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雪と会話とズボラ教師の部屋

今週分の更新です。

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

楽しんでいただけると幸いです。

よろしくお願いします。

暗い廊下を歩きながら体を震わせる。窓の外をみると町の光に照らされた白い雪が舞い踊っている。


「どうりで寒いわけね」


「あー、降ってきちゃったか」


明人とニーニャは階段を登り2階へと向かう。


「でも、よく話してくれたね。ニーニャだったら黙ってると思ったのに」


「最初は明人に危険が及ぶかもって考えたんだけど、そのあと見知った精霊の力を感じて大丈夫だと思ったのよ。それに、明人もいた方がいいと思うから」


「うん、ありがとう!」


明人の表情は嬉しそうであった。


「しっ、この先ね」


2階に上がったところで、2つの声が聞こえる。その内1つは明人がよく知る声であったことに驚きを隠せなかった。


「いくわよ、明人」


ニーニャが小声で明人に声をかけると、声のする方へと歩みを進める。明人は状況を飲み込めず歩みが遅れた。


「だれ?」


「ごめんなさい、緑先生。それに、お久しぶりです。師匠」


アゲハは口をぱくぱくと開閉したままニーニャの方を指差す。緑は額に手を当て首を左右に振った。


「まさかあなた達が自分からここに来るとは思ってなかったわ。ニーニャさんの後ろにいるのは森川くん?」


「はい……そうです……」


ニーニャの隣へと歩みを進めた明人は未だに状況が把握できていない。


「はぁ……ニーニャさん、これ、結構面倒な状況なのわかってる?」


緑は面倒臭そうな表情をして、ニーニャに問いかける。


「はい、その覚悟はできてます」


「はぁ、ならいいんだけど……はぁ、まっ、森川くんなら大丈夫かな」


明人以上に混乱しているであろうアゲハは緑とニーニャの2人の顔を何度も見直す。


「え? なんでニーニャと緑が? っていうか、やっぱりニーニャだった? その体は? なんでここにいるんだよ?」


もともと考え事をするのが苦手なタイプのエルフであったアゲハは一気に流れ込んできた情報を整理しきることが出来ず、その場で知恵熱を発症し目を回して倒れてしまった。


「アゲハ!」


「師匠!」


「もう、何が何だか……」


明人もアゲハと同じように情報を整理しきれなかったので、一旦考えることをやめた。どちらにせよニーニャと緑から説明があるとわかっていたからである。


「とりあえず、場所を移しましょうか。私の部屋に来てもらえる?」


緑はアゲハの体を担ぎ上げ、片手で携帯を操作する。緑の操作が終わると明人の携帯がバイブし携帯の画面をみると緑の家の住所が届いていた。


「迷ったらいけないし、その住所をマップで検索して来てくれればいいわ」


「ありがとうございます」


緑は1つ頷き、2階の窓から飛び出した。


「さて、私たちも行きましょう。道すがら簡単に状況を説明するわ」


「ありがとう。レフィアさんはどうする?」


ニーニャは少し考えたが、首を左右に振った。


「レフィアにはクリスマス会を楽しんで欲しいから、私と明人だけで行きましょう」


「りょーかい!」



緑の家に着くまでに明人はニーニャから一通りの状況説明を受けた。秋祭りの後に緑がエルフであることを知ったということ、緑と一緒にいたエルフがユグドでのニーニャの師匠であるということ。そして__。


「本当の姿?」


「えぇ、私とレフィアの本当の姿は今明人が目にしている姿とは異なるのよ」


「えっと、エルフだから人型なのは違いなんだよね?」


「どういうことよ」


「いや、なんていうか、宇宙人みたいな、形の定まらない凶暴な生物が人の皮を被ってるとかあるでしょ? そういうのじゃないんだよね?」


「明人って美味しそうよね。その腕とか足とか、首筋とか。それに美味しいものを食べているんだからきっとモツも美味しいわよね。瞳もオパールのように綺麗なのだから、きっと上品な味わいで、そうそう、脳も……」


明人はその場で硬直し、踵を返して走り出そうとした。


「冗談よ」


ニーニャは明人が走り出す前に、服の裾を掴み抑制する。


「悪い冗談はやめてよ、ニーニャ」


「ごめんごめん、ちょっと失礼な質問だったから、軽い仕返しのつもりだったのよ」


焦った明人を見たニーニャはいたずらっ子のように歯を見せて笑った。


「まぁ、そもそも人を害すような存在だったら今頃僕は生きていないよね」


「そうかもね。で、話を戻すと、姿が違うって言ったけど、あくまで年相応の見た目だったってだけよ」


「年相応?」


「そうよ。今の私の姿は私が50歳の頃の姿なのよ」


「いやいや、それでも幼すぎない?」


「エルフって50歳までが子供でこの姿、100歳になれば成人して、大体瑞波くらいの体格になるのよ。そのあとは基本的に体の成長が止まって、精神だけが成長していくのよ」


エルフの生態についてニーニャから何度も聞いたことはあるが、年齢について聞くのは初めてであった。というのも、女性に年齢のことを聞くのはどうだろうと思った明人は年齢や容姿について聞くことができなかったのである。


