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プレゼント交換とメリークリスマス

今週分の更新です。

楽しんでいただけると幸いです。

宜しくお願いします。

学校開催のクリスマス会が始まるまであと少し、男子、女子それぞれが次々に体育館に集合する。女子の大半はサンタ服を着ており、男子の大半はトナカイの服を着ていた。男子の中にはちらほらコスプレのような格好をしているものもいる。特に目立つのは、この寒い中、赤いふんどし1枚で仁王立ちしている健人の姿であった。


「おい、健人、お前バカなのか?」


「おいおい、明人ぉ、そんなの分かり切ってることだろ」


「そうだったな。お前はどうしようもないバカだったな!」


健人の方に手を添え、明人は軽く首を左右に振った。


「何言ってんだよ! ここまで完璧な俺のアピール! どうみても天才の所業だろうが!」


明人の手を払いのけた健人は、右手を額に当てカッコつけながら髪をかきあげた。


「その完璧なアピールってなんだよ」


「寒さの中をふんどし1枚で過ごすことにより、屈強な男というイメージを作り上げることができる。屈強な男、つまり強い男だ! ここまで言えばわかるだろ」


「すまん、お前がアホってことしか分からなかった」


「だから、強い男ってとこを見せればレフィアちゃんへのアピールになるだろ」


明人の耳元で囁かれた健人の言葉に明人は首を傾げた。


「そういうもんか?」


「あぁ! だって師匠がレフィアちゃんは強い人が好きだって言ってたぞ!」


「いや、その強いって……」


明人が言葉を言い切るよりも先に、健人が目の前からいなくなった。明人は目の前にある拳が突き出された方向に目を向け、無言で両手を胸の前で合わせた。


「た、け、ひ、と、に、い、さ、ん”ん”ん“ん”」


「た、け、ひ、と、さ、んんんん」


やはりサンタの服は血に染まっても大丈夫なように赤色で作られているんだな。そんなことを考えながら明人は健人の方に向かう赤服の悪魔と赤服の鬼の様子を伺っている。


「にいさん、何その格好!!! 身内として恥ずかしいからさっさと着替えてこい!!!」


「健人さん、何ですかその格好!!! 風邪を引いたらどうするんです!!! はやく暖かい服に着替えて着てください!!!」


「あー、そういうことか」


「何がそういうことか、なのよ」


独り言をしゃべっていたつもりの明人は不意をつかれた。


「あぁ、ニーニャ……うん、僕はノーマルだったはずなんだけどな」


トナカイの服を着たニーニャを見た明人はその可愛さに抱き、モフりたい衝動を理性により押さえつけニーニャの疑問に答える。


「いやさ、健人って主人公だなって思ってさ」


「どういうことよ?」


「照れ隠しできつく当たっている瑞波と健人のことが心配で怒るレフィアさん、その2人に挟まれた健人ってラブコメ作品の主人公だろ」


「えっと……」


明人の説明を元に先ほどの瑞波とレフィアと健人の様子を思い返したニーニャは納得した。


「たしかに! これは主人公ね!」


「でしょ!」


「なにが主人公だよ」


瑞波に殴られた箇所をさすりながら健人は明人とニーニャの方に近づく。その後ろからは、鬼のような視線が健人を射抜いていた。


「健人は主人公だなって話だよ」


「なに言ってんだよお前、頭でも打ったのか?」


健人のツッコミに対して明人は握りこぶしを作り__。


「もう一発いるか?」


「いらねぇよ! ちょっと着替えてくるわ」


そう言って、健人はその場を去った。


「はぁ、あのバカ兄貴にはつくづく苦労するわ」


「全くです」



健人がサンタ服に着替えて戻ってきた頃にはクリスマス会主催の挨拶も終わり、参加者は用意された食べ物やジュースを飲みながらさまざまなクラスの人と交流を深めていた。


「やっと戻ってきたか」


「あぁ、あのさ、明人、そとめっちゃ寒い!」


「そりゃそうだろうが!」


「兄さん」


「なんだよ」


「ちょっと後ろ向いて」


瑞波の言葉を聞いた健人は首を回転させ後ろを向く。


「いや、そうじゃなくて、体ごと」


そういわれ、健人は体ごと後ろを向いた。


「おっけー、大丈夫」


「どうしたんですか? 瑞波さん」


「いやね、ちょっと前に見たバラエティで正面から観ると服で、背面から見ると裸っていう服があってね。それを着ているのかと」


「瑞波、俺は変態じゃないんだけど」


健人が悲しみを表情に浮かべ瑞波に訴えかけるが。


「ふんどし一丁で人前でて来た奴がいう言葉じゃない!」


と一刀両断されていた。


「さて、じゃあ健人も集まったし、隅っこで恒例のアレやるか!」


そういって明人は可愛らしい袋に包まれたなにかを手に持つ。


その様子を見たニーニャたちもそれぞれ明人と同じ柄の袋に包まれたなにかを手に持ち、体育館の隅の方へと移動した。


「で、今回はどう言うルールにするよ」


「そうだな……とりあえず、この袋に全員プレゼントいれてくれないか?」


明人が白い大きな袋を広げ、各員そこにプレゼントを入れていく。


「みなさん、盛り上がってますかー!」


明人が少し悩んでいると体育館のステージの方から司会の声が聞こえてきた。


「これから、軽音楽部による演奏が始まります! みなさん、音楽を聴いてさらに盛り上がってください! それじゃあ軽音楽部のみなさん、お願いしまーす!」


司会の声を聞いた軽音楽部が機材のセッティングを始める。


「軽音楽部の音楽が終わると同時に全員袋に手を入れて、最初に掴んだプレゼントを手に入れるってのでどう?]


