エルフが綴った外伝小説_冬の一大イベント(前)
今週分の更新です。
今週の更新ですが、本編とは一切関係ありません。
登場人物としましては、本編第一話にてニーニャが書いた小説のキャラクターたちが登場します。
冬の某日なので、少し季節に合った内容を書きたいと思い今回書きました。
前後編ですが、後編は早ければ明日、遅くとも26日には更新する予定です。
楽しんでいただけると幸いです。
宜しくお願いします。
寒風の精霊が活発に動き始める12の月。
トリア魔道学園の生徒とたちは、大人たちから何かがもらえる子供のようにそわそわとしていた。
「なぁ、ザレア。ここ最近変な空気が学校の中に充満してるんだけどさ、何かあるのか?」
俺はこの空気感に耐えきれず、隣を歩いている男友達のザレア・コード・リッテリーにこの空気感について質問した。
「んあ、リゼットは冬の精霊祭って初めてだったっけ?」
「冬の精霊祭?」
「そうだよ、トリア魔道学園に訪れる4年に1度の冬のお祭りさ。冬の精霊祭の日は街全体をあげてお祭り騒ぎをするんだよ」
「へー、なんか楽しそうだな」
「そう、それに、このお祭りには街全体を使った大イベントがあるんだよ」
人差し指を立てて、ザレアは妙にそわそわしながら俺に顔を近づけてくる。
「そ、そのイベントって?」
「4年に1度この街にやってくる特殊な3匹の精霊を捕まえるイベント。名付けて、『3精霊の軌跡』」
歩いていた足を止め、ザレアは高々と人差し指を立てた腕を突き上げ、天井を見上げた。
「ああ、『3精霊の軌跡』か、噂くらいは聞いたことがあるな。たしか、赤服の精霊『サン』、白髭の精霊『タク』、笑顔が素敵な太ったおっさんの精霊『ロース』の3種の精霊を捕まえると素敵なプレゼントが貰える。なんだっけ、たしか別名称が…………そうだ、『サンタ狩り』だ!」
「そうそう、そのイベントであってるよ。みんなそのイベントが楽しみで今からそわそわしてるんじゃないかな。僕も楽しみで仕方ないよ」
そんな話をしているうちに次の授業が行われる教室に着いたので、2人は決められたそれぞれ決められた座席に座った。
「そっかー、噂のサンタ狩りかー。うーん、サリエナと一緒に参加するか?」
「やっほ! リゼット! ってなに一人でブツブツ言ってるのよ。ちょっと気持ち悪いわよ」
「うわっ、サリエナ……って俺もしかして独り言口に出してたか」
「うん、物凄く出てた」
ブロンドの髪を緑色で赤色の丸い装飾がついたリボンを使ってポニーテールにしているサリエナはそのポニーテールを揺らしながら、訝しげな表情でこちらを見ている。
その後ろには、目を爛々と輝かせるルルティエナがサリエナのポニーテールに触れるタイミングを見計らっている。
「このタイミングで来たってことは……」
「さすがリゼット、その通りよ」
付き合い始めて8ヶ月これまでも色々と進展があったため、今では2人はそれぞれの思考を読み合うことができるまでの仲になっていた。
「じゃあ、せーので言おっか。せーの!」
「俺とサンタ狩りに参加しよう」
「私と冬の精霊祭の屋台巡りしよう」
数秒の沈黙の後――
「「え?」」
どうやら、俺とサリエナそれぞれが考えていたことが違ったようだ。
「あれ、リゼット、サンタ狩りに興味あったの? てっきり『サンタ狩りなんて子供の遊びだろ』って言うと思ってたのに」
「サリエナこそ、てっきり『屋台なんて回ってられないよ! やっぱりサンタ狩りに行かないと!』っていうと思ってたんだけど」
「「…………」」
お互いがお互いのことを思って提案した内容が真逆だった時、俺とサリエナは相手の提案を受け入れようと互いに譲り合ってしまう傾向がある。
それが始まると、結局なにも決まらないまま話が進んでしまい、状況によってはその日の予定がなくなり、手持ち無沙汰になるという事態が難度が発生してしまった。
それだけは何としても避けなければ。
そうして考えること1分俺は一つの回答にたどり着いた。
「リゼット! 今回はサンタ狩り諦めて私と一緒に屋台を回って欲し……」
「サリエナ! 今回は屋台回りを諦めて俺と一緒にサンタ狩りに出て……」
その瞬間さらに気まずい空気が俺とサリエナの周囲を覆った。
