文化祭の始まり(SS)
今回も文章が短いためSSと記載しています。
2週間休載してすみませんでした。
今週の更新です。
楽しんでいただけると幸いです。
宜しくお願いします。
文化祭が始まり、外部からの来客数が増えてきたなかあるクラスの出し物に参加する整理券を確保する待機列が後者横の設置されていた。
「明人、流石にあれは卑怯なんじゃないの?」
ニーニャが2階の窓から待機列に視線を送りながら、となりにいる明人に不満をこぼす。
「あれは完全にルール違反だよ。まさかこんなことをしてくるなんて……」
待機列の前には大きな看板が立っており、そこにはデカデカと2年4組の出し物についての広告が書かれている。
その内容とは、「謎を解いて宝を見つけ出そう! 学校全体を使った宝探しゲーム! 最大5万円の宝も!? 待機列はこちらから→」と赤文字で大きく書かれていた。
「景品で来場者を稼ぐなんて……必死に企画を考えた生徒たちはこんなのでいいのかな?」
「いいに決まっている! 世の中努力したって結果を出せない人間なんてごまんといる。 そんな中結果を出せる奴は、結果に執着し他者をも利用できる人間だけだ。 だから僕らのクラスは利用できるものはなんでも利用するんだよ」
明人とニーニャが声のした方に視線を送ると、2年4組のクラス委員長である斎藤守が眼鏡を中指で押し上げながら立っていた。
「斎藤くん……でも、それって文化祭の趣旨に背くんじゃないかな」
「何を言っている森川。 これが文化祭の趣旨に背くというのであれば、学校側が辞めるよう通達するだろう。それが無いってことは学校側も認めてるってことだよ」
学校側に事前に出し物の概要を出し、審査したのち問題がなければクラスの出し物として認められる。その審査が通っているのであれば、2年4組のあの出し物も認められていると言うことだ。
「ふーん、それはそうかもしれないわね。でも、貴方たちは貴方たちの力で勝つことを放棄したのよ。その時点で貴方たちは私たちに心の強さで負けてるよの」
ニーニャが守を指差しキメ顔をすると、守は視線を床に向け体を震わせ始める。
「くっ、くくくくく、いやいや、笑いをこらえるのは大変ですね」
その言葉とともに守は乾いた拍手をしたのち、ポケットを探りながら明人とニーニャの方に近づいてくる。
「負け犬の遠吠え、テンプレートの言葉、こちらが想像していたことを、想像通りにやってくれますね。その愚直さ面白いです」
守はポケットから手を出し、明人とニーニャに2枚のチケットを差し出した。
「僕たちの催し物の最終時刻のチケットです。最高額の景品は必ず残っています。もし貴方たちが最高額の景品を手に入れられたなら、僕は素直に負けを認めましょう。ですが、あなた方がもしも景品を手に入れられなかったら__そうですね、全校生徒の前で僕に土下座でもしてもらいましょうかね」
守は邪悪な笑みを浮かべながらチケットを持った手を軽く上下に振る。
ボキッ__
明人の隣で何かが切れる音が聞こえ、そっと視線を移すと、ニーニャは手に持っていた割り箸を2本に折っていた。
「やってやろうじゃない!」
チケットを受け取り、ニーニャが発した言葉にはいつもより静か、だけどいつも以上の凄みがあり、背後に修羅でも見えんばかりのプレッシャーを放っていた。
「くくく、楽しみにしているよ」
そう言って守は2年4組のイベントブースへと足を進め、ニーニャと明人は教室に向かって歩き始めた。
「明人、私の方をジッと見ないでくれる? なんか恥ずかしい」
「いやー、ニーニャがあれくらいのことで怒るなんて珍しいと思ってね」
「それもそうね。んー、全校生徒の前で土下座をさせられるって聞いた瞬間、私の中の何かが切れちゃったのよね」
ニーニャは歩みを止め、胸の前で両腕を組み、冷静に先ほどの状況を思い返している。
その言葉を聞いた明人が、ニーニャの耳ものとに顔を近づけ__
「やっぱり、お姫様のプライドが土下座を許さなかった?」
と耳打ちした。
ザッ__
「あっ、明人? 急に耳元で話すのやめてくれりゅ?」
顔を真っ赤にしたニーニャは素早い動きで明人から離れ、耳元を手で覆った。
「えーっと、そんなにオーバーリアクションするほど嫌だったの?」
明人が耳打ちしたポーズのままニーニャに確認すると、ニーニャは離れた距離を一気に縮め__
「耳が敏感なのよ!」
と小さな声で明人に抗議し、教室に向かって再び歩き始めた。
「耳が敏感ならしょうがないよな」
そう言葉を漏らしたが、ふと思い返すと__
“あれ? 以前も耳打ちで話をしたことがあった気がするけど、その時はあんなに反応しなかったよな。”
あそこまで敏感な反応をした覚えのなかった明人は、不思議そうに前を歩くニーニャの背中を追いかけた。




