魔法があるのに魔力がないって、どんな仕打ち??
息抜きで書いてみました。
俺は子供の頃に親に捨てられた。理由は単純だった。経済的に育てることが困難だったのと、俺が馬鹿だったからだ。具体的には、いつも両親の期待に添えないでいた。だから正直、いつかこうなると思ってはいた。
友達もいなかった俺は、母方の祖父の家に引き取ってもらうことになった。
それから毎日はあまり覚えていない。勉強はロクにやった記憶がないし、友達も数えきれるほどしかいなかった気がする。環境としては最悪だっただろう。
でも、高校を卒業してからは割と真面目に生きていたつもりだ。成績があまり良くなかったため、一週間の半分はアルバイトをしていた。もう半分は、児童養護施設でボランティア活動をしていた。実に真面目な四年間だった。
ある日のこと。俺はボランティア活動で小学生の子供たちと外に出る機会があった。散歩みたいなものだ。そう、すぐに終わるようなもののはずだったのだ。
けど、俺の不注意で、赤の横断歩道を渡りきれてなかった女の子が一人いた。すぐに飛び出した。信号は赤で、すぐそこまでトラックが迫っていることも承知で。
女の子は助かったろうか? 死んじゃったんだから、わからない。でも、後悔はしてない。
その子は俺と同じような境遇の女の子だった。だから、一番仲が良かった。
そんな子を助けられていたのなら、最高に正しい選択だったと思うよ。あの場で彼女の方が居なくなってたら、俺はもう立ち直れなくなってただろうから。
なんて理不尽なんだ、とは思ったけど、死んじゃったんだから仕方がない。休暇だと思えばいい。この異世界転生は休憩だ。
目が覚めると俺は自室にいた。もちろん異世界のね。
部屋は王城の中なだけあって、結構立派にできている。ピカピカしてるよ。前世の俺とは大違いだ。
ふと夢に見たのは、俺の前世での最期の記憶だった。今でも鮮明に思い出せる。
俺の(第一の)人生は二十二歳で幕を閉じたのだ。そして今に至る。神様に会うことも、諸連絡が来ることもなく異世界に転生しちゃったもんだから、本当に何の準備できないまま王様の子供として生まれちゃったよ。超理不尽だと思わない?
もう、これダメなやつだよ。前世の知識なんてあっても意味ないやつだよこれ。正確には知識なんてものはなく、ただ記憶が残ってるだけってのが正しいしね。勉強なんてロクにやってきてない俺の記憶なんて魔法ありのファンタジーな異世界では役に立たないだろうし、事実今までそうだった。
俺がレノ・ティーベルとして生まれ変わってから、七年が経った。七歳になっていた。
この世界の言語は日本語ではなかったようだ。俺が理解できたのは、音声言語が同じだったかららしい。
いや、そうじゃなくてね! 俺が言いたいのはね。この世界、魔法なんて言うとんでも超能力が存在するじゃなかっ! ってことだ。
確信したよ。この世界では、俺はただの子供。前世とか意味ないのだと。
この日、俺はこの世界でごく普通にごく普通の子供として生きていくと決めた。
あれ? 王族だって? いいんだよ、そんなの気にしちゃ駄目だ。
……いやでも、一回は使ってみたいよね、魔法。
ということで、俺はニーナ・ティーベルこと、お母様に相談することにした。ちなみに、『お母様』と読んでいるのは自主的なものである。なんか王様の家族って思うと敬語にもなっちゃうんだよね、俺も一応家族なのに。一応家族なのに!