「なぁ、サリエナ。お前もしかして、自分の意見を通すことで譲り合いを避けようとしただろ」
「うん、そんな風にいうってことはリゼットも……」
「あぁ」
横目にルルティエナがサリエナのポニーテールを触りながら匂いを嗅ぎ、たまに揺らし、揺れる髪を目で追っかけ、掴んで匂いを嗅ぐの繰り返しをしていた。
まさに我関せずの精神である。
「おーい、リゼット」
「どうしたんだ、ザレア」
「いやー、さっき冬の精霊祭の話出てたのに、これ渡すのを忘れててさ」
ザレアが1枚の紙を渡して来たので、すぐさま目を通した。
「サリエナ、屋台を回ろう」
「……へ? いやいや、やっぱりサンタ狩りでしょ!」
「違うんだ、本当に屋台を回りたいと思ったんだ」
そう言ってサリエナに紙を手渡すと――
「えっ! 今年ってこんなこともやるの!」
「ああ、今回初のイベントらしい。しかも、優勝商品をみてみろ」
「ふふっ、なるほどね。わかったわ! じゃあ、冬の精霊祭は屋台巡りでいきましょう!」
ありがとう、ザレア。最高のタイミングでこの紙を持ってきてくれて。
心の中でザレアへの感謝を述べた。
こうして精霊祭の予定が決まった。
■
そして、精霊祭当日。
俺とサリエナはイベント開始地点であるトリア魔道学園の広場に集まっていた。
広場はトリア魔道学園の門を入ってすぐのところにあり、広さはエルフが1000人ほど入る広さとなっている。
現在、その半分の500人くらいが広場に集まっている。
「サリエナ。準備は万端か」
「もちろんよ、リゼットこそ大丈夫でしょうね」
「もちろん!」
と意気込んでみたものの、寒風の精霊がもたらす風により徐々に体力が削られて言っている。
「それにしても、ぷっ……その服装以外にも似合ってるわね」
明らかに笑いをこらえるサリエナにそう言われるものだから――
「いやー、それを言ったらサリエナこそ、首からは下げてる木の板がよく似合ってるよ」
サリエナの服装は、頭には2本の動物のツノが生えており、髪の毛はツインテール。
服は茶色一色で首元は茶色のファーで覆われている。手には親指だけが独立した茶色い手袋をつけており、靴は茶色のブーツを履いている。
また、『私はバカです』と書かれた木の板を首からは下げている。
俺の服装はといえば、赤い帽子、赤いジャケット、そして、赤いフンドシに白い靴下。
首には白い綿毛を巻きつけている。
という上のみ重装備、下は一瞬で吹き飛ばされるような軽装備というアンバランスな構成なっている。
ヒュー――
「寒っ!!」
そう言いながら俺は太ももあたりを手でさする。
リゴーンリゴーンリゴーン――
「えー、みなさん、本日は冬の精霊祭は新企画。「3精霊とお供の真似をしよう」のイベントにご参加いただき有難うございます」
トリア魔道学園の鐘がなると同時に司会者からのアナウンスが始まった。
「本イベントは、2人1組のペアでの参加が条件となっており、参加する方のどちらかが3精霊の、どちらかがお供の格好を真似する。そして、2人で屋台を巡って入手したプレゼントを子供達に配るというイベントです。プレゼントの入手方法は簡単。屋台を巡って屋台の主人が出すお題をクリアしてください。クリアしたらプレゼントをゲットできます! また、プレゼントの取得についきましては、屋台が所持するプレゼントの数分だけ挑戦することができます。早いもの勝ちであり、周回も可能なため、より多くのプレゼントを手に入れるために効率よく課題をクリアして行ってください」
司会者が一通りの説明を終え、参加者からの質問に対しても全て回答が終わった。
「それでは、私が光の精霊を打ち上げたらその時点からイベントスタートです……おっと、すみません、イベントです実行委員からご指摘を受けました。今回のイベントの景品ですが、もっとも多くのプレゼントを配った方には、冬の3精霊、「サン」「タク」「ロース」をプレゼントいたします! みなさん、頑張ってプレゼントを配ってください!」
司会者が追加説明を終え、一息ついたのち。
「それでは、改めまして。よーい……スタート!」
スタートの言葉と同時に司会者の手から光の精霊が打ち上げられた。
こうして、新イベント「3精霊とお供の真似をしよう」の火蓋は切って落とされた。




