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「せーじ君もあんずちゃんも同じ高校に通っているのよね?」
兄の蓮から聞いていたのか、百花から問いかけられた。
「そうですよ、あの川沿いの市立高校です。あんずと同じ高校とか、癪に触るんですけどバイトOKのとこは近くだとそこしかなかったんで。」
「癪に触って悪かったわね。私も同じ理由よ。」
また言い争いそうな2人を見ながら持っていたスプーンをシチュー皿に下ろすと、蓮は小さくため息をついた。
「2人ともにいつも言ってるけど、バイトばっかりしないで学校の事を最優先にしないと駄目だぞ。」
あんずと誠司が高校生になってからの蓮の悩みは、2人がアルバイトに精を出しすぎている事だった。
高校生になったからという強引な理由で、
2人は自分の身の回りの費用を自分自身で調達していた。
そのために学校以外の殆んどの時間を、アルバイトに費やしていた。
こうして揃って夕食をとるのも、本当に久しぶりなほどにーーー
「別に好きでしてるだけだよ。成績だって問題ないし。あんずは知らないけど。」
「私も部活してる様な感覚でバイトしてるだけだよ。私も成績は悪くないんだからね、誠司!」
理由について、いつも2人はこう言いながら本心は違うことを蓮は分かっている。
極力、自分に負担や迷惑をかけないようにしているつもりなのだろう。
それが蓮にとっては悲しい事だということを、2人は分かっていない。
今しかない高校生の時を自由に過ごして欲しい。そんな楽しい毎日を過ごすべきはずの2人に気を遣わせて、頼ってもらえない事がどんなに悲しい事かーーー
夕食もあらかた終わり、蓮がデザートを用意しにキッチンへと立つのを見計らってか百花が切り出した。
「………2人共、割りのいいアルバイトをする気はないかしら?」
唐突に、そんな提案を持ちかけられる。
「何のアルバイトですか?」
怪訝な顔で誠司が答える。
「今はまだ秘密ね。あと…蓮さんにも秘密にしてね。興味があったらでいいのよ。火曜日の夜にでもうちに来て欲しいの。」
「「………。」」
あんずと誠司は、互いに顔を見合わせた。
何の意図があるのか
唐突に何を言い出すのか
それに何故蓮には秘密なのか
「気乗りしなかったらいいのよ。」
にこりと微笑むこの女性の心理を、2人は図りかねていた。
自分が、あんずや誠司から歓迎されてない事に気付かないのだろうか?
「喜んで引き受けますよ。」
「!?」
あっさりと承諾した誠司に、あんずはただただ驚く。
「本当に?嬉しいわ。時間は火曜日の18時ぐらいでいいかしら、2人共学校があるものね。あ、そうそう。我が家の場所だけど、」
「知ってますよ。図書館の近くの大きな日本家屋のお家ですよね?火曜日の18時に伺います。」
挑むような誠司と、まだ困惑気味のあんずをよそに話はまとまった。
「ありがとう!じゃあ、お待ちしてます。」
そう言って微笑んだ百花は、
どことなく綺麗な花特有の毒性を感じさせた気がした。




