02 ファミレスで給料日の人をみかける
無事、BLWに遭遇せず、デザートイーグルを使う事態は起きず。合流地点に到着した。
指定した場所は、舗装されているので自動車で移動できる。
合流するまでに、周りの地形を確認し、身を潜めることにする。
来た。一台の自動車が合流地点に止まり、一人の女性が降車した。
その女性こそ、オレがメールをおくった人物だった。
見晴らしが良い場所で、尾行などが無いことを充分に確認してから、彼女に接触した。
「あら、こんにちは。どこから来たの?」
彼女はミサ長い付き合いだ。そのミサが、姿を現したオレに声をかけて来た。
「M78から」
合言葉を答える。
「それは、どこなの?」
続けて答える。
「M2SH3GWAB1」
符丁の確認は完了した。これで、信用されるだろう。
「あなたを、保護するよう言われてきたのだけど、その荷物はどうしたの?」
まぁ、素性不明の子供がオレの装備もっていたら、不信に思うよな。
「要平には、あなたの自宅にいきゅ...いくまで何もいわないでいいと言われた」
今、説明してもオレ自体上手く説明できる自信が無いので、重要なメッセンジャーとして
振舞おう。
「名前くらいは、いいわよね」
「さっき言った、何も言わないって。」
「オーケー、だだ一つだけ聞かせて。彼...要平は無事なの?」
真剣な表情で、質問された。全然無事じゃないが、一応、いまのところは生きてる。
待っている間に検査した血液の反応結果、他人に感染の心配も無いことも確認済みだ。
「命に別状は無い、それだけは言える」
「そう、ならいいわ」
ミサはキレイなブロンドの前髪をいじりながら、話す。
しかし、完全に身長差が逆転している。ミサは元々モデルのような身長、体形をしていたので
今の、オレでは見上げるようだ。
「それで、着替えはあるか?」
「後ろに、あるわ」
後部座席の方を見て、ミサが答える。
「じゃあ、着替えてもいいか?」
「どうぞ」
後部座席から、着替えの入っている袋を取り出し、Tシャツを脱ぎ、手早く子供用のシャツとズボン
に着替えるとミサが、
「あなた...女の子だったの?それより、その...傷痕は?」
冷静を装っているが、驚いたように見えるミサが聞いてきた。
やっぱり、子供で女に見えるか。ウィルスを打たれて幻覚を見ていたという事はなさそうだ。
体中にある傷痕は、今回のものでは無く昔からのもので、大小さまざまな傷がある。
銃創、刺創、爆傷、列創、割創、傷痕の見本市が開催できそうな勢いである。
体が変異しても、この傷痕があってよかった。心からそう思う。
これのおかげで、オレはオレだと確信できる。傷のひとつ、ひとつが大切な思い出に思える。
ただ、幼児といえるような子供についているような、傷じゃないよな。
虐待か何かと思われているのかも、しれない。
「同じ事を三度も言わせるのか?」
「...そうね、...わかったわ。準備が出来たら行きましょう」
オレは、後部座席に乗り込み。ミサは運転席へ座りこの場所を移動した。
安心したのか、とても腹が空いてきた。
いままで、異常事態で忘れていた。
「ミサ、車で飲食してもいいか?」
「名前なんで知って...いいけど、こぼさないでね」
後部座席にあった、買い物袋からミネラルウォータを取り出し飲む。
2本飲み干して、こんどは食料に手をつける。サンドイッチやおにぎりなどを3人分くらい
あったが、全て平らげてしまった。それでもまだ足りなかったが、幾分か調子はよくなった。
頭がすっきりしないのは、低血糖だったからだな。
しかし、半端に食べてしまった所為で食欲が止まらない。
今まで、飢餓状態になったことも何度ある。10日間、水しか口に出来ないときもあったが
今回の食欲は異常だ。いままで体験したことがないくらいだ。
そういえば、ウィルスで変異したバケモノ達は人を襲い食べていた。
幸いにも人を食べたいとは思わないが。
「すまんが、どこで食事できないか?」
「さっき、食べていたじゃない。我慢できないの」
まぁ、もっともな意見だが我慢できん。正直、昨年の尿管結石で苦しい思いをしたとき
ぐらいキツイ。
「すまん、我慢できん。頼む」
「ちょっと、大丈夫?顔色悪いけど」
我慢できず、顔に出ているらしい。
「大丈夫、空腹なだけだ」
「わかったわ、そこにファミレスがあるから、そこによっていきましょう」
「助かる」
自動車が駐車すると、飛び出すように降りた。慌てて、ミサも追いかけてくる。
ファミレスで、片っ端から注文した。料理を待っている間も、空腹感でどうにかなりそうだった。
元の体の時もよく食べていたが、それに負けないくらい食べた。20万円分くらい食べた、一人で
20万円分食べたのは、初めてだ。
ミサはコーヒーを注文して飲んでいたが、オレの食欲に驚いていたというか、引いていた。
食後のデザートを楽しんでいると、ふとファミレスの道路を挟んだ前にある郵便局が目に入った。
というか、正確には郵便局に入っていく『二人組み組の男』がだ。
一般人のように装っているが、顔つき、気配など様々な情報が経験と結びついて、
直感が、やつらは今日『給料日』なのだと判断した。
マジか、勘弁して欲しい。どんな確率だよ、本当に今日はツイてる。
幼女になったり、給料日のヤツにであったり、こんなことなら宝くじでも買っていれば当たっていた
かもしれない程の確率だ。いや、むしろ宝くじ当てる方が簡単なくらいだと思う。
ふざけんなよ、面倒事はいやなんだよ。オレは早くこの状況を何とかしたいのに、
クソ...クソッ。
他の客に聞こえないよう、ミサに囁いた。
「ミサ、郵便局強盗だ」