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景品とささやかな仕返し

今週分の更新です。

楽しんで頂けると幸いです。

宜しくお願いします。

最後の問題を解いたチームには2年4組のクラス委員長から直々に景品を受け取ることになっており、明人とニーニャはスタッフに連れられ、2年4組に向かっていた。

「ふふふ、あのメガネ野郎になんて言ってやろうかしら」

「普通に受け取って普通に帰ろうよ」

「そんなわけにはいかないわよ。あのメガネ、あれだけの啖呵を切ったんだから、土下座の1つでもさせないと私の気が治らないわ!」

朝のやりとりに対して未だに怒りを覚えているニーニャはその背中に修羅を彷彿させるほどのプレッシャーを放っていた。


ニーニャがここまで怒りを露わにすることがなかったため、明人もどうやってニーニャの怒りを収めるかがわからず、頭を抱えていたところ。

「あれ、明人と師匠じゃん。どこ行くんだよ。もう片付け始まるぜ」

階段の前を通り過ぎようとした時に、横から声が聞こえてきた。

明人とニーニャが声の聞こえた方に顔を向けると、後片付けのため教室に戻ろうとしてた健人とレフィアが立っていた。


「ふっふっふー、私たち最終問題をクリアしたから、その景品を貰いに行くのよ! それで、あのいけ好かないメガネ野郎に羞恥を味あわせてやるわ」

「健人さん、すみません、私もニーニャ様が景品を貰うところを写真で撮りたいので、一緒について行きます。私の担当分は戻ったらやりますので、置いておいてください」

「親御さんに送る用だよね。明人が撮ったらいいんじゃないの?」

「いえ、明人さんとニーニャ様の2人が写った写真が欲しいので」

レフィアがお辞儀をすると、健人は少しだけ考え。

「おっけー、みんなには明人たちが4組に一泡吹かせたからって伝えるよ。証明写真はレフィアさんがバッチリ撮ってくれるってね! あっ、片付けはみんなで手分けしてはじめとくから、帰ってきた時に残ってたら手伝ってよ!」

「了解です!」

健人は1人7組に向かって歩きだし、ニーニャ、レフィア、明人は待っていてくれたスタッフと共に4組へと向かった。



「ニーニャ様」

レフィアが小声でニーニャに声をかけ、なにかを話している。先ほどのニーニャの様子を見たレフィアが何かしらの注意をしているのだろうと考えた明人は、後はレフィアに任せようと決心した。


4組に着く頃には2人の会話も終了しており、スタッフが扉を2度ノックした。

「最終問題を解いたチームを連れてきました」

「どうぞ、中に入ってください」

教室の中から聞こえた声の指示に従い、4組の教室に入ると――

パンッ、パンッ――

「おめでとうございます!」

クラッカーの弾ける音と共に4組の数名からの賞賛の声が聞こえた。


教室の中を見渡すと、クラッカーを鳴らした生徒たち笑顔や驚きの表情を露わにしていたが、景品を持って立っている生徒は笑顔の程をなしたなにか不思議な表情をしていた。

「お、おめでとうございます。最後の問題を解くなんて凄い! 賞賛致します。それではこちら景品となりますので、お納めください。 」

守明人とニーニャのいる方に近づき、景品が差し出されたので、明人が受け取ろうとした瞬間。

「まって、明人」

ニーニャは後ろをふりむき、カメラを構えるレフィアに視線を送る。その視線を見たレフィアは頷いた。

「さて、2年4組クラス委員長の斎藤守さん。1つお聞かせください――」

ニーニャは一呼吸置いたのち。

「ねぇ、今どんな気持ち! ドヤ顔で最後まで問題が解けなかったら土下座とか言っておきながら、土下座もさせられないどころか、景品を笑顔で渡すことになるなんてどんな気持ち? ねぇねぇ教えてよ! 教えてくださいよ、斎藤さぁん!」


ニーニャの言葉がかろうじて聞こえてはきたが、明人の脳みそがフリーズしていたため、どういう状況なのかを把握しきれなかった。

壊れた機械のようにギギギと首を回し、後ろに控えるレフィアに「ニーニャの様子がおかしかったから事情を聞いて、落ち着かせてくれたんじゃないんですか?」という気持ちを込めた視線を送ると――右手で携帯を構えたまま、左手で握りこぶしを作り、親指を立ててグッドポーズを作っていた。


