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36 全力で応援いたします 後編

「なあ…そろそろ振り向いてくれてもいいんじゃないか…?」

「私と貴方様は主従関係ですよ…どうか、私のことは諦めて」

「嫌だ。僕はデイヴ、お前がっ!」

「それ以上はいってはいけませんよ。…ご主人様」


うふ。うふふふふふふふふふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。

どうも、私です。まさかのBLに興奮しすぎて死んでしまいます。うふふ。会話は私の脳内で繰り広げられています。実際に聞いてるわけじゃないですが、私の腐フィルターをもってすれば、動きから言葉を想像することも出来るのです。

なんてこと。…なんてこと!まさか本当にセシデイになるなんて!我が人生に悔い無し…っ!昇天しそうな勢いですわ。ぐふふふ。

そうよね、デイヴとお兄様は長い付き合いですもんね。そんな関わりの中で仲を深めていって、親愛が本物の愛へ発展していったというのね。でも、デイヴは私付きの執事なわけだから、学園について行くわけにもいかないし、私についている執事だからずっと一緒ってわけにもいかないし…。

…ってちょっと待って。いつの間にかセシデイの邪魔になっているのでは!?私、逃れられない悪役ポジション!ひぃっ!


「私は…お嬢様付きですから、貴方に仕えることすらできません…」

「ああ…エミリアさえいなければ…そうすれば、お前は僕と!」

「なかったことを考えても…どうにもならないのですよ」

「デイヴ…」


ひ〜、二人の会話がヒートアップしてくる〜!(脳内で)どうする?エミリア=シルヴェスター!このままじゃ尊いBLの悪役令嬢になってしまうわ!邪魔をしてどうするの!…はっ!…応援しましょう、そしてくっつけてしまうのよ!そしたら私はにやにやしながらセシデイを眺める幸せな日々を送れるわ…うふふ。話を聞く感じだとお兄様の片思いなのよねえ。くっつけよう大作戦始動!


『チャプター1』

「ねえ、デイヴ」

「エミリア様、どうなさいました?誕生日の件でしたら…」

「ああいえ、違います。正直誕生日はどうでもよくて…」

「どうでも!?」


うん。リアルBLに比べれば誕生日などどうでもいいのです。


「そんなことより、デイヴはお兄様のことをどう思いますか?」

「えぇっと…セシル様ですか?愛が重…なかなかに腹が黒…ああいえ、大変愛情深くて好ましい方だと思いますよ」


好ましい!!ですって!しかもちゃんと自分が想われている自覚もあるのね。よかったよかった。


「でも、その愛が伝わらない様子を見ていますとなかなか不憫に思います」

「伝わらない?」


何を言っているのだろう。デイヴさえ気づいていればいいのに…あっ、じゃあ、お兄様とコミュニケーションをとってもらうためにデイヴの担当をお兄様にすればいいんじゃないかな!


「デイヴが私のおつきじゃなくなる…」

「エミリア様!?」


何故か胸がぐっと痛くなった。…思えば小さい頃からずっと一緒のデイヴ以外が自分を担当するのは、…なんか嫌だ。私が微妙な顔で佇んでいるとデイヴが何やら心配そうに私を覗き込んでいる。


「…それは、嫌…」

「えっ、あの、エミリア様?旦那様からそんな命令でも!?」


気づいたらデイヴの顔が真っ青だ。どうしたんだろうか。とりあえず宥めようかと頭をぽんぽんと撫でるとデイヴは複雑そうに顔を顰めた。ああ、ごめんなさい。デイヴの頭はお兄様専用なのよね。うふふふ。


「あの、私がエミリア様付きの執事じゃなくなるというのは…」

「ああ、デイヴのことを考えるとそうすべきなのかもしれないですが、わたしはデイヴと一緒にいたいと思うのでやめておきます」

「い、一緒にいたい…」


なんか今度は赤くなった。赤くなったり青くなったり忙しいなあ。とりあえず、積極的にデイヴをお兄様の元へいかせることにしましょう。


『チャプター2』

「これを、お兄様に持って行ってもらえますか」

「エミリア様、これは…」

「白薔薇の花束です」

「はぁ…」

白薔薇の花言葉は相思相愛ですよ、デイヴ。覚えておくといいですわ。うふふ。訝しげな表情で見てくるデイヴに意味深な笑みで応える。

「エミリア様の誕生日では?」

「日頃の感謝の気持ちです」

間違ってないわ。

「はぁ…」

曖昧に声を漏らしたデイヴ。…まだまだ完全な相思相愛には程遠いかしら。頑張れお兄様。


『チャプター3』

「エミリア」

「お兄様」

呼び止められて振り向くと、至極御満悦な表情のお兄様。傍から見ればいつも通りに見えるが長い付き合いの私にはルンルン気分が手に取るようにわかった。

「白薔薇、綺麗だね。ありがとう」

「あら?なんのことですか」

「白薔薇の花、エミリアが感謝の気持ちと贈ってくれたといわれたけど…」

「わたし、お兄さまへのプレゼントなら直接渡しますよ?」

「……」

私の言葉になにか考え込むお兄様。さあ、デイヴが贈ったと勘違いするといいわ。うふふふふ。

結局お兄様は微妙な表情で「そっか」と微笑むと去っていった。うーん、ちゃんと勘違いしたかしら?


そのあともことあるごとにデイヴをお兄様にけしかけてみた。お兄様は照れ隠しか「直接エミリアが来てくれればいいのに」と苦笑いをしてたらしいけど、私は全力で応援しているのでお兄様は順調にデイヴと愛を深めるといいと思います。


「お父様、このドレスは」

「私のかわいいエミリアちゃんに似合うと思ったんだ」

「嫌です」

大量にフリルのあしらわれたドレスをもってせがむようにみてくるお父様を冷たくあしらう。正直誕生日恒例だ。だから上目遣いで見るなお父様。お父様のぽんぽこりんな姿では全く可愛いと思いません。一昨日来やがれ!

お父様はしょんぼりとしていたが、少しして、またにこりと微笑む。

「…美味しいおにぎりをシェフに作らせてみたけど…食べないかい?」

「食べます」

明日の誕生日がドレスに決定してしまった。

デイヴとお兄様の恋模様も気になるが、明日は王子達やキングスレイ兄妹も遊びに来てくれるらしい。お兄様がいなくなる前にセシデイの絆を少しでも強化しつつ、友人達をもてなさなければと強く誓った。

…ドレス、本当に着なくちゃだめ?

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