「いいわよ」


瑞波が同意し、レフィア、健人も首を縦に降る。


「自分のプレゼントを取っちゃった人はどうするの?」


ニーニャからの質問に少し考えたが__

「うーん、自分のプレゼントを取った人が2人だったら、その人同士で交換、2人以上だったら再抽選ってのでどう?」


「わかったわ!」


明人の提案への同意を持って今年のクリスマスプレゼント争奪戦の火蓋が切って落とされた。



クリスマスムードの街並みを歩くカップル、家族、独り身、その人々が足を止め、全員が同じ方向に目を向けていた。


「ねぇねぇ、ママ、サンタさん!」


赤と白の装飾をした服を着た少女が道路をおよそ人間の出せる速度を超えたスピードで走っていたのであった。その後ろからは__。


「ママ! サンタさんトナカイに追われてるよ!」


「あれはトナカイじゃないわ……イノシシよ!」


トナカイとイノシシの区別がつかない我が子の未来を心配になりつつも母親は携帯電話を取り出し、役所へと連絡した。


奇異な目を向けられているのを横目に、アゲハは走る速度を落とすことはできなかった。なぜなら、走る速度を落とした時点で四足歩行の獣に狩られると感じているからだ。


「くぅ、思った以上に人が多い! それに何よあの鉄の塊!」


『そうね、このままだと人に迷惑がかかってしまうわ』


「でも、どこかで迷惑をかけないと私たちが危ないわ」


『なんとか人が少ないところに向かいましょう』


アゲハは走りながら周りの様子を観察し、人気のない場所を探す。しばらく走っていると、人気が全くない敷地を見つける。


「ここよ!」


そう言うと、アゲハは敷地への入り口を強引に破り侵入し、イノシシとまた正面切って対峙することとなった。



軽音楽部の演奏中に白い袋を振り、中身をシャッフルしていたため、今やどこに誰のプレゼントがあるのかわからない。


そして、軽音楽部の演奏がCメロに入ったタイミングで明人は白い袋をを中央に置き。演奏が終わると同時に全員が白い袋に手を入れプレゼントを掴み、そのまま引き出す。


「ふっふっふー、この感触……間違いなくニーニャちゃんの新作ね!」


「ん? ちょっと待て瑞波、聞き捨てならないセリフだぞそれ。 どう言うことだよ」


「いやー、ニーニャちゃんのプレゼントは新作の小説なのよー」


「えっ、まじなの? ニーニャ」


「えっ、ええ、私のプレゼントは新作の小説よ……でも……」


ニーニャの答えを聞いた明人は両手を床について絶望に打ちひしがれた。明人が手に取ったプレゼントは明らかに小説より重い。


「ちく……しょう……」


「じゃあ、みんなプレゼント開けましょっか!」


落ち込んでいる明人に変わり瑞波が進行し、各々はプレゼントの袋を開けた。


健人はクマのぬいぐるみ、レフィアはエプロン、ニーニャは万年筆、そして瑞波は原稿用紙を手に持っていた。


「おぉ! このぬいぐるみ可愛いじゃん!」


健人は歓喜の声を上げる。


「このエプロン、これからも美味しいご飯を作れるよう頑張ります!」


レフィアは精進することを誓う。


「これ、手にしっくりくる。うん、これ凄くいいわ! このペンで小説を書きたいわ!」


ニーニャは万年筆を握り、宙をなぞる。


「…………なによこれ」


瑞波はゴミクズを見るような目で原稿用紙を見つめる。


「あっ……」


瑞波が手に持っている原稿用紙とそこに添えられたフェルト人形を見て健人は声を漏らす。


「兄さん、今『あっ』ていったわよね……もしかして……」


「それ、俺のプレゼント……俺の書いたポエム集と俺の作ったフェルト人形……」


健人は顔を赤らめながら体をモジモジと動かす。行動だけみると普通に気持ち悪い。


「あははははは__」

その動きを見た瑞波の怒りがピークを超え、笑いながら健人の脛を少し強めの力で蹴り続ける。


「いたっいたっいたっ、ちょ、瑞波、やめろよ」


健人の声は届いているが全て無視されている。その様子を見た明人は自分が手に取ったプレゼントの袋を開け中身を見た。


袋の中には原稿用紙と虹色に光る宝石が1つ。


「これって……」


原稿用紙を開き導入部分に目を通す。


「思いって通じるものなのね!」


ニーニャのその言葉を聞き、明人は確信した。明人が手に取ったプレゼントこそニーニャの書いた小説であることを。


「よっしゃあああああああああ!」


今年最後の神引きをした明人は拳を天に突き上げ吠えた。


「それじゃあ、みんな、最後にあの一言を言ってプレゼント交換会を閉めよう!」


先ほどとは打って変わって明人はハイテンション、瑞波は絶望のどん底にいる状態で明人が進行を始める。


「せーのでいくよ」


一呼吸起き。


「せーの」


「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」


瑞波以外の全員が笑顔でそう言った。


その後、瑞波は明人と交渉しニーニャの小説を読むことができたのだが、それはまた未来の話。

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