クリスマス会の告知
今週分の更新です。
2週間連続で更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
楽しんで頂けると幸いです。
宜しくお願いします。
ニーニャが目を開けると、そこは真っ暗な世界であった。
唯一わかるのは自分が椅子に座っていることと、手を机の上に置いていることである。
そして、何故かはわからないが、この椅子に座っているとここから動いてはいけないような。そんな気持ちが溢れてくる。
しばらくの間、椅子に座り正面をじっとみつめていたがそこに広がるのはただの黒色であったため、特段面白くもなく周囲をキョロキョロと見渡す。
丁度後ろを見たときに、目の端で小さな光を捉えた。その小さな光をマジマジと見つめると、光が少しずつ大きくなっているように感じられた。
光が少しずつ大きくなっているのと同時に、その光の方向へ進まなければいけないという気持ちが徐々に溢れてくる。
進むか、留まるか、何時間もの間その場で悩み続けた。
だからなのか、大きくなっていた光は少しずつ小さくなり始めた。椅子に座っているニーニャは光が小さくなっていることに気がついていたが、その場を立ち上がることはできなかった。
光が完全になくなろうとした瞬間__。
ニーニャの耳に声が聞こえた。その声に導かれるかのようにニーニャは椅子から立ちあがり、ほとんど消滅しかけている光の方へと走り出した。
すると、消えかけた光は再び輝きを取り戻し、黒の世界を一気に染め上げた。
そこには色とりどりの花が咲いている。さまざまな動物が語り合っている。並みの打つ音が聞こえ、ぱちゃぱちゃと魚が海を跳ねる音が聞こえる。そして、目の前には明人が立っている。
「ニーニャ」
名前を呼ばれたそれだけのことだが、ニーニャの心には嬉しいという感情が溢れてくる。
「明人、私、私__」
なんと言っていいのかわからないニーニャはそこで言葉を詰まらせ、次の言葉を出しあぐねていると__。
「ニーニャさっ!」
耳元で大きな声で名前を呼ばれた。
「ニーニャ様、ニーニャ様」
言葉を考えているニーニャの耳元で明人は何度も何度もニーニャの名前を呼ぶ。
「だああああ、うっさい!」
その言葉とともに目を覚ましたニーニャの目にはいつもと変わらない風景が飛び込んできて、横に視線を向けるとレフィアがおたまを持って立っていた。
「あれ、ここは? お花畑は?」
「ニーニャ様何をおっしゃっているのですか?」
レフィアは首を傾げ、時計を指差す。時刻は午前6時
「あれ、今日って休日じゃ?」
寝ぼけた頭でレフィアに尋ねると__。
「その様子ですと、お忘れですね。今日は登校日ですよ」
その言葉を聞いたニーニャはもう一度掛け布団を羽織り横になった。
「ニーニャ様、そんなことで学校から逃げられるとでも?」
レフィアは掛け布団を被ったニーニャの体を揺すったが、ニーニャは断固として布団から出てこようとしなかった。
「仕方ありませんね。失礼!」
レフィアは掛け布団に手をかけ、一気に引っぺがした。
そして、そのままレフィアは素早くニーニャの身を抱きかかえ、リビングまで運び込み朝食が用意されたテーブルの前に座らせる。
「あら、ニーニャちゃん、おはよ」
「おはよう、春奈」
「前まで率先して学校に行こうとしてたのに、最近どうしたのよ」
春奈はコーヒーを片手にパソコンに向かいつつ、ニーニャの様子を伺う。
「えっと、その、うーん、ちょっとね」
秋祭りにて緑の正体を知ったニーニャは、学校へ行くたびに気づいたら緑を目で追い警戒していた。
そのおかげで学校に登校するだけで気疲れをする毎日になってしまい、学校を楽しむ余裕もなかったのだ。
「ふぅん、まぁ、いろいろあるわよねー」
「そういえば、明人は?」
リビングを見回すと明人がおらず、キッチンの方にもいる気配がなかった。
「ここにいるよ」
そう言って庭側の窓が開き、明人が入ってきた。
「おはよう。ニーニャが起きるまでに洗濯物を干してたんだよ」
明人の様子を見たニーニャは一瞬心臓が高鳴った。
ニーニャは胸のあたりを撫でてみるが、特に異常は感じられない。単に急に声をかけられたからビックリしただけだろうと思ったニーニャは、明人に挨拶を返し、朝食を食べ始める。
■
「さて、11月も中旬になりましたが、みなさん期末テストの準備はできていますか」
文化祭や地域ごとの秋祭り、そんな楽しい行事が立て続けにあったことから、期末テストなどの嫌な行事を頭から切り離していた生徒一同は緑の一言で一気に現実に引き戻されることになった。
「期末テストは1ヶ月後、そして期末テストが終わればみなさんお待ちかねのクリスマス会です。今回も教師陣は色々と考えていますので、頑張って期末テストを乗り越えてください」
クリスマス会は教師陣も多大に協力して行われる。テスト作成に忙しい教師、テスト勉強に忙しい生徒、どちらも忙しい身ながら毎年なかなかにクオリティの高いクリスマス会となっている。
緑は一番前に座る生徒に数枚ずつのプリントの束を手渡し、後ろにまわすよう指示を出す。
「今配ったプリントは、帰ったら親御さんに渡してください」
