ニーニャの手料理
今週分の更新です。
楽しんで頂けると幸いです。
宜しくお願いします。
※2/24 誤字修正
夕食の手伝いを申し出たニーニャであったが、その日に限って何故かドジっ娘属性を発動させ、色々なものを床にぶちまけていた。
特に多かったのが飲み物である。4〜5度ほどコーヒーを床にこぼしてしまい、リビングにはコーヒーの香りが漂っている。
「ニーニャ……」
「……ごめん明人」
自分から手伝うと言ったニーニャは罰の悪い顔をしており、明人もどうしたもの方と頭を抱えていた。
「まっ、仕方ないさ! 頭でわかっているつもりでもやっぱりどこかユグドに帰ることに動揺してるんだよ」
「そうね。でも……我ながらこの状況は流石に無いと思うわ……」
コーヒーをこぼし、お茶をこぼし、挙句サラダをぶちまける。年末の大掃除をしたばかりのリビングであったが、ニーニャたちが帰った後にもう一度掃除をする必要があると明人も諦めていた。
そんな状態の中なんとか夕食の準備を終えた明人とニーニャは、リビングに戻り席に着いた。
「明人さん、ニーニャ様がすみませんでした」
席に着こうとするとレフィアが明人に謝罪するが、明人は気にしていないと伝え、自席に座る。
「緑先生と師匠はまだ終わらないらしいわ」
「盛大に寝坊してたしね……それじゃあ僕たちだけでニーニャとレフィアさんの送別会を始めようか!」
明人が声を上げると各々が飲みものを手に持ちーー。
「それじゃあ、ニーニャ、少し早いけど気をつけて行ってらっしゃい!」
そう言って明人は手に持った飲み物のグラスを少し上に掲げる。
それに合わせてほかのみんなも同じようにグラスを掲げる。
「みんな、ありがとう! すぐに戻ってくるから待ってなさい!」
ニーニャと明人が作った料理はお好み焼きであった。
テーブルの中心にホットプレートを置き、明人がタネをかき混ぜ乗せていく。
「今日で当分明人の料理は食べ納めねー」
「しっかり味を覚えて帰ってね」
「だよなー。海外でお好み焼きなんてそうそう食べられないだろうからなー」
明人の声に健人は同意する。
ニーニャはユグドに帰るのだが、当然事情を知らない健人は母国に帰ると思っているし、周りのみんなもそれに合わせるように話は付いていた。
「そうだよ、食べて食べて!」
「ええ、だけど、私の料理を食べれるのも当分はないんだから! 明人! 私にも焼かせて!」
「わかったよ」
明人がタネのボールを渡そうとするが、ニーニャはそっちじゃないといい、逆の手に持っているお玉を渡すよう明人に伝えた。
「タネはどうするんだよ」
「さっき明人がリビングで話している間に、私がオリジナルのタネを作ったのよ!」
「あっ、そうなんだ。だったらお玉だけでいいね」
明人がお玉を渡すと、瑞波が明人の肩を小突き、耳を貸すよう指示を出す。
「どうしたんだよ、瑞波」
「いや、なんかこのパターンーーゲテモノが焼かれないかって不安なんだけど」
「あぁ、それは大丈夫だよ。ニーニャだって色々料理について勉強したんだから、変なものは出てこないよ」
9ヶ月の歳月をニーニャと過ごし、ニーニャに料理を教えた明人からすると、ある意味ニーニャの卒業試験のようにも思えたんだろう。自然とニーニャを温かい目で見守っている。
ホットプレートに流されたタネは普通のお好み焼きの色をしていた。目に見える具材もお好み焼きらしい具材の数々である。
記事の片面がある程度固まったタイミングでニーニャはフライ返しを2本差し込み、お好み焼きをひっくり返す。すると、綺麗な焼き色のついた表面が見え、ダシのいい香りが漂ってくる。
それから数分たったころ、ニーニャは再度お好み焼きをひっくり返す。その後少し切れ目を入れて中の焼き具合を確認し、問題なさそうだったのでソースを表面に塗り、マヨネーズをかけ、青のりと鰹節を振りまいた。
「さっ! 完成よ!」
ヘラで切り分けられたお好み焼きをそれぞれが口に入れる。外側のサクッとした食感、中のふわふわした食感。先ほどまで食べていたお好み焼きとは違う食感に瑞波や健人は驚いていた。
