【IF】新年、初夢、初日の出
新年初の更新です。
楽しんでいただけると幸いです。
本年も今まで通りのペースで書いて行きます! どうぞよろしくお願いします。
新年ということもあり、ちなんだ内容を書きたいと思い書いたIFのお話です。
今後の本編とはなんら関係ございませんので、読み飛ばしていただいても問題ありません。
よろしくお願いします。
空は暗く、冷たい風が頰を撫でる。吐く息は白く両手にカイロを握っていなければその場から直ぐさま逃げ出したいほどの寒さである。
「ねぇ、明人……こんなに寒いなんて聞いてないんだけど……」
「それは、僕もだよ……春奈さんが急に新年を山頂で迎えてそのまま朝日みるなんて言い出すから……」
「いやー、せっかくニーニャちゃんやレフィアちゃんが来て初めての新年なんだから、何か特別なことやりたいじゃない!!」
春奈はガタガタと震えながら毛布に包まっている。
「春奈さん、そんなに震えるなら車か何か用意してくださいよ」
「明人、山頂に車は持ってこれないのよ」
「ですよねー」
「ニーニャ様、春奈様、明人さん、準備できましたよ!」
少し離れたところからレフィアが声をかけてきた。レフィアの後ろには煌々と燃え上がる炎が眼に映る。
「さすがレフィア! 直ぐ行くわ!」
ニーニャは直ぐ様レフィアの近くに駆け寄った。
「さっすがレフィアちゃん! 直ぐ行くわ!」
春奈も毛布を巻きつけたままレフィアの近くに駆け寄ろうとするが、それは明人に阻まれた。
「春奈さん、毛布は置いておきましょう」
「なんで?」
「火がもえうつるかもしれないでしょ」
明人から注意を受けた春奈は渋々毛布を明人に手渡し、焚き火の近くへと駆け寄った。明人はその毛布を綺麗にたたみ、リュックサックの中にしまってから焚き火の近くへと向かった。
「ほら、明人!」
ニーニャから差し出されたのはレフィアが作ってくれたホットレモンである。
「レフィアさんは?」
「あそこ」
ホットレモンを片手にニーニャの指差した方に目を向けると、リュックからテント道具を一式取り出していた。レフィアはテントセットと人数分の寝袋、その他朝食用の食材や簡易調理器具などの道具をリュックとクーラーボックスに詰め山頂まで運んできたのである。
「ちょっと設営手伝ってくるよ」
ホットレモンを春奈の近くに置き、明人はテントの設営を手伝いに向かった。ニーニャもホットレモンを一気に飲み干し、少しやけどした舌を冷たい風に当てながらテントの設営に向かった。
「レフィア、私も手伝うわ」
「ありがとうございます。ニーニャ様」
焚き火から少し離れたところにテントを2つ設営し、寝袋にくるまりながら頭だけをテントの入り口から出した4人の芋虫がは夜空を覆う満点の星々をぼーっと眺めている。
「この辺りって星がよく見えるのね」
「そうだね。明かりもほとんどないからね」
「ふーん……」
明人の回答に相槌を打ったニーニャはそっと目だけをレフィアの方に向ける。
「レフィアも同じこと考えてたでしょ」
「そうですね。おそらくニーニャ様と同じことを考えていたんだと思います」
レフィアは体を横に倒し、体ごとニーニャの寝ている方向に視線を向ける。それに合わせてニーニャも右肩が下になるように体を横に向ける。
「せーので答え合わせしよっか」
「はい」
「せーの!」
「ユグドの星空に似てるわよね」
「ユグドの星空に似ていますよね」
2人が同じことを考えていたのがおかしかったのか、数秒の沈黙の後、レフィアの口から「ふふっ」という笑い声が漏れた。
「レフィアが声を出して笑うなんて珍しいわね」
「そうですね。しかし、なんだか嬉しくなってしまいまして」
「ん?」
「ニーニャ様と同じことを考えていたとわかったのですから」
「あぁ、そういうことね」
「はい、しかし、星空は世界が変わろうと似たような星空なんですね」
「そう……みたいね……ふわぁ」
「そろそろ眠くなってきましたか?」
「うん……」
「ニーニャちゃん、あと5分だけ我慢して!」
ニーニャとレフィアの会話が聞こえた春奈は、直ぐ様ニーニャが寝ないように口を挟んだ。
「わかったわぁ……ふあああ」
それから数分が立ち、いよいよ新年まであと10秒を切った。
「9、8、7、6、5、4、3、2、1……あけましておめでとう! 今年もよろしくね!」
「あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」
「あけましておめでとうございます。今年も何卒宜しくお願い致します」
「あけましておめでとう! 今年もよろしく!」
1つの年が終わり、また新たな年を迎えた。
そうして4人は挨拶を終え、直ぐ様夢の中にダイブした。
■