「うそーん」

レフィアのポーズを見た明人は自分が想像していた状況との乖離から、思わず口から言葉が漏れた。

再び視線を守るとニーニャの方に向けると、守の表情は怒りに震えて真っ赤になっており、今すぐにでも怒りの言葉を口に出したそうだが、我慢してギリギリ笑顔を保っている。

「さ…最終問題まで解かれたことに素直に賞賛しますよ」


「いやー、そうよね、あの問題を解ける人なんてそうそういないわよ。それで1つ聞きたいんだけど、あの問題誰が作ったの?」

ムカつく表情をしていたニーニャは急に真剣な表情になっていた。

「僕たちが絶対に解けない問題を作るために、東堂先生に相談したら提案してくれた問題だ」

「ふーん、で、その東堂先生は誰から聞いたって話してた?」

「そんな話は一言も聞いていない。もういいか? さっさと景品を受け取ってじ分たちの教室に帰ってくれ。 僕たちも後片付けがあるんでね」

ニーニャの質問が鬱陶しかったのだろう。守はニーニャの質問を打ち切り、退室を促す。

「ニーニャ、帰るよ」

明人は守から景品を受け取り、ニーニャに声をかける。


「最後に1つ。これ、お金取ってたら詐欺になってかもだから気をつけた方がいいわよ」

そう言って明人とニーニャとレフィアは2年4組を後にした。



「で、どういうことか説明してくれる? ニーニャ、レフィアさん」

明人は小さな声でニーニャとレフィアに質問を投げかけた。

2年4組を後にした明人はニーニャの守への質問が引っかかり、屋上前の踊り場まで足を運び2人から話を聞こうとしていた。


「当然、明人には話すつもりだったわよ」

ニーニャの言葉にレフィアが頷いた。

「じゃあ、まず、最初に聞きたいのは、最後の問題についてなんだけど。なんであんなこと聞いたの?」

「最後の問題に書かれていた文字の「ヴェルジュガン」これ本当は「ボェールシューギャーン」っていうの。これはユグドに住むエルフが遠い昔に使用していた精霊魔法の1つで「貯水」って意味なの」

「へー、なるほ……まって、ちょっとまって、なんで東堂先生がその言葉を知ってるんだよ。いや、もしかして似たような言葉がこっちの世界にもあるんじゃ?」

「残念ながらそれはないのよ。さっき4組に向かう途中でレフィアに調べて貰ったけど、そんな言葉はなかったわ」

ニーニャの言葉を聞いた明人は驚きのあまり、口を開けたままフリーズしていた。


「ってことは……東堂先生がユグド世界のエルフ……」

「まだ確定じゃないわよ。もしもあの言葉を誰かから聞いたのであれば、東堂先生ではなく、東堂先生に言葉を教えた人がエルフなんだと思うわ」


明人は表情を読み取られないよう顔を下げ――

「じゃあ、もしその人がユグドに帰る方法を知ってたら、ニーニャもレフィアさんも……」

「帰らないわよ」

「へ?」

変な声とともに明人は勢いよく顔を上げ、ニーニャとレフィアを見る。


「まだまだ帰れないわよ。もっとこっちの世界のいろんなことを知りたいのに! まだクリスマスも年越しもやってないのよ! そんなんで帰れるわけないじゃない! それに、私もレフィアも、こっちの生活がすごく楽しいから」

ニーニャが笑い、レフィアが頷く。


その様子を見た明人はすぐにまた顔を下げ、少しの間無言になった。

「明人?」

「じゃあ今後のイベントも楽しまないとな!」

そう言って明人は拳を天井に向けて振り上げた。


「当然よ! しっかり楽しむわよ!」

ニーニャも明人の真似をして天井に向けて拳を振り上げた。

レフィアはその2人の様子をそっと写真に収めていた。


「ところで、最初に斎藤君を煽ったのって、怒らせて思考を鈍らせることで情報を聞き出すためだったの?」

「え? あー、あれは違うわよ。レフィアにどんなふうに言ってやればいいか相談したら、最近読んだ漫画でムカつく煽り方が出てたのでって教えて貰ったのよ」

明人がレフィアの方に視線を向けると、テヘペロポーズをしていたので、明人も何も言えなかった。

「なんか、レフィアさんって最近健人に汚染されてきてないか?」

「そうかしら?」

「そんなことありませんよ、明人さん。私は昔からこんな感じでしたよ。ただ、人見知りが緩和されてきただけのことです」

「あー、うん、そういうことにしときましょうか。それと、そろそろ教室に戻りましょうか。片付けありますし」

「そうね、戻ってみんなにコレを自慢してやらないと!」

ニーニャは景品を掲げ、階段を降りて言った。レフィアもニーニャの後をついていく。


階段を降りる2人の後ろ姿を見た明人は、いずれ2人と別れる時が来るんだろうと考えが頭をよぎり、階段を降りる一歩が踏み出せなかった。

この一歩の先に2人と別れる未来があるなら、この一歩は踏み出すべきなのか。

そんなことを考えていると、明人の手にニーニャの手が重なり――

「明人、何してるのよ、早く教室に戻るわよ」

そういわれ、明人はニーニャに手を引かれる形で教室へと向かったのであった。

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