文化祭とお宝探しゲーム
今週分の更新です。
今週分からいつも通りの文章量になります。
楽しんでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
※2018/6/24誤字修正
明人とニーニャは人通りの多い中、学校の廊下を全力疾走していた。
「はぁ、はぁ、やっぱり、運動不足はよくない……ね……」
明人は自身が運動不足であったことを悔やみながらも必死に足を止めず、ニーニャについていく。
「明人、早く! もうすぐ制限時間よ! それまでにあそこに辿り着いて、お宝をゲットしないと!」
数十メートル先を先行して走っているニーニャが振り向き、明人を急かす。
「わかってるよ! これでも僕の出せる全力を出して走ってるんだよ! はぁ、はぁ」
急かすニーニャの背中を追いかけ明人は最後の力を振りしぼって、足に力を入れてほんの少しだけ走る速度を上げた。
■
楽しい時間は過ぎるのが早いとよく言ったもので、文化祭終了時間まであと2時間となった頃。明人とニーニャは2年4組の宝探しに参加するため、宝探しのスタート地点である校門で開始の時を待っていた。
守の言った通り、2年4組の宝探しの目玉である5万円の宝は未だに発見されていなかった。その理由はいたって単純。最後の宝にたどり着くまでの問題を誰も解くことができず、時間切れになっているからだ。
「おーう! 明人、師匠も最終グループのチケット持ってたんだな」
明人とニーニャが声のした方に顔を向けると、健人とレフィアが近づいてくる。
「あれ? 健人もチケット持ってたんだね」
「偵察部隊の一人だったからなー」
健人はしみじみと言いながら空を仰いだ。
その様子を不思議に思った明人は、隣にいるレフィアに事情を聞こうと健人に気づかれないよう、レフィアを手招きする。
「レフィアさん、なんかあったの?」
レフィアは悲しい顔をして、健人の身に起こったことを語り出した。
「実は……今朝のことです。健人さんともう一人がチケットを手に入れて教室に戻ってきたのですが、見ての通り2枚とも最終グループのチケットで……クラス全員からブーイングを受けることになりまして……それで一度はチケットを捨てようとしていたところ、私が参加したいとお願いして、今ここにいるわけです」
さしもの明人も、健人の不憫さに口元を押さえ、目が潤んでいた。
「うーん、流石に健人もかわいそうね」
「はい、ですから、健人さんが欲しがっているお宝を手に入れて健人さんを元気づけようかと」
レフィアがふんすと鼻を鳴らし、体の前で拳を作る。
「ありがとう、レフィアさん、健人のために……でも、よかったの? 周りたいところまだあったんじゃないの?」
「大方のクラスはニーニャ様と周りましたし、それに、なぜか健人さんにお宝をプレゼントしたいと思ったのですよ。ですから、自分の心に従ったまでです」
「へー、健人にお宝をプレゼントしたくなったね? ほんと、なにがあったのよレフィア」
「本当になぜなんでしょうね。それに、最近は気づいたら健人さんを目で追ってるんですよね」
ニーニャとレフィアが2人して首を傾げている中、明人は1人心の中で__“いやいや、レフィアさん、前にニーニャよりは恋愛感情がわかるって言ってたじゃないですか! 自分の恋愛感情には疎いんですか、あなたは!”と突っ込みを入れることになった。
「2年4組の出し物に参加の皆さんは手を挙げてください。今から黄色い腕章を右腕につけたスタッフがチケットを確認にいきますので、声をかけられた方はスタッフにチケットを見せ、ハンコを押してもらってください」
進行役の生徒がアナウンスをすると、2年4組の生徒が校門で手を挙げている参加者の1人1人に声をかけてチケットチェックをしていく。
全員分チェックが終わると――
「では、参加者の方は事前にお願いしていた通り、2人1組になって、こちらにあります問題箱より、問題を1つ手にとってください」
進行役の生徒のとなりに白い正方形の箱を持った生徒が立っており、その生徒の箱を指差しながら、アナウンスをする。
そのアナウンスの通り、校門に集まっていた人は2人1組となり、正方形の箱から問題を手に取る。箱の中に入っていたのは4つ折りされた紙で、開けると問題が書かれているというものであった。
「参加組全組みに問題が行き渡るまで開けないでくださいね。開けたチームは失格となり、参加権を失いことになりますので、ご注意ください」
そうアナウンスがされたのと同時に2年4組の生徒たちが周りを睨むように見回し始める。
そんな中、最後の組みまで滞りなく問題が行き渡り、それを確認した進行役の生徒は、再びメガホンを口に当て説明を開始する。
「まず、各組みに配布しました、紙の中に書かれた問題を解いてください。問題を解きますとお宝が隠されている場所がわかります。その後お宝の隠された場所まで行ってもらい、お宝に書かれた番号をメモしてください。その番号を宝箱付近にあるチェックポイントで伝えると、お宝を貰うか、次の問題を貰うかを聞かれますので、どちらか1つを選んでください。お宝を手に入れるを選択すると、その場でそのチームはゲーム終了となります。問題を貰うを選択したチームは、続いてのお宝の場所が書かれた問題用紙を渡されますので、最初同様問題を解いて、次のお宝が隠されている場所に進んでください。ちなみに、解いた問題の数によってお宝のレートが上がっていきますので、高レートのお宝を狙っているのであれば、お宝を手に入れず、問題をもらい続けてください。最後に制限時間ですが、僕の持っているホイッスルの音が鳴ってから1時間となります。以上、なにか質問はありますか?」