配られたプリントに目を落とすと、クリスマス会についてのプリントであった。そのプリントを机にしまうのを確認して、緑はホームルームの終了を告げ、退室した。
「はぁ、つかれたー」
ニーニャが机に突っ伏して声を漏らした。
「ニーニャちゃん、ホームルームの間だけで凄く疲れてそうだね」
瑞波が突っ伏しているニーニャに声をかけると、顔だけを傾けて__。
「疲れてそうじゃなくて、凄く疲れてるのよ……はぁ」
瑞波に返答する。
明人もニーニャたちの近くに移動しよう席を立とうとしたところ__。
「なぁ、明人、ちょっといいか?」
健人に呼び止められたので、そのまま自分の席に腰を落ち着けた。
「どうしたんだよ、健人」
「あのな__」
そう言って健人は話を始めた。その様子を確認した瑞波はニーニャを連れて教室を出る。
「どうしたのよ、瑞波」
訳も分からぬまま、ニーニャと近くにいたレフィアは教室から少し離れた階段の踊り場まで連れて来られた。
「ニーニャちゃん、クリスマスプレゼントって用意してる?」
「クリスマスプレゼント? ってサンタクロースが届けてくれるものじゃないの?」
「あー、やっぱりかー」
瑞波は額に手を当て困り顔をする。
「えっと、どういうこと?」
瑞波は一つ頷き、手招きする。
「ちょーっと耳かして」
踊り場で瑞波がクリスマスプレゼントについて説明を終える頃には、ニーニャの顔から血の気がひいていた。
「明人達との……プレゼント交換……」
「うん。わたし達はそんな感じで毎年プレゼントを交換してるのよ。ってやっぱり明人説明してなかったのね」
ニーニャは財布を取り出し、中身を見る。そこには500円玉が1枚だけ入っていた。
「うん、無理ね……」
「大丈夫だよ、ニーニャちゃん、来月のお小遣いで!」
「これ、来月のお小遣いを前借りした結果なの……」
ニーニャの目から光が消え、まさに絶望と言わんばかりの表情になっていた。
その言葉と同時に次の授業のチャイムが鳴ったので、作戦会議はお昼休みにすることになった。
■
昼休みになる頃にはニーニャの口から魂が抜けかけていた。
「いや、あの、ニーニャちゃん、流石に疲れすぎじゃ……っていうか死にかけてる」
抜けかけている魂をレフィアがひっ捕まえ、ニーニャの口に押し戻す。
「あれ、私寝てた?」
魂が戻ったニーニャはあたりを見回し、昼休みになっていることに気がついた。
「とりあえず、部室行こっか、ニーニャちゃん」
「わかったわ……瑞波」
ニーニャはフラフラしながら部室へと向かう。
少し歩いて人通りが少なくなったあたりで、レフィアはニーニャを背負う。
「ありがと、レフィア」
「いえいえ、これくらい当然です」
そうして少しの間レフィアの背中で目を瞑っていると、部室に到着した。
「部室……部室!?」
ニーニャは疲れから行き先が部室であることを完全に失念しており、今ここにきて話を聞いてなかった自分に説教をしたくなった。
「うん、今なら誰もいないね」
瑞波の言葉にニーニャは1人安心した。
「で、クリスマスプレゼントについて授業中も考えてたんだけど、何もお金をかけたプレゼントが最高のプレゼントとは限らないと思ったの。特に明人には」
「それはどういうことですかー!」
「ふっふっふ、それは、ニーニャちゃんが書いたオリジナル小説をプレゼントにすればいいのです!」
瑞波はドヤ顔をし、ニーニャは少し悩んだ。
「うん、パンフレットの方はなんとかできそうだし、頑張ってみるわ!」
「やったー! 絶対ニーニャちゃんのプレゼントゲットしてやるわ!」
瑞波の後ろに大きな炎が見える。
「え? あれ? 明人に渡すんじゃ?」
「違うわよ、私と明人と健人とレフィアちゃんとニーニャちゃんで交換するんだよ!」
「ちょっと待って、瑞波がただ読みたかっただけとか?」
ジト目で瑞波を見つめると、瑞波はテヘッと舌を出した。
「まぁ、名案だからその案に乗ってあげるわ」
やれやれと肩をすくめ、ニーニャはプレゼント交換用の小説の内容を考え始めた。
■
夜、冷たい風にふかれプルプルと震えながら、アゲハは食べ物を口に入れる。
「明日の夜で保存食も切れそうね」
『そうね』
「まさかここまで山に動物がいないなんて……」
『えぇ、それどころか野草も全然生えていないなんて……完全に誤算だったわ』
夜に見た光の方向へ歩きつつ山を散策したが、何一つ食料になるものを手に入れることができなかった。
それもそのはず。動物たちが冬眠に向けて栄養を蓄え始める時期である。そのため、山にある野草や木の実は根こそぎ食べ尽くされているのである。
また、動物たちは冬眠する場所を確保してしまえばそこからほとんど動くことはない、そのため、山の中を駆け巡る動物たちは非常に少ないのである。
「ユグドだったら山に入れば野草か動物の1、2匹簡単に狩れるのに……」
『世界毎の理ってものがあるから仕方ないわ』
「はぁ、明日には光のある場所につけるかな」
緑に会うため異世界に移動してきたが、そのことを既に後悔し始めたことと、この先食料なしに生きていけるのかが不安になって着たアゲハであった。
「私の不幸はいつまで続くの……」
『仕方ないわよ、誰だって時には不幸になることだってあるもの』
そう言って精霊術で地面に穴を掘り、その穴で今日も寒い夜を凌ぐアゲハであった。