「じゃあ、本来のニーニャって……」


「ええ、こんな子供の体格じゃないわよ」


今でも十分に愛らしいニーニャが大人になった姿を想像した明人はその場で悶えた。


「それにしても、どうして今のニーニャの姿に?」


「精霊の世道のせいね」


「それってニーニャが転世するために通ったって言う道?」


「そうよ。そこでこっちの世界の言葉を話せるようにする代わりに私は体格を、レフィアは若さを担保にさせられたみたいなの」


「ってことはレフィアさんはもっと……」


「そうね、レフィアはもっと若いわよ。ユグドでは今の私くらいの体格だったわ」


「そうなんだ……」


ニーニャやレフィアにとっては迷惑な話である。だが、明人は不謹慎にも心が高鳴っていた。それを隠そうと表情だけは落ち込んだような表情をしたが。


「なによ! もっといい反応してくれると思ったのに!」


「え?」


「あのね、明人が異世界スキーなのは周知の事実でしょ! 私がこの話をしたってことは、もう明人が変なテンションで絡んできても大丈夫って自分の中で整理がついたから話したのよ!」


そう言うとニーニャはため息を1つつき、鈍感と小声で呟いた。


「だから! もっといい反応してくれていいのよ!」


明人より歩みを早め、街灯の下で明人の方に向き直り、ニーニャは笑顔でそう言った。


「ごめん、ニーニャ、僕、遠慮してたよ! 今の話すごく面白かった! 今の話だけで想像が広がるよ! 早くこの想像を紙に落とし込みたい!」


「それでこそ明人よ! でも、それはこれからの話が終わってからにしましょ」


目の前には一度春奈の車で来たことのある緑の住んでいるマンションが立っていた。


玄関に入るとインターホンがあり、部屋番号を入力するし呼び出しボタンを抑える。しばらくすると、自動ロックが解除され自動ドアが開いたので、中に入り、緑の部屋を目指した。

緑の部屋の前に着くと、部屋についているインターホンを押すと玄関から緑が顔を出す。


「いらっしゃい」


「「お邪魔します」」


明人とニーニャは靴を脱ぎ、緑の部屋に入る。緑は1DKの部屋に住んでいた。廊下を抜けて扉を開けると、部屋は燦々たる状況であった。洗濯物は散らかっており、炊事場も洗い物がたまっており、空のペットボトルが床に散らばっていた。


「うわぁ……」

明人はあまりの状況に声が漏れてしまった。


「あぁ、ごめんなさい、ちょっと散らかってるけど」


「これのどこがちょっとなのよ!!」

ニーニャはあまりの状況に自然と緑の言葉にツッコミを入れていた。


「明人、これ、片付けましょ」


「そうだね……先生、この部屋片付けてもいいですか?」


「え!!片付けてくれるの!」


「はい、このままじゃ座る場所もないので……」


「ありがとう! 助かるわ! あっ、アゲハはまだ起きないけど、片付けが終わるまで起きたとしても気絶させとくから大丈夫よ!」


なにが 大丈夫なのだろうと思った明人とニーニャはとりあえず部屋の掃除を始めた。女性の部屋ということで洗濯物はニーニャが、炊事場の洗い物を明人が担当した。ペットボトルなどはニーニャが洗濯機を回している間にラベルとキャップを分け、ゴミ袋にまとめる。


幸い緑の生活スペースである部屋は本とPCしかなく、その周りは一切のゴミや洗濯物が存在していなかった。ただし、ベッド以外は本棚にはいらなくなった本が平積みされていたため、世界つスペースで座れるのは1人が限界であった。


「クリスマスの真っ只中になにやってるんだろう……」


「仕方ないわよ、状況が状況なんだから……はぁ」


そうして小一時間ほどするとある程度洗い物も終わり、ペットボトルの仕分けも終わっていた。


「あとは洗濯物だけね」


「それはニーニャに任せるよ」


「えぇ、任せておいて」


1回目の洗濯が終わり部屋の中のカーテンレールなどにハンガーをかけて洗濯物を干していく。部屋干しにするとニオイが気になるが、外は雪が降っているので外に干すことはできない。

幸いなことに、香る柔軟剤が置いてあったので、それを使うことで部屋干しの匂いをごまかすことができる。


「あと何回か洗濯機を回す必要があるけど、とりあえず準備はできたわよ」


洗濯物を干し終えたニーニャはクローゼットから取り出されたクッションを敷いて床に座った。

明人は、緑の許可を取り冷蔵庫の中を確認して、中からお茶を取り出し、レンジで温めた。


「それじゃあ、アゲハを起こしましょうか」


そう言って緑は手のひらに精霊の力を集め、アゲハの額に手を当てた。


「ん……うん……ここは?」


「私の部屋よ」


目を開けたアゲハは上半身を起こし、キョロキョロと周りを見回す。


「嘘ね、ミドリの部屋がこんなに綺麗なわけないわ」


「あんたね、今度は永眠したいの?」


「先生、話が進まないからその辺で」

手のひらに精霊の力を集めていた緑を明人が抑制し話を進める。


「それじゃあ、説明を始めましょうか」


こうして緑とアゲハとニーニャと明人の話し合いが始まったのである。

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