進行役の生徒が一気に説明をし、質問があるか参加者に確認してみたが、誰一人として手をあげることはなかった。
「質問も無いようですので、ゲームを始めさせていただこうと思います。それでは、最終グループのお宝探し、ゲームスタート!」
ピィー――
勢いよくホイッスルの音が鳴り響き、それと同時に参加者は全員問題用紙を開け問題を解き始めた。
明人たちが開いた紙には、運動用具の絵、家の絵、木の絵が描かれており、その間がプラスで繋がれていた。
「ニーニャ、行くよ!」
「え? 明人、場所わかったの?」
「うん、多分体育倉庫の横に立っている木の下だよ」
そう言うと明人とニーニャは集団から飛び出し、体育倉庫へと向かった。
体育倉庫の両脇に木が立っていたので、明人とニーニャは手分けしてその木の下を探し――
「ニーニャ、こっちだ! 明人は宝箱を見つけた!」
「おっけー! 番号はあった?」
「うん、蓋を開けたら番号が書かれてたから、メモしたよ」
「おっけー、じゃあチェックポイントに行きましょう」
チェックポイントは体育館の入り口に設置されているため、そこに向かって明人とニーニャは走り出した。
「はい、お宝コード獲得ですね。お宝を手に入れますか? それとも、次の問題に挑戦しますか?」
「「次の問題!」」
ニーニャと明人は即座に答え、チェックポイントに座っている生徒から次の問題用紙を受け取り、次の問題に挑戦した。
そうして、ニーニャと明人は次々に問題を解き続け、4問目を解き終え、チェックポイントにお宝コードを持って行き、いつものように次の問題と宣言すると。
「おめでとうございます。これが最後の問題です。これが解けましたら、最高額のお宝が手に入ります」
と言われ、問題用紙を手渡された。
「これが、最後……開けるよ、ニーニャ」
「ええ、お願い!」
明人が問題用紙を開くと、そこには『ヴェルジュガンの下』とその一言だけが書かれていた。
「……いや、これはチョット……わかるわけないだろ!」
問題用紙を開いた明人は全く意味のわからない言葉を見て大声でツッコミを入れた。
その横でニーニャは顎に手を当てて、何度も何度も紙に書かれた言葉を小声で呟いていた。
「ヴェルジュガン……ヴェルジュガン……あー、どっかで聞いたことある気がするんだけど」
にーにゃは頭をカシカシと掻きながら発音を変えて何度も何度も呟く。
「ゔぉ、ゔ、ゔぃ、ぼ……ボェールシュガン、ボェールシューギャ――あっ……そんなことってあるの? でも……うん」
ブツブツと呟いていたニーニャを見て明人も諦めずに再度用紙に目を落とした瞬間。
「明人、いくわよ!」
「え? ニーニャわかったの?」
「もしかしたらよ! これで外れてても文句は言わないでね!」
ここまで色んな回答場所へ向かうため、学校全体を走り回った明人は体力的に限界が近くなっており、ニーニャに徐々についていけなくなっていた。
「はぁ、はぁ、やっぱり、運動不足はよくない……ね……」
時計を見ると制限時間まで後5分、ニーニャと明人は廊下を全力疾走し、さらに階段を全力で駆け登っていた。
ニーニャは3階で一度止まり、階段横にチェックポイントがあることを確認し、そのまま屋上への階段を駆け上がり、明人は屋上前の踊り場へと辿り着いた。
ニーニャはすでに屋上の扉を開けて屋上に足を踏み入れていたのか、そこには誰もいなかった。
明人は屋上に出るための扉に手をかけ、扉を開けると、その先にもニーニャの姿はなかった。
「あれ、ニーニャ?」
屋上に出てあたりを見回すがやはりニーニャの姿はない。
「ニーニャ!!」
ニーニャの名前を大声で呼ぶと、給水タンクの下から――
「あったあああああああああ!」
そんな叫び声が聞こえた。
お宝コードを書き写した紙を手にニーニャは明人の方に向かって走ってくる。
「明人! 時間がないわ! 3階のチェックポイントに向かうわよ!」
明人は何が何だかわからないまま、ニーニャの言葉に従い、3階のチェックポイントへと向かった。
「明人、時間は?」
「後30秒!」
「ギリってところね!」
ニーニャと明人は階段を駆け下り、3階のチェックポイントの生徒が終了札に手を伸ばした瞬間。
「お宝コード持ってきました!」
滑り込みでお宝コードをチェックポイントで提示した。
「おぉ、ギリギリですね。では確認させていただきますね」
チェックポイントの生徒がお宝コードの照合を始める。
「うわぁ、まさかこのコードを持ってくる人がいるとは――」
感嘆の言葉を漏らし、その後――
「おめでとうございます。この次の問題はありませんので、お宝の贈呈となります。最高額のお宝取得、おめでとうございます!」
明人とニーニャはチェックポイントの生徒から最終問題クリアのラミネートカードを受け取り、気が抜けたのか、その場で座り込んだ。
そして、2人は大声で笑いながら、拳と拳を軽く突き合わせた。