それから4時間ほど経つと、あらかじめセットしていた春奈の携帯のアラームがけたたましい音を立てて、山全体に鳴り響いた。
その音を聞き、4人は目をこすり、まだ眠っている頭を無理やり起こす。寝袋から体を出そうとしたが、あまりの寒さに寝袋を手放すことができなかった。
「おはようございます。春奈さん、ニーニャ、レフィアさん」
「「おはよう」」
「おはようございます」
「寒くて寝袋から出られないですね」
「そうね」
「明人もかー」
そんな中、レフィアは1人寝袋をたたみ、寝る前に消した焚き火に火をつけた。
「これで少しは暖かいと思いますよ」
「レフィアさん……寒くないんですか?」
「ユグドにいた頃はこれくらい普通でしたので。それに、オーガはいろんな環境に的しやすい体の作りをしていますので」
「なっ、なるほど」
焚き火の近くではレフィアが朝のホットレモンやコーヒーを準備してくれている。ホットレモンやコーヒーが出来上がる頃には、空も白み始めていたので、意を決し、明人、ニーニャ、春奈は寝袋から飛び出し、焚き火の元へと走った。
焚き火前で体を丸め、レフィアから各々が飲みたいホットドリンクを受け取り体に流し込む。
「ほぅ」
ホットドリンクを飲んだとはいえ、直ぐに体が温まるはずもなく、焚き火近くから離れられない状況が続くなか、2つ向こうの山間から少しだけ明るい光が差し込んだ。
「新年の朝日ですね!」
「そうね」
「そうですね」
「なんか、いつもと変わらないわね」
ニーニャだけはなぜか感動が薄いようである。
「これで、僕たちもやっと元の姿に戻れますね」
明人の言葉に春奈、レフィアが首を縦に振り、ほおは涙を伝っていた。
その言葉を聞いたニーニャは1人首を傾げている。
「元に戻るってどういうことよ」
「そのままの通りだよ」
太陽が登ってきて光が強くなると、明人の体はだんだんと紫色に、春奈の背中からは翼のようなものが生え、レフィアの頭は白くなり、だんだんと体が大きくなっていった。
「ちょっ、何よこれ、ちょっと、しっかり説明してよ!」
そんなことを叫んでいる間に、太陽は急速に空に登り、そしてニーニャの目の前に富士山、鷹、茄子、日の丸が書かれた1枚の絵が出現した。
「明人! レフィア! 春奈! どこに行ったのよ! 置いてかないでよ! ねぇ! ねぇってばあああああああああああ!」
そんな中ニーニャは1人取り残され明人たちを探し回る。しかし、明人たちの姿は近くにはなかった。
「どうなってるよの……ほんと、どうなってるよの!!!」
空に向かって叫ぶと、その声に応じたかのように__。
「ニーニャ」
空から明人のと声が聞こえた。
「明人! ねぇ、明人、空にいるの!」
ニーニャは焦り、その場に立ち上がり空を見上げる。しかし、そこには明人の姿はない。
「……さ……よ、ニーニャ……き……て」
「明人、どこにいるのよ、明人!」
ニーニャが叫ぶと、さらに声は大きくなった。
「もうすぐ朝日が出てくるよ、ニーニャ、起きてよ!」
その言葉でニーニャは目を覚ました。
「おはよう」
ニーニャが周りを見渡すと、白みがかった空と焚き火の近くでホットドリンクを飲んでいるレフィアと春奈の姿、そしてすぐ近くには明人の姿。
「よかった! みんな無事だったのね!」
そう言いながらニーニャは寝袋から飛び出し、明人に抱きついた。
「ちょっ、ニーニャそれは危ない!」
明人はニーニャの体重を支えきれず、尻餅をつく形となった。
明人は抱きついたままのニーニャを焚き火近くまで連れて行き__。
「どうしたんだよ、そんなに怯えて」
「だって、明人やレフィアや春奈が、茄子や富士山や鷹になったよの!」
その説明だけでは何があったのかわからなかったので、詳しく聞いてみると。
「縁起のいい夢じゃない! この世界では1富士、2鷹、3茄子っていって初夢でみると縁起がいいとされているのよ。まぁ、残念ながら初夢は1月1日から1月2日にかけての夢なんだけど……縁起がいいことには変わりないわ!」
春奈の説明を聞き終えたニーニャはしかめっ面をしている。
「あんな夢が縁起がいいなんて、こっちの世界の人間は変わっているのね……」
ニーニャは明人に身を寄せながらホットレモンをすする。
「ニーニャ様、大丈夫ですよ。私がニーニャ様の側から離れるわけないじゃないですか。明人さんも春奈様だって」
「そうよね、そうだよね!」
そんな話をしていると、2つ向こうの山間から少しだけ明るい光が差し込んだ。
「朝日だ!」
その言葉にニーニャはびくりと体を震わせたが、明人、レフィア、春奈の様子は一切変わることはない。
少しずつ空に昇っていく太陽を見つめながら__。
「改めて、今年もよろしくね! ニーニャ!」
「ええ、こちらこそよろしくね! 明人!」
2人は固く握手を結んだ。




