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14 はじめてのお茶会 Ⅲ

美少女に、振られてしまった。うっ、なにか私は美少女を怒らせるようなことをしてしまったのかしら?ああもしかしたら視線が気持ち悪かったのかもしれない。あーありそう。だってあんなに美少女なんだもん…だもん…。多分一連の流れを見ていたのであろう令嬢方が私の方を見て何かを言っている。ああ…これはきっと笑われているのね。むしろ引かれているんだわ。

ずるずると被害妄想にふけっていくのを振り払うためジュースをがぶ飲みする。ええいっ!やけ酒だ!!


「エミリア」


ああもう甘ったるいジュースじゃ刺激が足りない!そういえば炭酸ってこの世にないのかしら?今世では飲んだことないわね。ついでに美味しそうだけどまだほとんど手をつけられていない料理があるわ!勿体無い!食べましょう!もうこうなったらやけよやけ!丁寧に料理を取り美しく食べ始める。


「おい、エミリア」


なんかさっきから声が聞こえるわね。誰かが私を笑いに来たのかしら。ええそうよ。どうせ私は所詮かわいい女の子1人にすら振られ1人で壁の花をやるのがお似合いな悪役令嬢ですよーだ。


「え、み、り、あ」

「わひゃっ、ミシェル王子、アレン王子!!」


肩に手をかけられびくんっとなる私。いつの間にか背後には二人の王子が立っていた。ミシェル王子は怪訝そうに眉をひそめ、アレン王子は暗黒微笑って感じ。ひぃっ、なになに。


「いつからいらっしゃったのですか!?」

「さっきから呼んでたろ。」

「挨拶にも来ないので心配だったのですよ?エミリア。」

「それは…ごめんなさい。忙しそうだったので」

「そんなの気にしなくていいんだよ…で、何してたんだ?」

「なにし、て…」


じわっ。一瞬女の子に逃げられた悲しみが引いていたけれど、思い出してまた悲しくなってきた。目がうるうるしている。うぅっ、どうせ私なんか…


「えっ、ちょっとエミリア!?」

「どうしたんですか!?」

「傷心ちゅうなので放っておいてください」

「「傷心中!?」」

「お手洗いいってきますぅっ」


ダッシュ!思い出したら悲しくなってきたわ。少々はしたないけれど、紳士な淑女として人前でこれ以上落ち込むわけにはいかないもの。もう手遅れと言われたらそこまでだけれども。

王室の綺麗なお手洗いに飛び込むと、人がいないのをいいことにじぃっと鏡を眺める。若干赤くなった目元以外は真っ白な柔らかい肌、大きくて青い瞳、さらさらの金髪。ちょっと童顔すぎる気もするけれど、…怯えられるような見た目ではないと思うの。


「やっぱり、視線がへんしつしゃ…」


そういえば前世で仲のいい友達に「可愛い子見る時の視線がやばい」って言われていた。もしかしてその影響なのかしら…。


☆☆☆☆☆

「…おいっ、エミリア!…はぁ、なんなんだ一体…」

「傷心中…って…」

エミリアを追いかけようにも他の令嬢を押しのけるわけにもいかない。せっかくアレンがエミリアをお茶会に誘ったというのに、全然喋れていない。挨拶回りがようやく少しひと段落したと思えば潤んだ瞳で俺を見つめてそのあと逃げられた。…なんかちくっとした。風邪だろうか。アレンとどうするかと視線で話し合っていると、肩を軽く叩かれた。


「……セシル」

「今エミリアが泣きながら走っていったのを見ましたが、何をやっていらっしゃったのですか?王子様。」

「ちがっ、」


笑顔が黒い。どこか寒気がする。慌てて二人で状況を伝えると、セシルは暫く半信半疑の様子だったがようやく信じたのか少し考えるように口に手を当てている。


「…ミシェル様、アレン様、セシル。」

「…ああ、ロゼ。ちょっと待ってくれ」


と、学友であるロゼが声をかけてきた。ロゼ=キングスレイは小さい頃からの友人とはいえ今この場ではエミリアが優先だ。泣き顔なんて初めて見た気がする。いや、泣くというかうるうるとしていただけなのだが。けど基本タフでなんだかんだで強いから正直戸惑った。


「あのエミリアが傷心中って…いつの間に好きな人でも…」

「いや、案外好きな食べ物を持っていかれただけとか…」

「流石にそれだけで泣くでしょうか」

「そのエミリア様のことなんだが」

「まずは何よりエミリアを回収しなきゃですね。…全く、手がかかりますね、僕の義妹(えみりあ)は」

「その僕の、って形容詞やめてくださいませんか?一応今はミシェルの婚約者なんですけど」

「一応今はってなんだよ」

「…俺の妹がさっき思わずエミリアの友達になろうという申し出を断って逃げてしまったと」

「「「なんで早く言わない!?」」」

「3人とも聞く気がないんだろう。」


よく見れば、ロゼの後には黒髪の小さな少女が隠れている。若干震えているようだ。

「えーっと、たしか、クレア嬢、ですよね?」

「ひぅっ…ごめんなさいごめんなさい…」

アレンの声にさらに怯えたように囁くような小さな声で返答する少女。なに余計怯えさせてるんだか、と俺が代わりに聞こうとすると、小さな声で「ゃっ…」と拒絶された。…何か、ショックだ。


「クレア様。僕の義妹はショックを受けていたみたいなんだ。…エミリアはだいぶ変なところがあるけど、きっとクレア様と仲良くしたいと思ってるんだと思う。…それともエミリアが何かをしたのかな?」

「い、…ぃえ、むしろエミリア様は、格好良く助けてくださいました。」

「じゃあ、どうして断ってしまったの?」

「うれしかった…けど、びっくり…してしま、って」


優しい笑顔で少女に話を聞いていくセシル。…悔しいが、扱い方に余裕があるようだ。少女もロゼの後ろから少しだけ顔を出して、怯えながらも答えている。聞いたところによると、エミリアに他の令嬢に絡まれているところを助けてもらったのだが、エミリアのようなすごい人に友達になろうと言われて混乱して咄嗟に逃げてしまったらしい。…あいつ、すごいか?ただのお人好しなだけの変なやつだと思うけど。


「大丈夫だよ。…エミリアは今お手洗いに行っているようだから、終わったらちゃんと話してくれるかな?」

「っ…はい…」

「俺の妹がすまなかった、セシル。」

「ああ、いいよ。多分エミリアも可愛い女の子を目の前にして舞い上がったんだろうから」


これで解決するといいが。エミリアがお手洗いに行った方向を見ながら帰りを待った。

読んでいただきありがとうございます。あまり高頻度で書きすぎるのもどうかと思ったので今後は1日1話くらいのペースで更新していこうと思います。その他ご意見やご感想などがございましたらぜひとも聞かせてくださると嬉しいです。

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