でも……そんな俺でも、ちゃんと愛情を持って育ててくれるあたり、前世とは飛び抜けて愛されてると思う。
窓から見る景色が最高な立派なお城の部屋の一つで、お母様はいつものように椅子に腰掛けて紅茶をすすっていた。
「あの、お母様。少しいいですか?」
いい子ぶってるって? いいんだよ、俺はもともと下からの人間だからね。
「あらレノ、どうしたの?」
「僕、魔法使ってみたいです」
この世界での『魔法』ってのが、どういう位置づけをされているのかわからないので少し不安はある。が、俺は体は好奇心で動いているらしかった。何の躊躇もなく声になった。
お母様は、一瞬固まってから、
「え? ええっ? レノ、今なんて言ったの??」
あれ? やっぱり何かまずかったの? 俺何かやらかしちゃったの? いやでも、正直が一番だよね。前世のように嫌われたくはないからね、正直に言うべきだよね。怒られるかな……?
俺は恐る恐るといった感じで答える。
「魔法、使って見たいです」
「そうよね! やっぱりそうよね! あんた、聞いた? うちの子が今とんでもないこと言ったわよ!」
喜んでいるのか興奮しているのか、お母様はぴょんぴょん跳ねていた。うさぎみたいに。
そして、護衛が一切居ないがすぐ横で座っていた国王様ことグレウス・ティーベルに投げかける。てか一国の王様に対して『あんた』って……、大丈夫なの?
「いいじゃないか。俺は自由をモットーにしてるからね。レノがやりたいっていうなら、やらせてあげればいいよ」
さすが国王様だね。優しくて涙が溢れそうだ。
でも同時に、国王なのに自由がモットーってのは、この国が心配になる発言だったよ。それに国王様にしては自由すぎるとこの頃思ってたんだよ!
心の中で国王であるお父さんに突っ込んでいると、お母様は何やら別のことに食いついたようだった。
「そうじゃないわよ、おバカなの? この子はまだ七歳よ?」
「っは! な、なんてことだ!」
あ……お母様、『バカ』は丁寧語にしても結局は『馬鹿』だからね。相手、国王様だからね。
それより、なんか王様が国の一大事であるかのように驚いてる。勢いよく立ち上がる。
「そうよ。やっと気付いたようね。これは私の遺伝ね!」
「何を! 俺だって子供の頃は天才だったぞ!」
俺は小さく吐息を漏らした。
この二人はバカップルというやつだった。本当に仲がよろしい。……睨み合ってるけどね。
ていうか、国王様の子供の頃の情報とか要らないよ!
俺はお母様に味方することにした。
「お母様の遺伝ということでいいですが、僕が七歳だと何がおかしいのですか?」
「なっ!」
国王様が落ち込む。
この国まで落ち込みそうだよ、やめて!
「やっぱりレノもそう思うわよねー。よーしよーし、いい子いい子〜!」
俺はぎゅっと抱きしめられて、頭を強く撫でられる。……いや、別にこれを期待してたわけじゃないよ? 精神年齢二十九歳にして母親に甘えるとかないからね。これはきっと、お母様の愛情だよ。まあ、行きすぎてると思うこともあるけど、それに関しては『恵まれてる』ということで。
「おバカさんな王様とは違うのよ私はね!」
俺を解放すると、お母様はまた威張るように言った(国王様に対して)。
対して国王様は、ものすっごく落ち込んであるようだった。首をガクッと落としてしょぼんとしている。
なんか可哀想に見えてきたので、俺は彼に耳を貸すように言う。耳打ちする。
「お父様、これはあれです。ちょっと遅い反抗期というやつですよ」
「レノ……」
ちょっと無理があるね。でも、この世界に『ツンデレ』って言葉はない(と思う)からこう言うしかないんだ。
国王様がおとなしくなったところで、お母様が口を開いた。この状況……、俺ってどんな子供だよ!
「あらあら〜、聞こえてるわよー?」
ギクッ。と国王様と俺の二人は膠着した。
「つまりレノは、私がいわゆる『ツンデレ』なんじゃないか、って思ってるのね?」
この世界にも『ツンデレ』って言葉があったんだ。すごい発見をしたよお母様!
