないと変な勘違いが生まれデイヴが身を引いてしまいかねませんからね、とのことばに納得する。確かにお邪魔虫になりかねないものね。悪役令嬢になってたまるか!

 こくこくと頷く私の頭を撫でてくるアレンにくすぐったく感じつつおとなしく撫でられていると、お兄様が笑顔で私とアレンを引き離した。


「これはアレン王子。僕の可愛い義妹に触れるなど感心しないな?」

「セシルこそただの兄妹に対して独占欲が強すぎるんじゃないですか?」


 二人とも笑顔で仲良く話し出してしまった。仲いいなあ。セシデイとアレミシェが王道とはいえ、この二人の組み合わせもアリだなと思いつつ二人の間から抜け出した。


「エミリ、プレゼント…」


 もじもじとしながらクレアちゃんがプレゼントを手渡してくる。毎年恒例行事となりつつあるクレアちゃんからの本のプレゼントは毎年お楽しみだ。クレアちゃんチョイスの本はBL好きには物足りないものの久しぶりの二次元に幸せな気持ちに浸れるのだ。そしてクレアちゃんのお勧めの本は大体面白い。


「ありがとう、クレア」

「こちらの本はね、凛々しい殿方であるハウル様と愛らしい殿方であるシロット様の強い友情が素敵で…」


 時々BLをチョイスしてくれるクレアちゃん最高に大好き。ぎゅっとまた抱きしめる。すばらしいBLだわ。イラストがないのは残念だけど、文章だけでもこんなにすばらしいBLを紹介してくれるなんて…うふふ。

 おどおどと抱きしめ返してくれたクレアちゃんとの抱擁は、何故かミシェルによって引き剥がされるまで続いた。


「うっとうしいんだよっ、お、女同士で抱きつく…とかっ!」

「ふむ、つまりは女同士でなければ問題ない…ということね」

「ちがっ」


 男同士なら問題ないわよね、うふふ。意味深に受け取りつつローズティーをミシェルに勧めると、真っ赤になりながらなにやらわめいていたミシェルも少し落ち着いたようにローズティーを口に運んだ。こんなデリカシー皆無なお子様ミシェルだけど、ティーカップを口に運ぶ姿は優雅で流石は王子様、って感じがする。


「そういえば、お前…ローズティー好きだよな」

「うん。特にミシェル様方がいらっしゃるときには是非とも飲んでいただきたいと思っているのです」


 ミシェルの言葉に頷いて肯定を示す。味も好きだし、何より…兄弟組をみているとローズティーを飲みたくなるのだ。…深い意味はないよ?

 私のその言葉になんか挙動不審なミシェルはずっと片手に持っていた包みを私に差し出した。


「こ、これ!たまたまお前が好きそうなローズティーを見かけたから持ってきてやった。やる」

「あら」


 もってきた包みを開けると可愛らしいビンにつめられたローズティーの茶葉が入っていた。…あの女心とは状態だったミシェルにしては少し成長したんじゃないだろうか。まだ可愛い可愛いアリスちゃんとの婚約を認めるほどではないけどね!少なくとも「お前最近少し太ったんじゃないか」とかいってダイエットグッズをプレゼントしてくる阿呆ではなくなった気がする。及第点をくれてやってもいいぞ、くるしゅうない。


「ありがとう、ミシェル。喜んで飲ませてもらうね」

「ああ。…たまたま見かけただけだから!俺も飲みたいと思ったついでなんだからな!」

「しってる」


 もう長年の付き合いになって敬語すら抜けた気の置けない友人であるミシェルだから、もちろん期待なんてしませんともよ。そこまで赤くなって否定しなくてもわかってるわよ。

 ぽんぽんと宥めるように撫でてあげたけどさらに赤くなって逃げられた。うぶなやつめ。2年後にはアリスちゃんに格好良く言い寄るはずなんだけどそんなにうぶで大丈夫か?慣れるように特訓してあげたほうがいいかもしれないな。


「エミリア」

「ああ、ロゼ。どうしたの?」

「私からも。受け取ってくれるか」


 背後から声がしたと思って振り返ると、ロゼが微笑を浮かべながらプレゼントを差し出してくれた。受け取ると、可愛いペンダント。…うーん、申し訳ないんだけどペンダントとかほとんど使わないんだよなあ…と思い微妙な笑顔になると、ひょっこりとクレアちゃんが顔を出した。


「エミリ、それは彼の小説の誓いのペンダントですよ」

「まっ、まさか…あの、」


 思わずごくりとつばを飲み込んだ。…あのBLに出てた誓いのペンダント…。攻めがやさしく微笑みながら渡すのを赤くなりながら受け取る受け。そして受けは

「本当に、…僕が受け取っていいのですか」

と瞳を揺らして答えるの。そうすると攻めがさらに幸せそうに微笑んで頬に手を触れて、

「貴方にしかあげる相手はいない。これまでも、これからも」

 …ロゼ?

 何故かまったく同じシーンを再現されて思わず真っ赤になってしまう。…もしかして同じ小説を読んだの?


「エミリアの一番お気に入りだとクレアがいっていたから。読んだ。」


 そうなのか。BLだけど結構面白かったそうで、しばらく三人で感想を語り合った。

 とりあえず他のメンバーからもプレゼントをいただいたり、お茶を飲んだりお菓子を食べたりミシェルと言い合ったりセシルとアレンが楽しそうに会話しているのを眺めたりしているうちに誕生日は終わった。

 …あっ、結局セシデイくっつけるためになんもしてないことに気づいた。とりあえず明日からお兄様とデイヴが二人きりになるよう仕組んでいきましょう。

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