03 食後の運動をしよう
日本の強盗事件では、銀行よりも郵便局の方が数倍件数が多い。
郵便局の方が規模が小さく、少人数の職員しかいない支店があるため標的にされるのだ。
しかし郵便局強盗をやるなど、理解に苦しむ。
万引きなどと同じように、スリルでも求めているのだろうか。お金のため?いや、銀行や郵便局を
強盗しても平均100万程度の金額でしかない。もちろん、0がほとんどだが。
ハイリスクローリターン、逃走に成功しても、数日後に逮捕だ。
「郵便局強盗?」
オレはイエスと答える。
「ああ、間違いない。顔付き、気配、物腰、そして経験から来る直感がそうだと言っている。
面倒だが、銀行内に入って、どうしても必要な場合は制圧する」
「何言っているの?なんでアナタが...もし、本当に強盗だとしてもアナタがどうこうできる問題ではないわ。それに事情は知らないけど、目立つのはマズイんでしょ」
さすが、ミサ察しがいい。確かに、目立ちたくない、速やかにオレの体の事を解決したくて
彼女を呼んだのだが。
「出来るだけ、目立たないようにする」
「あなたでは、無理よ」
「やるか、やらないかだ。無理かどうかは関係ない」
別にTVやニュースで殺人事件が起きても、運が悪かったなとしか思わないが、オレの目の前で
おきれば別だ。今までいつ死んでもおかしくない人生を送ってきた、そのため一日一日を悔いなく
生きたいと思いながら生きてきた。今ここで、我関せずと見て見ぬふりをしたのならば、悔いが残る。
まぁ結局は自分の為だ、気持ちよくメシを食べたいなのだ。
メシを食べるとき、ウジウジ後悔しながら食べるメシは、どんなに豪華な食事でも残飯以下だ。
オレは何でも食うし、特に嫌いな物も無いが。残飯以下のメシなど食うのは我慢ならない。
オレの人生で数少ない趣味である、食事を邪魔する物は容赦しない。
素早くファミレスを出て、銀行に入った。後ろから、ミサが何か叫んだが時間がないから無視だ。
銀行内へ正面入り口から、潜入した。
状況を瞬時に確認した。強盗犯はまだ、様子を伺っていいる最中だった。
局員の数は男性1名、女性3名。
男性は壮年、管理職だろう。女性3人は全員若く、受付窓口にいる。
客は制服姿の女子高生1人。
強盗犯の1人は、身体が大きい。とはいっても、昨日までのオレとだいたい同サイズの180cmぐらいだ。ただ、筋肉の付き方からして体重は100kg近いだろう。
もう1人の方は、細身だが、目が鋭く爬虫類のような顔をしている。目の付け所が、素手の範囲では
ないし、間合いの感覚が広い。間違いなく武器をもっているだろう。
便宜上、身体が大きい方をゴリラ、まぁ本物のゴリラよりは確実に弱いが、そう呼ぼう。
細い方を、ヘビと呼称する。
オレがフロントのソファーに身を隠して、様子を見守っていると、
「全員手を挙げ、こっちの壁に手をつけろ!!」
ゴリラが、ショルダーバックからショットガンを取り出して叫ぶ。
「オラ、さっさとしねぇか」
ヘビの方はハンドガンを取り出し、威嚇した。
ゴリラが取り出したショットガンはレミントンM870。
アメリカの銃器メーカーのレミントン社の定番中の定番のポンプアクション式の散弾銃でその操作性、頑丈さが人気で世界で1000万以上の販売されている世界で最も売れたショットガンだ。
日本でも狩猟用として販売されているが、これはそれを改造したものだろう。
銃身が短くなっている、いわゆる短銃身化にしている。
ソードオフにするメリットは、室内戦闘での取り回しが良くなることと、近距離戦闘での威力が
上がることだ。
デメリットは、遠距離の精密射撃能力の低下、遠距離の威力低下、装弾数が単発もしくは2発に
減ることだ。
しかし、今回のケースではデメリットはほとんどないだろう。
まず、遠距離の射撃能力の低下および遠距離威力の低下は室内であるかぎり必要ない。
装弾数も狩猟用を手に入れたのだとしたら、元々日本の銃規制で2発に改造されているので
デメリットは無い。
対処方法としては、ソードオフにしたため再装填に時間がかかるため2発撃たせてから、
制圧するか。または、撃たせる前に対処するかだな。
ただ、弾は散弾のままだと思うが......散弾か、避けづらいんだよな。
ヘビの方は、ハンドガン、いわゆる拳銃だな。日本では正規のルートでは入手不可能だ。
日本では公的機関のみ所持が許されている。いや厳密にいえば、優秀なピストル射撃競技の選手で、日本ライフル協会から認められた50人だけは所持できるだったか?
ああ、あと忘れてはいけない。オレら特別狩猟免許をもっているハンターだ。
それで、ヘビの持っている銃は裏ルートで入手したんだろう。
銃の種類は、グロックだな。オーストリアにあるグロック社の自動拳銃だ。
軍や警察で制式採用されている大人気の拳銃だ。
日本でも特殊急襲部隊(SAT)がグロック19を使用していると言われている。
グロック19は、基本となるグロック17のコンパクトモデルだ使用弾薬は9mm。
他にもコンパクトモデルは使用弾薬によって種類があり、グロック23、25、32、38など
の種類がある。
ヘビがもっているのは、グロック17だな。いや、スライドの後方にセレクターがある。
ということは、グロック18か?
グロック18は、基本的にセミオートである自動拳銃にフルオートの機能が付いているモデルだ。
通常の拳銃は、引き金を引くと1発しか弾はでないが、フルオートは引いたまましておくと
その間、弾が連続で発射される。
通常のグロックのマガジンでは1秒もかからずに撃ちつくしてしまう。
ヘビの持っている銃は、グリップより長いマガジンが付いているので、ロングマガジンを使用しているが
それでも33発なので、まぁ1.6秒は持つか。
フルオートは反動が大きく、制御が難しい。また、一瞬で弾を使い切ってしまうのでバカではない
限り、単発で使用するだろう。
ああ、よく考えるとグロック18は公的機関専用モデルで入手より困難だから。
グロック17をフルオートに改造した銃だな。オレの自慢の視力はグロック18にはある、バレル上方にあるはずのコンペンセイサー用のガスポートが無いことを捉えた。
さて、相手の装備は確認した。金だけ取って、逃げるのならこちらからは手を出さない。
過去の、四つ目菱銀行人質事件のような事が起こるのであれば全力で阻止する。
見て見ないふりをして、朝のニュースでそんなことが起こっていたと知ったら、朝メシが台無しだ。
ゴリラとヘビが、スマートに給料の引き出しを成功させ逃亡することを願おう。
どのみち、後日逮捕されるだろうがな。