っと、それよりも、お母様が悪魔のような笑顔で俺を見つめてくる。
「その通りよ! さすがに、このにぶちん男と違ってしっかりしてるわね。きっと将来有望だわ!」
あれ、否定しないんだ。さすがラブラブ夫婦。フューフュー。
しかし、それを聞いた国王様はまたショックを受けているようだった。今にでも逃げたい気持ちだろう。しかし、子を持つ親の威厳なのか、平然を保っているように直立していた。
バレバレですけどね国王様。
しかし、今の話からすると、お母様が最初に告白したのだろうか? またいつか聞いてみたい。さすがに七歳児のする質問じゃないしね。
お母様は二人の様子を伺う俺に、
「さて、話を戻すわね。レノは『魔法』のことについてどこまで知ってるの? 私たちは教えてないはずだから、どこかで調べたのよね?」
「はい。王城にある図書館で調べました。……あの、駄目だったでしょうか」
許可とか得てなかったからなぁ。
俺の問いに、お母様は口をあんぐりさせた。
「いいえ、私は感激していろのよ。自分で調べるなんて、すごいじゃない!」
ふぅ。それが聞けて僕ってば一安心。
「ありがとうございます。……そこで、魔法の存在は知ったのですが、どうやって使用するのかまでは……」
「それはそうね。魔法は本では教えられないものがあるから」
やっぱりこの世界では魔法は一般的なものらしい。その証拠に、お母様でも結構知っている感じだ。前世の日本で表すなら、スマホの使い方みたいなものなのだろう。いいすぎかな?
お母様は、でも──と後に続ける。
「ごめんなさい。実はあなたに魔法について教えなかったのには理由があるの」
「ニーナ……」
あれ? 国王様ことお父様まで気を遣ってる。重要な何かがあるのかな?
俺はお母様と目を合わせる。真剣な瞳が返ってくる。
「魔法っていうのは、魔力って言う魔法を使うのにどうしても必要なエネルギーがいるのよ」
だいたい予想はしてた。そりゃバンバン魔法が打てたら国が成り立たないよね。っていうか、その前にこの世界がめちゃくちゃになる想像ができちゃう俺って怖い。
「その魔力は、生まれた瞬間に決まるの」
「遺伝とかでですか?」
「いいえ。そんな例は聞いたことないわね。いわゆる『運』みたいなものみたいなの」
するとまた、お母様は俺をぎゅーっと抱きしめてくる。正直、苦しい。
え? まさか、俺って……? いや、希望は捨てないよ! いやだって、異世界に転生した主人公ってのは、チート能力があるって相場が決まってるでしょっ!
「ごめんね。レノちゃんには、その……魔力が、十人並みより少ないの」
「え……その、でも。少しくらいなら……」
初めてちゃん付けされたけど、無視する。
お母様に暗い顔をさせてまで魔法が使いたかったんじゃないのに、俺は何を訊いてるんだろう。俺が本当に言いたかったのは別にあったのに……。
「ごめんね」
「……こちらこそ、ごめんなさい。もう、いいですから」
「っでも……」
これ以上放っておくと、『ごめんね』を連呼されそうな気がした。
ちょっと七歳の子どもっぽくないかもしれないけども、俺は本当に言いたかったことを言葉にする。今まで言えなかったのは精神年齢的に恥ずかしいと思っていたからだ。
でも、こんなされたら、『言う』って選択肢以外ないよね。
「ありがとう、俺を産んでくれて。……実を言うとね、ちょっとそんな感じはしたんだ」
「「え?」」
お母さんとお父さんは、そんな語音を発した。
俺がいきなり口調を変えたことに驚いているのだろうか。それとも、七歳の子供のあり得ないような一言にびっくりしているのだろうか。俺は後者だと信じてるよ。
「いつもお母さんもお父さんも優しいから、甘えてたのかも」
言うと、お母様が少し間を開けて、
「……っ! ……ねえあんた、これ私の遺伝よね?」
「何を言っているんだい。私の血に決まってるじゃないかっ」
「いいえ、この際どっちでもいいわ。……うちの子、今『俺』って言ったわよ!?」
あ、あれ? 俺の信用はどこに行ったの?? 驚いて他のそっちなのっ?
