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もう深夜になろうかという頃、
こつんっと、ベランダ側の窓が叩かれた。
「起きてるか?」
「安眠妨害よ、ばか」
安眠妨害なんて嘘だった。
いつもならバイトのある日はくたくたですぐに寝付けるのに、今日は眠れなかったのだ。
お昼の学校の食堂での綾乃とのやり取りが、
心に引っかかって。
それは誠司も同じなんだと思う。
誠司もバイトして帰ってきたくせに、こんな時間まで眠れないのだから。
「もう明後日だろ。あの女がくるのは。」
「…そうね。」
兄の蓮の様子はいつもと変わらず。おっとり優しいまま。特に何を言うわけでもなく、ただ会ってみてくれればいいからと言うだけ。
「…本当に悪い奴なのかな?お兄ちゃんを騙すような人だった、どうしよう。」
「その時は…絶対にそんな事はさせない。」
夏になるにつれて夜は短くなっているはずなのに、
眠れない2人にとってはずっと夜が続くような錯覚すらおこさせたーーー