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20 夢を見ました

そのあとの私はというと、お礼にと料理屋である彼女の家の軽食を頂いて屋敷へと帰った。軽食もなんだか懐かしい味がして、とても美味しい。私が会いたいと待ち望んでいたアリスちゃんも愛らしく、私の言葉ひとつひとつに頬を紅潮させながらも笑顔で頷いてくれた。


「あのっ!よければまたっ、来てくれませんか?」

「ああ、もちろん。…またくるね、アリスちゃん。」

「お待ちしております、シオン!」


お店の外に出ると、空はすっかり暗くなり、ひんやりとした空気が身を包んだ。念願のアリスちゃんに出会えたからか興奮気味に熱くなった頬が心地いい調子に冷めてくる。街並みはすっかり街灯が灯り昼とはまた違った雰囲気になっていた。いいな、いいな。私もこのまま遊び続けていたいけど、もうすぐ夕食の頃合だ。バレたら大騒ぎになるだろうとは簡単に予想がつくため帰路に足を向ける。

うんうん、今日はいい日だったなあ。隠密スキルを駆使しながら屋敷に入り、自室に戻ると___超にっこにっこパーフェクトスマイルを浮かべたお兄様が待ち構えていた。


「エミリア。」

「……………はい」

「正座。」

「……はい…。」


結局そのあと寝るまで解放してもらえなかった。なんでも私はパーフェクトに家を出ていたおかげで暫くはバレることもなかったみたいだけど、私の計算外のミシェル王子の訪問があったとかでそのせいでいないことが明らかになったらしい。

最近忙しいのかミシェル王子もアレン王子も訪問頻度が減ってる為すっかり油断していた。…あの王子…今度辛子いっぱいのお菓子でも用意してあげよう。涙目の王子が見れるはずだ。ミシェル王子はああみえて辛いものが苦手なのだ。ざまあみろ。うけけ。

ちなみにそのあとはデイヴが私が何をしにいったのか察して大事にせず、お兄様にだけ報告し私に隠れて私をつけていたとか。まあ危険な場面でデイヴも出ないうちにまさか楽々なぎ倒すとは勿論思っていなかったみたいだけど。

私が普段寝る時間を大幅に過ぎた頃、ようやく解放された私はくたくたになってベッドに転がる。でも今日は楽しかったわ。また隙をみて遊びに行こう。そう誓いながら重い瞼を閉じていく。


あれ…なんか…同じようなシーンを見たことがある気がする…そう、確かあの、幼少時代のアリスちゃんが悪い男に絡まれているところをお忍びで来ていたミシェル王子に助けられるシーン…あそこで二人は…恋に…

寝ぼけ眼のまま思考はシャットダウンされていき、私はそのまま眠りについた。


☆☆☆☆☆


「紫苑、紫苑!!」

「はっ!!」


目が覚めるとオタ友であり愛すべき親友のきょーちゃんの顔がどアップでいた。教室の喧騒。どうやら授業中うたた寝(爆睡と言われたけどあくまでうたた寝よ)をしていたら昼休みになっていたらしい。いつも通り購買で買ったらしいパンを頬張りながら私の前の席に座った。


「また紫苑夜更かししてたの?」

「あーうん。0時に寝ちゃダメだね、睡眠時間足りない…」

「紫苑は甘っちょろいわね。私は3時まで起きてたわ!」

「わたしはロングスリーパーなんですぅ〜。いわば眠り姫なんですぅ〜」

「はいはい。それで昨日は何してたの?」


きょーちゃんは軽口のやりとりを適当にうち止めると、パンの新しい袋を開けた。それで何個目かな?太らない体質妬ましや…。


「稽古帰りにメルト寄ったらね、バラハナ最終巻コミックス出てて!!」

「えっうそやばい買わねば(使命感)!!」

「読んだらまた沼っちゃって読み返しの旅に出てたんだよねぇ…はあ、アレミシェ最高…」

「ミシェアレね。まあ実際は完全なアリスハーレムだけどね」

「そうそう〜。アリスちゃん尊い…アリスちゃんいじめたエミリアも無事国外追放だしスカッとした!!」


私の声にきょーちゃんは「あ、ネタバレ絶許」と耳を塞いだ。ああそういえばきょーちゃんは完全コミックス派かあ。


「それにしてもエミリア往生際が悪いのよねえ。証拠揃ってるのに私は悪意があるわけじゃないわっていっつも言ってるの!あーあ、本当にやな性格だよ…腹黒というかなんというか。」

「まーそういってもミシェル王子とかセシル様とかがちゃんとアリスちゃん見てくれるしいーじゃないのそう嫌悪しないの!」

「だってきょーちゃん!あの時だってさあ!!」


熱が入って机をばんばんと叩いたところで、チャイムが鳴った。きょーちゃんは「またあとでね」と苦笑しながら席を立つ。休み時間って本当短いわね。…何か忘れてる気がするんだけどなんだろう…。きょーちゃんと離れた直後にどっと眠気が襲ってくる。これはまた、授業うたた寝ルートね…またお兄様に怒られるわ…お兄様?


☆☆☆☆☆


「はっ」


目が覚めるといつも通りの品のある天蓋がみえた。ベッドももふもふ。あれ?なんか夢を見ていたような気がする。どこか懐かしくて、どこか大事な夢。…じゃなかったっけなあ。体を起こすと、つー…と生温いものが頬を垂れた。…どうやら泣いていたみたい。なんでだろ…?

疑問に思いながらもまた眠気に襲われて再びベッドに倒れ込む。

昨日はなかなか眠らせてもらえなかったから、ゆっくり寝よう…。いや、お兄様にはまだまだゴールデンタイムなのかもしれないけど、私の身体は睡眠を欲するのだ。お布団はお友達。

怠惰なことを考えながら、再び睡魔に身を任せた。


さっき見た夢は、なんだったんだろう。

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