「そうだな! 殿下に昇格したじゃないか!」
俺にはその基準が理解できないよ!?
お母さんがそっと俺を解放してくれる。
「いいわ。魔法学園に通わせてあげる!」
「え? で、ですが……」
お母さんの急な手のひら返しに、俺はほぼ無意識で口調を戻す。俺なりの戸惑い方だった。
だって、今お母さんなんて言ったよ? 魔法学園? 存在そのものを初めて知ったんだけども!
お母さんはまだ成長期で体の小さな俺に目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「あらあら、私たち家族じゃない?? 前から思っていたのだけど、家族の仲で敬語はないんじゃないかしら?」
今言うべきだと思ったのだろうか。俺の敬語が撃ち抜かれる。
バンッ! と胸のあたりに命中。……俺にはそんなナレーションが想像できる。
「は…………う、うん」
「よろしい。では、私が許可するわ!」
「ちょっ、ニーナ? 俺まだ何も言ってないんだけど?」
王様が割り込んできた。確かに、今王様よりもお母様……じゃなくお母さんの方が権限持ってそうだったよ。この国が心配だ。
お母さんは国王様(いいや、この場合ただのお父さん)を睨むように直立する。
「何言ってるの? 王たるもの、魔法くらい覚えておかないと駄目でしょ?」
駄目なのっ?
そんな俺の疑問に、答えてくれたのは責められていた国王様もといお父さんだった。と思ったが、頼りない言葉が返ってくる。
「た、確かに俺も教えられたような……」
「レノちゃんも興味を持ってくれたことだし、覚えておいて損はないわ!」
「だが、あの学校は多少魔法が使えないと入学できないんじゃないか?」
「問題ないわよ」
お母さんは俺と目線を合わせると、にこりと微笑んだ。次いで、今度は国王様の方へ目線を向ける。
え? まさかっ? あれですか? 国王の権利というやつですか?
変な方向に思考が傾く俺だが、それはやめてもらいってのが俺の願いです。そんなの、転生とかじゃなくて普通にずるいじゃん。恨み買いそうだよっ?
「ねえ。国王様、問題ないはず、よね??」
その国王様を舐めるように見るお母さん。
怖いよ! すごいけど、もうそれすら飛び越えて、恐怖の笑みだよお母さん!
でもさすがに、そんなずるいことをさせるわけにもいかないので、
「ま、待ってお母さん! それはちょっとまずいんじゃ──」
「レノちゃんは少し待っててくれる?」
「……はい」
どこの世界でもお母さんの方が権力があるんだ、と俺は思った。
王様が怯んでるよ。
「はい。わかりました。なんとかします」
こういうのは初めてじゃなかったけど、王様大丈夫?
いやそれよりもこの国本当にやばくね? というのが、今の俺の感想である。
「だそうよ、レノちゃん! これで大丈夫よ!」
「で、でも。お母さん、それはずるいと思うんだ」
「なぁに、国王ができないことなんてないのよ? レノちゃんのお母さんとお父さんはすごいのよ?」
お母さんが自分たちの価値観を語っていた。俺は無言無表情でそれを聞くことにした。
いや、それくらい知ってるよ。七歳児舐めるなよ。
「でも、それじゃ国民の反感を買わない?」
「あら、私たちの心配をしてくれるの?」
違うよ! 俺自身の心配! いじめって、子供の方が酷いからね!
すると、国王様が手を顎に当てて、
「やっぱりレノの言う通りじゃないか? それで入学できても、酷い目にあうのはレノの方なんじゃないか?」
そうそう! と、俺は心の底から国王様にエールを送る。
「その時は、あんたの権力で全員ぶちころがすわ」
「やめて!」
「冗談よ。さすがは私たちの子供だわ!」
「あ、れ?」
これからお母さんの冗談には一層気をつけよう、と俺は誓うのだった。
「あ、いやそうじゃなくてね、お母さん!」
「あら、やっぱりレノちゃんには何か考えがあるようね」
「あれ? わかってたの?」
別に驚いている様子もなく、七歳児の俺を見透かすお母さん。
心を読む魔法でもあるのだろうか……? いやまさかね。
「レノちゃんは私たちの子供よ?」
何言ってるの? って感じで即答された。
俺ってもしかして、すごい愛されちゃってる??
