12 はじめてのお茶会 Ⅰ
「…エミリア。お茶会にきていただけませんか?」
9歳になった私は、遊びに来ていたアレン王子とお茶を飲んでいたところ、そんな提案をされた。
知り合った頃は常に二人一緒だった王子達だが、大きくなった二人は少し忙しくなったらしく、単体での訪問も増えている。…いや、忙しいのにわざわざうちに来なくても。何度かそう言っているんだけど、別に好きできてるだけだからの一点張りなのでもう諦めていた。…そういえばこの王子達私の破滅フラグなんだよなあ…いや、もうこの際どうでもいいんだけどさ。アリスちゃん見れれば。
…話は戻って、お茶会の話だ。そういえばお茶会もそろそろデビューしないといけないとお父様とお母様が言っていた記憶がある。知り合いである王子達とのお茶会なら幾分気楽かもしれないなあ。
「お断りしますね」
思考を巡らせていると、なぜか隣でお茶を飲んでいたお兄様が勝手に返答していた。…いや、なんでお兄様が答えるの。
「ふふ、なぜ貴方が答えるのですか?セシル=シルヴェスター。」
「いくら優秀な義妹でもまだお茶会未経験ですので。王子様方主催の盛大なお茶会に参加させるわけにはいきませんからね。というわけで僕の大事な義妹を参加させるのはお断りします、アレン=セレドニア王子。」
二人がにこにことした表情で話し合ってるのを見ながら考える。ふむ。アレンのいうことは勿論もっともなんだけど、お兄様のいうことは正論だ。そういえば忘れてたけど、二人って王子なんだよなー。お茶会とか絶対大規模なやつ。
「確かに、初たいけんで王族きぼは少しふあんですね…。」
「だろう。僕の方で見繕った小規模なお茶会でゆっくりまずは様子を見た方がいいからね。」
「大丈夫ですよ、エミリア。エミリアであればマナーも優秀ですし、なにかあれば王子である僕が駆けつけられますし。」
うーん、どうしようかなあ。どっちのいうこともわかる分どっちが正しいのか悩ましい。むむむ…。腕を組んで考え込んでいると、それはそれは愛らしい笑顔のアレン王子が付け加えた。
「それに、僕達王子のお茶会ですから、愛らしい女の方もいっぱいいらっしゃいますよ?」
「行きますわ」
即答だった。えへ。この屋敷にいると可愛らしい女の子の知り合いが少ない。いや、可愛いメイドさんとかはいるけど、同年代の女の子の友達が全くいないのだ。そのため女の子と知り合いになれるというお茶会は…素晴らしいと思う。目を輝かせて了承する私。隣から呆れたような視線が投げられるけど気にしない。
「エミリア…」
「というわけですのでセシル。僕が誘った責任をとってエスコートしますのでどうぞお気になさらず」
「僕も行くに決まってるでしょう?」
二人の会話をそっちのけでどんな美少女と知り合いになれるかと思いを馳せる。王子達のお茶会だから、きっと大勢の女の子が来るに違いない。最初の友達は…そう、愛らしいけど大人しいタイプの女の子がいいわ。打ち解けるとだんだん笑顔を見せてくれるようになるのよ!!そのはにかんだような笑顔はきっと天使で…
「……ふへへ…」
「…時々思いますが、彼女は本当に女の子なんでしょうか。」
「立派な淑女です。…女の子への愛情とか時折の男性のような振る舞いとかは僕も心配になりますが。」
なんか失礼なことを言われた気がするが、この際気にしないでおいてやろう。まだみぬ美少女に免じて。
お父様からの承諾も得て、私はお兄様とともに初体験のお茶会(王子主催)へ行くことが決定した。お兄様はすでにお茶会にも沢山誘われ参加しているようだから、とても頼もしいわ。ああ、そういえば。最近セシアレもいいと思ってるんです。でもアレセシも美味しいから…リバかしら?
「お兄様は…りば…」
「なにいってるの?エミリア。」
「はっ!」
「ついたよ。くれぐれもはしたない言動は控えること、大人しくしていること 、他の令嬢に必要以上に優しくしないこと」
「最後のちょっとおかしくないですか?」
「エミリアはもう少し自重して」
「げせませんわ」
解せませんわ。