「すっごく美味しいんだけど! なんなのよこれ」
「あぁ、俺らがお好み焼きを作ってもこうはならないぞ」
「いや、兄さんはそもそもほとんど料理しないでしょ」
「何言ってんだ! よくやってるだろ!」
「お湯を入れて3分待つだけのものは料理って言わない」
瑞波と健人の反応を見てニーニャは満足そうだ。明人と春奈、レフィアはこのお好み焼きを綺麗に作れたことにニーニャの成長を感じることができたから、咀嚼したのち何度か頷いた。
「なっ! ゲテモノは出てこなかっただろ」
「そうね。疑ってごめんねニーニャちゃん!」
何を謝られたのかわからないニーニャは首を傾げている。
「で、このタネってどうやって作ったの?」
「簡単よ、繋ぎに卵を使わず、自然薯を使ったのよ。それと中には立方体に切った自然薯も入れてるわ」
「へー、自然薯を使うとこんな風な食感になるのね。今度家でやってみるわ!」
そんな会話をしながら夕食は進みーー。
「さっ、それじゃあ食後のデザートにしましょうか!」
そう言ってニーニャはクリームブリュレを配膳し、その後それぞれの飲みものを配膳した。
「もしかして……これも?」
「当然よ!」
「ニーニャ様、こんなものまで……」
レフィアに内緒で作れるようになりたいというニーニャの願いを叶え、明人が時間を見て作りかたを教えたため、レフィアも驚きの声を上げている。
クリームブリュレを全て食べ終えたレフィアは飲み物を手に取る。その時、ニーニャがレフィアの隣に立ちーー。
「おいしかった? レフィア」
「ええ、すごく美味しかったです」
そう言ってレフィアは飲み物に口をつけ二口ほど飲み込んだくらいでーー。
ゴホゴホーー。
「ニーニャ様! これは!」
「ごめんね、レフィア。ここ最近のあなたを見ていたら、ここに残って欲しいと思ったよの。だから……これは私の我儘」
「そんな、ニーニャ様!」
その言葉を境に、レフィアは机の上にうっつぷした。
瑞波と健人は何が起こったのか全く理解できていない。明人と春奈は神妙な面持ちでその様子を見ていた。
「ねぇ、ニーニャ。その飲み物って」
「そうよ、御察しの通り、コーヒーよ」
「やっぱりね。じゃあ、もしかしてさっきまでのドジ行為も……」
「ごめんなさい。この計画のために必要だったの」
「せめて一言相談して欲しかったよ」
ニーニャがいつもと違う行動に出ていたのでなにかがあるとは感じていた明人であったが、ここまでは予想ができていなかった。
「本当にごめん。ごめんついでに一つ頼めないかしら」
「さっきの会話から予想はうつくけど……いいよ」
「ありがとう。健人、レフィアをよろしくね!」
「ん? 師匠どういうことですか!?」
未だに訳がわからないと首をかしげる健人を横目に瑞波は肩をすくめている。
「兄さんは本当にダメダメね……」
「???」
「私のこの言葉を覚えておいてくれたらいいわ!」
「明人、春奈もよろしくね!」
「わかったよ」
「こりゃー、起きたらレフィアちゃんに殺されちゃうかもね……」
春奈はブルリと身震いし、ニーニャも同じように身震いした。
「それは私も同じよ……次に戻ってきたその時に……」
想像しただけでナイーブになりかけているニーニャであったが、もう後には引けない。
「さて、春奈、瑞波、ちょっと手伝ってくれる? レフィアを部屋に連れて行かないと」
「仕方ないわね」
「ほんと、ニーニャちゃんも勝手が過ぎるわね」
リビングには健人と明人の2人が残った。
「明人、さっきの師匠の言葉だけど」
「そうだよ、ニーニャはレフィアを連れて帰らない気だ。だから、ニーニャが帰ったあとレフィアを支えてくれってことだよ」
「でも、後を追って帰ることもできるだろ。海外なんて」
「色々難しい事情があるんだよ」
「そっか。まっ、師匠に頼まれるまでもなく、俺はレフィアさんを支えるよ!」
その時の明人には健人の表情がどこか大人びていたように思えたのであった。
そんな会話が終わる頃にはニーニャたちもリビングに戻り、テーブルの上に残っているクリームブリュレをそれぞれが食べ終え、夕食の片付けを始めることとなった。




