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小テストの対策と新たな試み

今週分の更新です。

楽しんでいただけると幸いです。

宜しくお願いします。

赤点科目の補習授業最終日を明日に控えたニーニャは明人と瑞波とレフィアに見守られながら、机の上に突っ伏していた。

「無理よ、こんなの無理に決まってるわ……」

ニーニャが、うわ言のようにボソボソと絶望に打ちひしがれる言葉を口にしている。


「あー、うん、これは……」

「えっと、ニーニャちゃん、大丈夫だよ! まだ巻き返せる……よ!」

「おいたわしや、ニーニャ様」

補習授業の最終日には簡単な小テストが行われる。

テストの内容は、補習授業の内容が2割、8割が補習授業の中に配られた模擬試験の中から抽出される。

今、ニーニャは3人に見守られながら、補習授業中に配られた模擬試験を解いたのだが、結果は惨憺(さんさん)たるものだった。


「私だって、自分の書いた作品に登場するキャラクターの心境はわかるわよ。でもね、誰かが書いた作品に登場するキャラクターの心境なんて書いた本人にしか分かるわけないじゃない!」

ドンッとテーブルに手をつき、前のめりになりながらニーニャは力説する。


「うーん、その言葉は現代文ができない人が言うテンプレの言葉だよ」

「おいたわしや、ニーニャ様」

瑞波は気まずい笑みを浮かべ、レフィアは手にしたハンカチを目元に当て、オヨヨというセルフ効果音と共にベッドにしな垂れる。

明人は持っていた答案用紙をテーブルの上に置き――

「ニーニャ、本を書く上で作者の気持ちを察することは、これからのニーニャの成長にも繋がるから、絶対にやったほうがいいよ」

真剣な表情でニーニャの方を見るが、ニーニャは子供のように”だって”と言いながら視線をそらす。


「とはいえ、今は補習の小テストに合格することが優先だよね。だから……」

明人はニーニャに1つの提案をし、ニーニャはその提案に目を輝かせ――

「それしかないわ!」


そう言いながら、ニーニャはテーブルに向かって模擬試験の問題を解き始める。

ある程度の時間になったところで瑞波は帰り、レフィアも春奈の手伝いのため、リビングに。

明人も自室に戻り、宿題をすることにした。


「んーっ、これでなんとかなりそうね」

背を伸ばし、テーブルを見ると、ミルクティの入ったカップが目に入る。

もともとはホットミルクティだったのだろう、ニーニャがカップに触れるとほんのり温かみが残っていた。

「疲れた頭に染みるわー!」


ガチャ――


「あっ、レフィアおかえりー」

「ただいま戻りました。休憩中ですか?」

レフィアは部屋に入り、ニーニャの隣に腰掛ける。


「うん、そうそう、ミルクティありがとね!」

そう言ってニーニャがレフィアにカップを見せると、レフィアは首を軽く左右に振る。

「それを準備したのは明人さんなので、明日にでも明人さんにお礼を言ってください」

「そうなんだ! わかったわ!」

緩くなったミルクティをグイッと飲み干し――

「よし! もう一踏ん張り!」

そう言って笑みを作り、机に向かった。



補習授業最終日――


文芸部部室では明人、瑞波、レフィア、涼がテーブルで本を読んでいた。

涼は最近購入したライトノベルに集中しているが、他の3人は手に持っている本に集中できず、チラチラと部室の扉に視線を送っている。

時計に視線を移すと補習授業が終了するまでに、まだ20分以上ある。


ガチャ――


「ニ……」

明人、瑞波、レフィアが立ち上がり、開く扉を見つめる。


「ひゃっほー! 補習終わったぜ!」

健人が補習の小テストを手に部室に入ってきた。

それを見た明人と瑞波は何事もなかったかのように読みかけの小説を手に取り、続きを読み始める。

「いや、その反応は意外と心えぐられるよ! せめて良かったねくらい言ってよ!」

健人が抗議をするため明人と瑞波は声を合わせて――

「よかったな。健人」

「よかったね、兄さん」

と本から目を離さずに健人に賞賛を送る。


「そっかー、まぁ、毎度やってることだし、こんなもんかー」

健人は肩を落とし、部室の扉を閉め、再度テーブルの方に視線を向けると、立ち上がっているレフィアが口角を軽く上げ――

「良かったですね、健人さん」

その後、レフィアも自分の読みかけの漫画を手に取り、続きを読み始める。


「兄さん、そんなところに突っ立ってないで、早く座ったら?」

「…………」

健人が一切反応しないので、瑞波が健人の近くまで行き――

「兄さん! 扉の前は邪魔だって言ってるじゃない!」

肩を掴み揺すると、健人は瑞波の立っている方向に倒れ始める。


「ちょっ、に、兄さん!」

倒れた健人の下敷きになった瑞波が健人を床に転がし、肩を激しく揺する。

「ちょっ、健人どうしたんだよ」

「兄さんが……意識を失ってる……」

「うそだろ! お前の制裁を食らってもはっきりと意識を保っていられる健人がか!?」

明人も倒れた健人に近づき、瑞波と一緒に肩を揺すり始める。

「おいっ! 大丈夫か健人!」

レフィアも倒れた健人の近くに駆け寄り、心配そうに見守る。


「はっ!!」

明人と瑞波がしばらく揺すると、健人が意識を取り戻す。

「よかった、流石に死んだかと思ったぞ健人」

「ほんと、今回ばかりは肝を冷やしたわ」

意識を取り戻した健人がキョロキョロと周りを見渡す。


「おい、大丈夫か、健人、お前、ちょっと僕の名前を言ってみろ」

明人が問いかけるが、健人は反応せず、何かを探すようにキョロキョロと周りを見渡し、後ろを向いたところでレフィアと目が合う。

「ご無事でなによりです」

レフィアはホッとした表情をしていた。


健人は即座に立ち上がり、レフィアの両手を手に取り――

「いや、ほんと、ありがとうございます。レフィアさんの『良かったですね』の一言で俺の心は救われ、天にも登る思いでした! ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます。貴方がいてくれて、ほんとうに良かったです!」