わーい! と素直に喜びたいところだけど、さっきみたいに度が過ぎてるところを見ちゃうと危ないからね。自重してもらわないと。
あ、いやでも、愛してくれていいんだからねっ! ツンデレとかじゃないんだからねっ!
気を取り直そう。ちゃんと僕には天才的な考えがあるんだからね!
「なんだレノ、考えがあるのか?」
「ちょっと、今私が感動的なこと言ったのに、ぶち壊さないでくれない?」
「くすくす……大丈夫だよ、お母さん。ありがとう、俺をこんなに大事に育ててくれて」
七歳児だったということを忘れて、つい偉そうなこと言っちゃった。でも、本心なのは確かだ。前世のあのクソ日本に比べれば、この世界はマシ……いや、完璧すぎて拍手できるね!
実に七歳の子供らしくない台詞に、お母さんは声を上げて大きく笑って見せた。
「あっはははは! 私たちは一体何を心配してたのかしらねっ?」
よかった。お母さんの自己嫌悪みたいなのはどこかへ行ってしまったようだ。
「くっ、うぉおおおおおおおレノォォォ!」
何事かと振り向いてみると、そこには、だらしなく涙を流している国王様の姿があった。
「何泣いてるのよ、別にあんたには言ってなかったでしょ?」
「ひどいっ! ……ぐすん」
何このバカップル。前世で独身だった俺には、見せつけられてるようにしか思えないんだけど!
でもね。俺も叫びたくなっちゃうよ! すごく愛されちゃってるよ僕ぅううう!
「それで、魔法学園のことなんだけど……」
この変な空気を完全に無視して、俺は二人に考えを伝えた。
まず、何も王権を使って入学する必要はない。と言うか、俺が悪い意味で注目されるからやめてほしい。なので、俺はこう考えた。
別に国王なら、学園の制度をいじればいいんじゃね? ってね。
俺の予想通り、魔法学園には筆記試験がなく、全て魔法の優劣だけで入試を行なっていたらしい。それでは、魔法が使えない者は最初から最後まで魔法が使えないということになってしまう。そこで俺が提案したのは、魔法試験だけじゃなく、筆記試験を追加すればいい、ということだ。
一応、魔法が使えなくてもいける学校(いわゆる、普通科の学校)もあるそうで、それと区別するためなのだそうだが、それじゃ『区別』じゃなく『差別』だと思う。
……いやだって、俺魔法使えないしね。
「「あっ」」
ほとんど俺の一方的な説明が終わると、二人は納得したように声を上げた。
というか俺には、今まで筆記試験がなかったのが不思議に思えてならない。
「でもいいの? それだと、少なくとも魔法の勉強はしないとならないのよ?」
「?? それくらいはしないとね、王族として」
お母さんは、どれだけチートな入学をさせたいんだよ! それじゃ俺の格好がつかないじゃないか!
例えば、日本のアニメやラノベのような、甘い学園生活が送れなくなってしまうじゃないか! そんなの嫌だよ! まあ、今のは魔法を習うついで、だけどね。別に期待なんてしてないよ? 前世ではモテてなかったし、期待なんかしてないよ全然。
お母さんは手を頬に当ててみせた。
「私、今日何回感動したかしら!?」
「わかった。じゃあ、レノが入学する頃にはその制度を導入できるよう準備しておくよ」
お母さんはまた上の空。国王様は、俺なんかの意見で本当に今の制度を撃ち抜いてくれるらしい。
でも、学園に入学できるのは十一歳かららしい。ちなみに、この世界の成人は十五歳。四年間の学校だから、ちょうど卒業と同時に盛大な成人式を行うらしい。
まあ、全然後の話なんだけどね。まだ入学すらできる歳じゃないし。