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22 閑話
あの子は我儘だ。我儘だけど傲慢じゃない。
あの子は自分にも他人にも厳しい。
我儘に色々なことを望むけれど、そのための努力だってずっと見ていた。
あの子は捻くれている。素直じゃないのだ。
本心を隠して今日も強く凛と咲いている。愛する人のために。
故にあの子は気づかれない、不器用な優しさを、不器用な笑顔の魅力を。
その魅力を僕だけがずっと知っている。
僕以外は誰も知らない。
あの子がとても抜けていて、嘘がつけないことも。
あの子がとても強くて、けどそれ以上に繊細なことも。
あの子の本当の笑顔は、何よりも美しいことも。
あの子の状況が変わってほしいとずっと思っていた。
あの子のことをわかってあげてくれとずっと思っていた。
何かが違う予感に胸を高鳴らせた。
吉と動くか凶と動くか、僕はまだ知らない。
僕は花瓶の中で鮮やかに咲く薔薇に微笑んだ。
あの子が幸せになってくれますように。