まくし立てるように言葉を並べる健人への対処に困っているレフィアが困り顔でこちらを見たため――

「兄さぁん、ちょーっといいかしら?」

瑞波が健人の肩をガシッと掴みレフィアからひっぺがす。


「あっ、ちょっ、瑞波!?」

そのまま健人は椅子に座らされ、瑞波は健人の目を片目ずつライトを当て、瞳孔を確認し、胸元に手を当て心臓が動いていることを確認した。

「うん、大丈夫そうね」

「何がだよ?」

「兄さん、さっき一時的に気を失ってたのよ」

「はぁ? 俺が気を失う? ……そういや、なんか綺麗なお花ばたけと川と森が見えたような」

健人は驚いた後、少し冷静になり、気を失っていた間に見たものを思い出したようだ。


「うん、森はわからないけど、臨死体験っぽいよねその感じ……」

「まじかよ、気絶と臨死体験って同じものだったの!?」

「いや、全然違うよ。多分さっきのは気を失っていたというより、一時的に死んでたって言った方が正しいんだと思うよ」

「そういえば、動転して息してるか確認してなかったわね……」

瑞波の言葉に明人も頷いた。


「てか、どうしていきなりそんなことになったんだよ」

「いや、レフィアさんの『良かったですね』って言葉を聞いた瞬間に意識が飛んだような……」

その言葉を聞き、瑞波と明人は深くため息をつき、そこから大きく息を吸って――


ガチャ――

「やっほー! みんなのおかげてテスト大丈夫だったわよ!」

部室の扉を開け、ニーニャが部室に入ってくると。


「「おまえ、嬉死したのかよ!!!!」」

2人は声を合わせて健人にツッコミを入れた。


「えっ、ちょっ、どうしたのよ? そりゃ、テストでそこそこいい点取れて嬉しかったけど、そんなツッコミ入れなくてもいいじゃない……」

部室に入ってくるなりしょんぼりしてしまった。


その様子を見た瑞波が――

「違う違う、ニーニャちゃんに言ったんじゃないの!」

「そうそう、今ニーニャが聞いたのは健人へのツッコミだよ」

明人と瑞波が懸命にツッコミに対する説明をする。


「なんだ、そういうことだったのね」

「そうなの、本当は兄さんに鉄拳制裁の一発でもかまそうと思ってたんだけどね」

「ウチの妹は相変わらず物騒だ……」

健人が言い切る前に、瑞波からの鋭い視線を受けたことにより、言葉を途中でやめた。


「そういえばさ、テストどうだったの?」

「あぁ、そうそう、じゃーん!」

ニーニャが効果音と共にカバンから取り出したテストには80点と書かれており、小テストの合格点である70点を超えていた。


「ほっ、よかったね、ニーニャちゃん!」

「ほんと、よかったよ」

「よかったです。ニーニャ様」

三者三様にニーニャに祝いの言葉を送る。


「なんか、俺ん時と扱い違いすぎない?」

健人が後ろで1人嘆いていると――

「健人も補習の小テストの全部合格だったんでしょ? よかったじゃない!」

「ありがとうございます、師匠! 心に染みます!」


「ふぅ、やっぱりこの本は面白いなー」

涼が本から視線を外し、部室を見渡すと、ニーニャと健人が固い握手をしていた。

涼は少し考え、2人が補習授業を受けていたことを思い出した。

「2人とも補習お疲れ様。テストは大丈夫だった?」


「ええ、大丈夫だったわよ!」

「バッチリだぜ!」

ニーニャと健人がガッツポーズをする。

「それはよかった。これで安心してあの話もできるね」

「あの話ってなんだよ」

「んー、森山先生が来たら話してくれると思うからそれまで待っててくれないかな?」

「そんなこと言われると余計に気になるって!」

健人が涼に食ってかかる。

「仕方ないな……」

涼が右手を右目の前に持って行き、少し顔を下げ、左手を前に突き出す。

