文化祭当日の朝、文芸部員の決意(SS)
今週分の更新です。
今週は文字数が何時もの半分のため、SSとしています。
内容的には続き物ではありますのが、ご了承下さい。
楽しんで頂けると幸いです。
宜しくお願いします。
朝の学校。いつもであれば朝練をしている運動部員達の掛け声が。
ここ1週間は文化祭の準備をしてい生徒達の騒めきが。
そして本日、文化祭当日。各クラス準備が完了しているクラスもあれば、最後のひと塩と言った感じの準備をしているクラスもあった。
そんな中明人達は職員室に運び込まれていた段ボールから外部の人用の文化祭案内冊子をせっせと各配置場所に運んでいた。
昨年までは案内冊子は全て玄関に配置されている机の上に置かれていたのだが、文化祭に参加する親御さんや外部の人から「玄関で冊子をもらい忘れた時に、玄関まで取りに戻るのが大変だ」という意見が上がったため、今年から案内冊子をいくつかの場所に配置することにしたのである。
「ねぇ、明人……」
「どうしたの? ニーニャ」
「これって、先生方のお仕事じゃないの? なんで私たちがやってるのよ……」
明人とニーニャがそれぞれ冊子の入った段ボールを持ちながら部室棟へ向かう中、ニーニャはここまで言わずにいた疑問を明人に投げかけた。
「はぁ、その意見はごもっとも。僕も職員室で話を聞いた時に森山先生に確認したんだけど、ひたすら謝られたよ」
段ボールを持ちながら明人は肩を落とし、ジトッとした目で正面を見つめながら再度口を開く。
「これ、東堂先生の進言らしい」
「え? 東堂先生ってほかの先生に嫌われてるのよね、なんでそんな人の意見が通っちゃってるのよ」
「あー、うん、先生陣には嫌われてるんだけど、教頭先生や校長先生からは評価されてるみたいでね……ほかの先生も強く言えなかったみたいなんだ」
「なるほど、権力者を味方につけてたのね。でも、緑先生が言ってた話を聞く限りだと、教頭先生や校長先生に話が行っててもおかしくないわよね」
緑の話していた内容を教頭や校長が聞いていれば、東堂の味方に着くとは思わないと思ったニーニャは首をかしげる。
「うん、去年時点で森山先生含め何人かの先生は進言したらしいんだけど、お酒の場だったからって窘められたんだってさー」
明人が意識的に棒読みで回答し、ニーニャの方をチラリと見ると、訝しげな顔で明人を見ていた。
「で、本当のところは?」
「うん、これは聞いた話なんだけど、東堂先生が担当したクラスは一流大学への進学率が高いらしい。それを宣伝材料にしたい学校側は東堂先生を別の学校に行かせないようにするため、多少の我儘は目をつぶっているみたいなんだ」
「あぁ、なるほどね。有能な者には優遇をってことね」
「まぁ、そういうことだよね」
そんな話をしているうちに部室棟1階に配置されている案内冊子用の机の前についた明人とニーニャは手に持っていた段ボールを床に置き、中から冊子を取り出し設置する。
部室棟の1階から3階の指定の場所に案内冊子を配置したのち、明人とニーニャは職員室に戻らず部室へと向かった。
部室に入ると、涼、瑞波、健人、レフィア、そして緑が集まっていた。
「おかえりなさい、森川くん、ニーニャちゃん。冊子ありがとね」
部室の一番奥に座っていた緑からお礼を言われ、明人はいえいえと言って空いている椅子に腰掛ける。
「さて、私は今怒っています」
両手を顔の前で組み、肘を机の上におきながら、緑は言い放った。
「森山先生、それ私たちのセリフですよ」
瑞波も緑と同じポーズをとり、いつもよりワントーン低い声でそう言う。
「で、なんで文芸部が東堂の目に止まったんだろうな。緑先生が顧問だからか?」
「いや、それだったら逆に文芸部以外にやらせるでしょ」
健人と瑞波がそれぞれ話をしている中――
「森山先生。もしかして東堂先生と何かありました?」
涼が緑に尋ねると、緑は首を左右に振り、何もないと言ったリアクションをとったのち。
「何もないわよ。こないだ余りにもしつこく食事に誘ってくるから、『しつこいですね、貴方に一欠片の興味もないのでもう誘わないでください!』って言っただけよ」
ニーニャ以外の全員あんぐりと口を開け、驚きの表情をしたまま緑をじっと見つめる。
「なんですか、先生の顔をマジマジと見て」
その言葉を聞き、全員一斉にため息をつき、額に手を当て、首を左右に振る。
「なんですか、なんなんですか!」
意を決して明人が――
「先生、今回のこの冊子配布の標的にされたのは、その東堂先生の誘いを断った時の言葉ですよ」
「なんでですか? しつこかったら少し強い言葉で断るでしょ」
「そうよ、明人、なんで緑先生が原因なのよ」
緑とニーニャは訳がわからないと首を傾げながら質問する。
「えっとね、まぁこれは東堂先生の器の狭さの問題でもあるんだけど、好きな人に誘いを断られたから嫌がらせしようって魂胆なんですよ」
全員が一斉に頷くと、緑も「あー」っと相づちを打つ。
「なるほど、そう言われれば。でも、結局は東堂先生の問題ですよね?」
「そうですよ。だから、僕らのこの憤りは全て東堂先生に向けるモノです!」
「そうね」
「そうだな」
「うん」
「そうですね」
「そうよね!」
明人の言葉に全員が相づちを打ち――
「絶対に2年4組には勝つぞ!!」
全員が一斉に叫んだ。
こうして明人達の文化祭が始まった。