「両翼に守られし新たなる創造世界、創造世界を生み落すための儀式が今行われる!」

その言葉を聞いたニーニャと健人はポカーンと口を広げ、放心状態になっていた。


一方、明人と瑞波は――

「へー、面白そうだな」

「そうね、去年はやらなかった新しい試みね!」

そう言いながらワクワクしていた。


「ちょっ、明人、教えてくれよー!」

「そうよ、明人と瑞波だけ分かってるなんてずるいわ!」

健人とニーニャから抗議が入るが――

「それは、森山先生が来てからのお楽しみ!」

そう言ってはぐらかす。


その後もしばらくはニーニャと健人は涼の言葉を解読しようと頑張っていた。


ガチャ――


「やっほー」

しばらくして緑が部室に入って来た。


「「「「お疲れ様です」」」」

明人、瑞波、レフィア、涼は部室に入って来た緑に挨拶する。


「「先生! あの話ってなに!」」

ニーニャと健人は涼の言ったあの話が気になって仕方がないようで、緑が部室に入ってくるなり問い詰める。


「あれ、相良くん、話してないの?」

「はい、僕が話しても中途半端になりますので。先生からお願いします」

「そういうことね。わかったわ」

そう言って、緑は定位置である窓際にある椅子付近まで移動し――

「えー、まずは、補習を受けてた2人は補習お疲れ様」

その言葉に健人とニーニャは軽く頭を下げる。


「えー、まだ期末テストとかあるんですが、部活動として2学期にある文化祭のことも少しずつ考えないといけないです。今年も昨年同様オムニバス小説を出そうと思っています。ただし、今年は2人1組でオムニバス小説を書いてもらいます」

「2人1組!?」

ニーニャは驚き、声を上げる。


「そうよ、ちなみに、チームは独断と偏見で私が決めたわ!」

緑がポケットから紙を取り出しチーム編成を読み上げる。


「えー、チーム編成を発表します! 相良涼、木崎瑞波チーム! 木崎健人、レフィアチーム! 森川明人、ニーニャチーム! 以上のチーム編成でオムニバス小説を書いてもらいます! ってことで、文化祭までに頑張ってねー」

補習授業で疲れた緑はプライベートモードにシフトし、定位置で漫画を読み始めた。


「涼、よろしくね! 最高の作品を作りましょ!」

「あぁ、ここにいる全員が驚くような作品を作ろう」

涼と瑞波は拳をコツンと突き合わせる。


「あの、健人さん、私はあまり作品を作るといった経験がなく、足手まといになると思うのですが、よろしくお願いいたします」

「れ……レフィアさんと一緒のチーム!! 俺に任せてください! 一緒に色々考えていい作品を作りましょう!」

健人に向かってレフィアは丁寧にお辞儀をし、健人はレフィアと同じチームであることに興奮し、小躍りを踊らんばかりに飛び跳ねていた。


「まっ、よろしくね、ニーニャ」

「うん、よろしくね、明人」

明人とニーニャは互いに右手を差し出し、握手をする。


各チーム各々の挨拶を終え、本日の部活は終了となった。



部活が終わり、明人が玄関で靴を履き替えていると後ろから――

「そうだ、明人、昨日は丸暗記の提案ありがとね!」

とニーニャがお礼を言う。

「ん? まぁ、さすがに緊急だったからね。でも期末試験までにはしっかりと勉強するよ!」

「まかせて! 丸暗記は今回だけにするように頑張るわ! あと、ミルクティもありがとね!」

「あぁ、どういたしまして」

「それに、レフィアも瑞波も色々と昨日はありがとね!」

ニーニャのお礼に瑞波はピースサインを作り、レフィアは軽くお辞儀をする。

そうして、明人たちは帰路へとついた。

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